五百十八生目 蟻巣
2つめの河に突入。
しかし今回はこの河に用はない。
この下にそのまま潜っていった先にある洞窟こそが本番。
「む!?」
先頭のオオルが何か見つけたらしく巣穴入り口近くに泳ぐ。
よく見てみてると……
誰かが争ったような形跡がある。
これはまさしく……
「グフだ! グフがここにきているんだ!」
「思ったよりだいぶ速い……取り巻きが減ったから、追いつけるかと思ったのに」
「この感じからすると、まだ戦闘してからそこまで時間はたっていないかと」
私は戦闘跡の様子を見てそう告げる。
ここで誰かが暴れたのは確かだが暴れ方の残り具合が新鮮。
「わかった! みんな、グフより先にこの巣穴で見つけるよ!」
「「おおー!」」
巣穴内に突入!
蟻の巣穴に例えられるこの洞窟。
中に入ると大きくカーブして水面から陸に出される。
そこからはまさしく蟻の巣のごとく分岐点だらけの迷路だ。
しかも"魔炎"は生きているからどこにいるかはわからない……
最悪外に行っていて狩りをしているかとしれない。
私も探知を全力で張っていこう。
陸に上がれたことで私の鼻も耳も最高の調子に戻る。
ただ……洞窟内も複雑に水中化したり水が流れていたりするようでなかなか探知がうまくいかない。
見逃しには気をつけよう。
「"魔炎"マジックロードって、どんなところにいるとか、そんな情報なかったか?」
「ええと……どうやら主に暗いところを好むみたい。ここの水中洞窟たちってたいていは発光ゴケとかの光るものたちがたくさんあって明るいけれど、そこから考えたらいい場所見つかるかも」
「暗いとオレたちが困るなぁ」
ニンゲンは夜目がそんなに利かないもんね。
それにしてもだ。
「なんだか、魔物たちの数が少ない気がする……特に、隠れ潜んでいない魔物は」
「すごく……静かですね……」
「それはね、"魔炎"マジックロードがここを根城にするさい、焼き払って追い払ったそうなんだよ。多分どこからか空気穴があるから、毒が回らずに済んだんだと思うんだけれど……」
実際は二酸化炭素の増加と酸素の現象が原因で苦しむ。
ただだいたいのことは毒としてこの時代は理解されているからね。
それはいいとして。
めちゃくちゃやってるなあ聞く限り。
先住民たちを焼き払ってしまったのか。
魔物たちはハチャメチャなやつは多いもののここまで他者の生存圏を脅かすやつは珍しい。
相手をするのに結構真面目にやらないといけない。
探知を切らさないようにしないと。
5名で進んでいく。
真面目に片っ端から調べていくと何日もかかるらしいためとにかく暗い場所を調べる。
向こうが高い潜伏能力を持たなければちかづいただけで私の感知が拾うはず。
やはり問題は……
「うわ、すんごい鉄砲水」
「ここを通るのは難しそう……ですね」
スウマやスレイカが言う通りときおり洞窟内に時折水が凄まじい勢いで流れている部分がある。
そういった場所はまともな通行ができない。
先に行けそうな場所もなんとかして回り込まないと……
「えーっと……よし。繋がった。みんな、横の道から一旦戻って、さっきの横穴からさらに右へ進み、そして奥へ進むとぐるっと回って先へ進めそう」
「え!? なぜそんなことが……いや、まさかそれも探知能力……?」
「見ずに進む道を探れるだなんて、さすがだなぁ、これがローズさんの力かぁ」
「まあ、向こうは向こうで通行できなかったらごめんなさい。とりあえず、空間は繋がっているので」
光魔法"ディテクション"を含む能力で脳内マッピングさまさまだ。
そのまま特に危険な気配はないか探っていく。
話を聞く限りとにかくやばいことは確かなのでこういうタイプは自身の強さを常に表に出しているはず。
拾い損ねないはずだ。
洞窟内は結構幻想的で青色の輝きが多いせいで壁や天井それに地面もほのかに水色に染まる。
不気味なくらい静まり返ってなければワクワクした気持ちで探索できたはず。
それで数時間駆けて。
……おや?
魔物っぽくない反応で4つの反応が固まっている。
もしかしなくてもグフたちだろう。
ちょっと私達とは違うコースらしい。
「グフらしき存在が近くの別コースにいる。このままだと……あ、やっぱりこのさきに!」
「「え?」」
私達が角を曲がると広い空間。
しかしすぐそこで鉄砲水が道を塞いでいる。
問題はその先。
向こう側の道からやってきたのはグフたち4人。
どうやら溺れた取り巻きはちゃんと帰ったらしい。
「「あっ!?」」
双方が同時に見つけそして詰め寄る。
とはいえ鉄砲水に阻まれているが。
でなければ頭突きをかましそうなほどに険悪なムードに一瞬でなった。




