五百十三生目 銃愛
なんとかゲータレールのリーダーを撃退した。
「ふう……」
「す、すごい……! ゲータレールのリーダー、誰かがわかったの!?」
「偉そうな相手がいたのでなんとか引き込んで倒しました」
「すげえ!」
「これはすごい、サポートだなぁ」
「サポート、とは、って感じだけどね」
「い、今の……」
みんなが口々に褒めてくれて少し照れてきたころ。
ひとりだけ様子がおかしかった。
スレイカだ。
スレイカはもともともじもじしながら話すタイプだが……
もじもじの速度が異様に上がっている。
え。何怖い。
水中なのにもじもじしながら急速に接近してきた。
動きが怖いんだけれど。
「ええっと?」
「銃!! 見せてください!!」
「はあぁ〜〜! 素敵……!」
「ごめんね、貸してもらって……スレイカ、ガンマニアでさ……」
「いえいえ……銃もそこまで嫌がっていないようだし」
銃ビーストセージはスレイカにさらわれた。
いやまあ頬ずりされて銃ビーストセージも結構まんざらでもなさそうだけれど。
剣ゼロエネミーは逆にかなり堅くて私じゃなきゃ持たせないほどなのだが。
なんとも性格の違いが出ている。
武器に性格の違いってのも変な話だが。
彼らは魂がないはずだがはっきりとした意識を感じるんだよね……
スレイカは自らも2丁拳銃を愛用しているが私の銃が異常なことを1発で見抜いたらしい。
さっきからずっと離さない体勢だ。
「あぁ〜、まるで神話にうたわれる聖なる弓、銀の弾丸を放つための
銃……! すごくシンプルな見た目なのに、性能はとびっきりでなおかつ見たことのない構造……! こんなになっていてきっとすごい子、何よりちゃんと愛されている感じがする……!」
「す、すごい……」
「スレイカは、人には惚れたことないのに武器には惚れまくる、そんなやつなんだよ」
スレイカが凄まじいのを私やオオルが隣から見守る。
まさかこんなことになるだなんて……
……返ってくるよね。銃。
しばらく進んで。
予定より早い進みで遠目の場所に休憩地点を得れた。
ここは河の中にある洞窟で上方向に伸びているため水が途中からないのだ。
上も広くどこかしらから風もあり空気循環している。
それをチェックしてから炭を焚き……
さらに具材を入れた大鍋。
蓋に特徴的な上側が伸びたものを乗せて。
前世でいうところのタジン鍋が出来上がった。
「やっぱ旅先の食事といえば鍋! 鍋だよなあ!」
「ほらほら、まだ早いよ」
「他の荷物も大事ですが……これと材料だけは欠かさないようにしています……」
「まあ、空間拡張したカバンになら入るしなぁ。旅の食事をつまらなくしたら、しんどいかんなぁ」
それはちょっとわかる。
せっかくの旅先でまずいものを食べていてはどんどん冒険がおっくうになるというもの。
食事にこだわるのは理解できるなあ……
「ここで手に入れたものもよりわけて、良いものを入れたんだー」
「小魚達からはいい出汁が出る! においがもううまそうー」
「ようし、皿をわけるぞぉ」
蓋を開ける直前にまた全員で朱竜への祈りを済ます。
そうして……
蓋をあけた。
「「おおぉーー!」」
思わずこの瞬間はみんなで声を上げてしまう。
ふつふつと煮込まれた具材たちは湯気をふわりと上げて。
泥川で食べるとは思えないほどに魚介類のうまみがにおいにのって飛び込んできた。
混ぜるお玉でかるく揺すりリーダーであるスウマがみんなに寄せていく。
ホカホカとあたたまる……
どうしても水中は冷えるからね。
多重にかけた魔法でもどうしてもあの冷えだけはどうしようもない。
そう……ココロの奥底から湧く冷えは……
「いやあ、水中なのにめちゃくちゃ楽だったよぉ」
「ローズさんがたくさん魔法をかけてくれたおかけで……全然身体も冷えてませんからね……」
「…………」
「ん? どうかしたローズさん複雑そうな顔をして」
「い、いえなんでも」
まあ。
まあまあ諸説あるということで手をうとう。
とにもかくにも魚介のダシがきいたこの汁のうまいことうまいこと。
それらが煮込んだ具材の味がよくしみて……!
お肉も野菜もよーく味付けされている。
昔はこの味覚に左右されていたがどうやら神にまでトランスしたり毒を操るようになってたいていのものはイケる口になった模様。
いやあ本当によかった。
「さあさ、おかわりいっぱいあるよ! 具材もまだたくさん!」
「何日かにわけて食べるんだからなぁ?」
「まあ、最悪私が仕入れてくるんで大丈夫かと」
「「え?」」
……そういえばまだ私のワープ魔法のことは話していなかった。




