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五百十一生目 文献

 タブン和食セットは皇国のメニューを参考に作られた食事だ。

 亜空間内の時間をいじっておいたことにより結構できたてを食べられる。

 かなりうれしい。


 湯気がたつご飯たちをいただこう。

 郷に入れば郷に従え、さすれば旅はさらに面白くなる。

 ということばに従ってみんなで朱竜流食事前の祈りをする。


「日々の糧は、炎のと灰が積み重なった先にあるもの。そのことに感謝を」


「「感謝します」」


 さあていただこう。

 ……うーん! よく実ったコメと焼き魚の相性は良いなあ!

 とてもおいしい!!


 ただ食事ばかりに集中するわけにはいかない。

 私も雑談に参加して例のこと……朱竜やピヤア団のことについて話を聞こう。


「――でさ、リーダーなのにあいつ、すっかり登録忘れていてさ。最悪参加すらできなくなるところだったから、恥ずかしいったらありゃしないよ!」


「ナハハ、今回も参加できなかったしなぁ、アイツはとにかく運がないなぁ」


「そういえばリーダーさんって今回なんで参加できなかったんですか?」


「あー、実は今日の朝、めちゃくちゃ高熱を出してダウンしたんだぁ。医者によると、風邪だってさぁ」


「あらら、それは確かに運がない」


 風邪はどうしようもないときはどうしようもないものだ。

 特に冒険者は激しい環境に身を置いて体力を使い果たししばらく寝たりもする。

 そんな生活のため油断なくしていても風邪くらいは引くことがあるのだ。


「やっぱり普段から……朱竜様への祈りをしないと……身体に入り込む前に、朱竜様が毒を焼いてくださるのに……」


 スレイカのの言った毒とは風邪の一般的な見方のひとつだ。

 菌というものの認識が曖昧なので対毒耐性のきかない厄介な毒としてよく話される。


「煉民主国では、他の国よりも熱心に朱竜を崇めているようですね」


「ええ、それもそうですね……実は、ココこそが朱竜様発祥の地ですし」


「それだけじゃない、煉民主国には過去の噂もあるから、多分根強いんじゃないかな、文化として」


 スレイカとスウマが言うことはいきなり興味深いところにヒットした。


「発祥の地!? それに、噂?」


「どっちも、諸説ありってつくけどな」


「そうだなぁ、発祥の地自体はいくつかの国も立候補しているし、伝説の噂にいたっては眉唾物なんだよなぁ。結局、朱の大地では過去の文献が失われるのが基本だからなぁ……」


「ああ、全部焼かれちゃうから……」


 確かに朱の大地で情報収集するとき1番に障害として立ち塞がったのがすぐに何もかも焼かれること。

 歴史がなんも残っていない。

 正確には伝えられるだけ伝えるものは口々に伝えられているし保存されているものもある。


 しかしどれも正確性や時代性に欠けちぐはぐでぶっちゃけうまくデータとして機能していない。

 こういった信頼値が低い話ばかりが蔓延ってしまうのだ。

 しかもその膨大なダスクデータの中に本物があるせいで精査しないわけにもいかないという。


「でも、みんなも知ってるよね? 有名な朱竜神王国の話!」


「まあ、煉民主国にいやあなあ」


「それじゃあ、そのことでも話しつつ進むかぁ」


 私達はそのまま食事をして火の後始末をしてから進むことにした。










「ということは、神話時代に滅んだその王国の跡に出来たのが煉民主国?」


「という、まあ根強い噂だね。文献がないから信じるしか無いんだけれど」


「そういう話を聞けるのは、冒険者ならではだなって最近特に思うよ。私は最近、噂どころかまったくもって最近の話で有名所すらぜんぜん知らない、冒険者じゃない人々につきあわされてすごく苦労したから……」


「ははは、そりゃ仕方ないよなぁ、冒険者じゃなきゃなかなか、ちょっと遠くの地で起こったことは、吟遊詩人が広めるまでは届かないからなぁ」


「吟遊詩人といえば――」


 私達は泳いで先を目指しながら話す。

 ちょっと落ち着いた環境で泳げるところのため比較的雑談がまざる。

 とりあえず聞けたことは……


 煉民主国に伝わる民謡(みんよう)とか童話とか。

 それに吟遊詩人の話なんかで定番になっているものがあるらしい。

 それが朱竜王国神話。


 昔むかし朱竜を司った国があってそこではトップとして朱竜を掲げていたらしい。

 ニンゲンではなく神が王の時代。

 つまり神話の時だ。


 色々と話はそこからごちゃごちゃと広がるらしいが大事なのは。

 なぜか滅んだことと煉民主国の位置に朱竜の国の存在する首都があったのだとか。

 大昔はそれこそこの大地を覆い尽くさんほどに大きい国だったという話もある。


 こういう時朱竜が岩に刻まれた文献ごと焼いたのが惜しまれる……

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