五百八生目 上級
私達は河の中に飛び込む。
河の中はひどく濁っているがどこまでも見通せる。
大河らしくどこまでも深く潜って行けて暗い底が徐々に姿を表してきた。
「あんなに魔法を使ってもらって、大丈夫なのかい?」
「ぜんぜん平気。私は元々長時間戦うことに向いているから」
「そうなのかぁ、さすが冒険者ギルドの中でもすごく強いなぁ」
効率なら任せてほしい。
最近は効率よくパワーを高める方法も考えている。
そうこう考えつつ今は降りていくだけで緊張を保ったまま暇なため
少し考え事でもしようか。
ゴーグルが念話のように変換し声と音を伝えてくれる……
「その、"魔炎"マジックロードはどういった魔物なんだっけ」
「ええーっと……まずはマジックロード自体から。本来はこの迷宮ではないところに住んでいてよう、頭腕型というか、身体が頭と腕で構成され、そんな一族の長がなるとはれるのが、マジックロードだなぁ。正式名は別にあるけれど、まあ、マジックロードで覚えとけば間違いないなぁ」
それが通常のマジックロードと。
基本的に頭がよさそうで群れている魔物はえげつないほど残虐だったりするので基本的には近づかないことを求められたりする。
有用だと見れば友好的にしてくれたりもするがアッサリ裏切られることもしばしば。
「確か、あらゆる属性の魔法を使うんだよな? 人でもそーんな使い手はそうそういないってのに」
「そんな厄介なマジックロードだかよぅ、"魔炎"はまず群れていないってところから違うなぁ。単独でなぜかこの迷宮にいる。そして2つ名にもなっている、魔炎……それは、奴が木々と水すら燃やして、魔物たちを虐殺しているのが見られたからだよぅ」
「うわ、生態も壊しているのか……怖いですね」
「水の中でも炎を出しているあたり、単なる炎ではないから魔炎……正直、ナメてかかる相手でもありませんし、最悪討伐して狩猟する許可もあります。追い出すだけでは問題を解決しない可能性を重く見ているんでしょうね……」
スレイカの目つきはどこか遠くに憂いているようだった。
確かに話し合いがまともに通じないと危険だ。
強力な魔物はぶっちゃけアノニマルースにほしい。
「まあ、それでも俺たちなら勝てる。問題は……どれほど先行しているかわからないグフだ」
「グフかあ……だいたいの位置は割り出せれているけれど、その中で特定に勝てないと、すごく面倒なことになるよね」
「なんならグフは俺たちが見つけても横入りしてくる。ルールも何もないやつだ」
「ええっ、そんなになんですか」
「そんなにだねえ」
スウマがウンウンと肯定し他のみんなも続く。
横殴りすることが平然と言われているだなんてよっぽどだな。
ギルドも介入してくれればいいのに。
けどこういう時にはだいたい民間でってやられてしまう。
それで解決していたら世話ないんだけどね。
まあ言っていてもしょうがいけれど。
「幸いなのはグフたち、グフの取り巻きは弱いってこと。あくまでグフをサポートし続けるためにいるから、単純に頭数を揃えられるこっちのほうが情報収集能力は高いよ」
「それに、今回は、ね」
みんなの視線が私に集まる。
期待されすぎてもはじめてだからなあここは……!
ん。そうこう言っている間に完全に見えた。
広がる天然の迷路。
つまりは崖や草木がたくさん形成されて歩きでいくとなかなか苦労する地形だ。
ただ上の方は突然激流になったりするらしく大瀑布に落とされないために子の迷路ギリギリを泳いで移動し危険地帯を避けるのがセオリー。
そして見えてきたのは迷路だが感じ取ったのはそれだけじゃない。
「敵魔物が2体。あそこと……そこ」
「探知早いよなぁ」
「わたしたち……結構自信があったんですけれどね……とりあえず倒しに行ってきます……」
「まさかオオルとスレイカより常に最速で見つけ続けるだなんてねえ」
「さっきからずっと褒めてくれるじゃないですか! ちょっと恥ずかしくなってきた……」
実は見敵必殺の助長をしているのは私だった。
私が真っ先に見つけて報告しそのままオオルとスレイカのアタッカー組が特攻。
向こうとオオルたちの感知にひっかかったら戦闘態勢。
ただオオルたちのほうが圧倒的に早く情報を得ているため既に武技を構え……
遅れた敵魔物たちが防御体勢をとって大上段でぶっ飛ばされ。
まだ余裕がありそうな魔物に遠くからトゲトゲな鉄球がとんでくる。
スウマのスマッシュヒットだ。
もうそうなったらあとは囲んで叩いているのを私やワンチで遠目に見ているだけで終わる。
そのうち魔物たちが逃げるのでそれで勝利だ。
……すごい。私歴代で最も何もしていない気がする。




