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五百十二生目 事故

 朱の大地は調べれば調べるほどわけのわからない状態になる。

 それぞれの情報が食い違い実際にあった出来事の整合性がなかなか取れない。

 というよりも今では過去の多くがミステリアスに包まれているまま。


 謎の高度な出土する灰処理ゴーレムも。

 昔あったという朱竜の国も。

 そもそも朱竜がなぜずっと燃やし続けているかも。


 あらゆる証拠は既に全部灰になっている。

 わからないからこそ冒険は楽しいのだが……

 その先にあるものが灰だと冒険のしがいがない。


 そんなこんな考えたり話したりしつつ水中を進んでいる。

 ……あれっ。


「前方の遠くに、めちゃくちゃ大量の魔物反応……多分群れ。しかも弱い魔物たちがカバーするために群れているんじゃなくて、多分かなりの腕利きたちが募ってる」


「ゲッ」

「運が悪いっ! それは多分、ゲータレールだよ!」


 ゲータレールとスウマが言った魔物を見ようと"千里眼"を使う。

 グーッと向こう側を見ると……

 いたいた。


 ワニらしき魔物がいる。

 ワニではあるのだが私の知っている口をあけて潜み獲物を待つ姿ではない。

 目立つ白い巨体たちが列をなしてその足をスクリューのように動かし……


 大きな渦でも描くように水中を凄まじい速度で移動し続けていた。


「なに、あれ……」


「ゲータレールはちかづいたら轢かれるよ!」


「有名な回遊爬虫類なんだよ! 特定の場所をグルグルと動いてその場にいるやつらを全員轢く! ただ、常に縄張りが変わるのが特徴で、しばらくすれば別の場所に移動するぜ。だから、少しの間待とう」


「なんなら倒してもいいっちゃあ良いんだがなぁ、消耗を避けたいから、普段とは違って避けたほうが良さそうだなぁ」


「あの群れ全てを倒すのは、相当苦労しそうだけど……」


「いえ……倒すのなら、そこまでしなくて良いんです。実は……ゲータレールは先頭がリーダーで、先頭のリーダーさえ倒せれば怯んで逃げていくんです……できたら」


「先頭って……」


 私は"千里眼"でその様子を見る。

 ゲータレールたちはグルグルと広い範囲を回っている。

 ……そう。


 回っていてどこが先頭なのかぜんぜんわからない。

 何か特徴があればなあ。


「まあ、ローズさんはそこから見えているようだけど、それのとおり誰が先頭か、まるで見分けがつかないんだなぁ」


 ……"観察"!


[ゲータレールLv.35 比較∶弱い]

[ゲータレール 彼らには見えない線が引かれているように見えて、その上を線路として駆け回る。その線は効率よく食事と安全を得るための情報を統合した線路だ]


 ……声がきこえる。


「えー、順路運転をこのまましばらく継続、この調子で蹂躙」


「順路運転」

「順路運転」

「順路運転……」


 ……いた。

 あの指示を出しているゲータレールがリーダーだ。

 自身に補助魔法をかけつつ少しずつ近づく。


「多分、行けそう」


「「え?」」


 私は亜空間から銃ビーストセージを出す。

 こちらはこちらで用意しつつ魔法を唱える。


[プルイン 混ざり合う力により対象を引き込む]


 初歩的な闇魔法だがつまり拉致が可能なので結構怖い。

 割とサクッと発動可能。

 ゲータレールのリーダーらしき発言をしている相手に向かって放つ!


 ゲータレールの足元付近から突如闇が立ち上り……

 グンと引っ張って線路上から外す。

 うーんやっぱりまだまだ牽引距離が足りない。


 私と彼らの間ぐらいまでにしか引っ張れなかった。


「脱線!? 緊急事態発生! 緊急事態発生! ただちに路線変更!」


「「路線変更! 対襲撃緊急対策!」」


 やばいやばい。

 ゲータレールたちが一斉にリーダーへ向かって来る!

 銃ビーストセージ!


 少しずつガンナーレベルが上がっているこの力を喰らえっ!


[雷電轟華 瞬時に遠くまで弾丸を飛ばし着弾と同時に光と音そして電撃を与える]


 名前からしてわかるとおりこの武技は高威力。

 良いのはチャージしておけば即着弾するということ。

 魔法より先に準備していたのでチャージ完了。


 "無敵"と"峰打ち"よし。発射!

 轟音はまるで雷鳴のように。

 まるで発射した直後に着弾したかのような速度でゲータレールに着弾。


 すると大量の雷撃で周囲に閃光が舞い明らかに致命打を与える。

 "峰打ち"なしだったら死んだかもしれない……

 すると。


「て、撤退! 脱線事故! 脱線事故!」


「脱線事故だあぁ!!」


「事故発生、事故発生!」


 海中を埋め尽くすようなワニたちは……

 まさしく蜘蛛の子を散らすように去っていった。

 リーダーのゲータレールはその場でピクピクと震えていた。

 

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