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五百六生目 邪力

 多分私の出世スピードは異例だ。

 ただまあ国や世界を何度か公的記録のなかで救うってないからね……

 他のみんなも相応の評価を得ているはず。


 そしてXYZが死後殿堂入りならばUVWは現役最強ランクともいえる。

 私もおどろきだ。

 冒険者なので実力はもちろん大事だが……


 やはり重視されるのは年月を重ねて得られる信用信頼実績。

 それこそ真面目に冒険者やってきたオウカさんあたりは既になっているだろうけれど……


 ……うん?

 そういえば。

 月組のオウカランムさん。


 そして冒険者でおばあちゃんのオウカロクさん。

 ……偶然かなあ。

 名字の一致だけではまだわからないや。


 それより今は冒険者たちのほうだ。


「強そうなのはいいけれど……実は今、空いた穴埋めは強者というよりは探知型なんだよ」


「相手の情報を知り、迷宮内の情報を探って、っていうスカウト。わりと手広くやれるといいんだがよう、トップランカーはやっぱ個々人の能力が常識外ゆえにだろう? あんまりそういうサポート役には向かないんじゃないか?」


 なるほど……

 火力担当じゃなくてサポートにドタキャンされるのは確かに辛いな。

 正直火力は誰でもできるようになる部分はある。

 かえが効きやすく気楽にやりやすい。


 ただサポートのしかも探知。

 それはもうとにかく信用を背負うお仕事だ。

 それが欠けたとなるとすごく厳しいのは確か。


 そしてそのポジションを新任に任せるのは難しい。

 特に連携面で。

 私は……


「多分、まあよっぽどでなければやれると思います」


「さ、さすがの自信……!」


「というより、探知や警戒って結構得意な方なんですよ。普段はサポートに回っています。ぜひ、参加させてもらいませんか?」


「なーるほど、だったら……なあ?」


 ひとりが周囲を見回す。

 誰も反対する気はなさそうだ。


「よし! じゃあ俺はオオル、基本的にアタッカーだ、よろしくな!」


 結構小柄な男性で猫耳と尻尾がついているような姿。

 私視点で結構小柄だと思えるのだから150センチメートルは切ってると思う。

 声は渋いのに見た目はキュート寄りでギャップがすごい。


「ローズオーラさん……でしたね。同じくアタッカーのスレイカてす……高ランクの方と組むの初めてで……緊張します……」


 もじもじしているアタッカーの女性。

 この大地にしてはとてつもなくレアな姿である和服を着ている。

 ……練り込まれた力を感じるから立派な防具なのだろう。


「オレはよう、ワンチっつうんだ。よろしくなローズオーラさん。探知とかじゃなくて戦闘時のサポート役だ」


 全身が鱗に覆われた大男。

 パット見ドラーグっぽいが翼はない。

 色も緑だ。


「じゃあアタシ、ヒーラーのスウマ、ローズオーラよろしくー!」


 ショートボブの髪型をしているのはきれいな黒肌の女性。

 耳が長いし額に模様がある。

 あと高身長だ。


「みんなよろしくおねがきします、ローズで良いですよ。チームリーダーの方は?」


「実は、休んだやつがリーダーなんだ。まあそこまで頭を気にして組んでたわけじゃあないから、変更は利くのが幸いだな」


「ランク的には……ローズさんの方が適任ですけれど……その、いきなり押し付けられるのは、迷惑ですしね……」


「オレかスウマだなぁ、指示役は前に出たら見えねえからよう」


「よーし、ジャンケン、ジャンケンだねえ!」


「「ジャンケンぽんっ!」」


 スウマがグーでワンチがチョキ。


「よし、勝った!」


「んじゃあよう、スウマリーダーからひとこと」


 今回のリーダーということでスウマが張り切った顔を見せる。

 みんなの注目を集め……


「では、アタシが――」


「ういっー!!」


 ガタンと表の扉が開かれ意識が持っていかれる。

 普通扉をあけただけでガタンなんて音はしない。

 力加減がおかしくなって扉が限界まで開かれ反動で危ない音がしたんだ。


「――うげっ」


 スウマが露骨に嫌な顔をする。

 その相手は腕から剛毛が生えている大男。

 毛皮ではない。


 いかにもガラの悪そうな格好に顔を赤らめたさま。

 昼間っから呑んでいるわけだ。

 たまーにいるよねああいう輩……ううん!?


 まった。

 なんなんだこの気配。


「関わらないほうがいいぜ……気づいたと思うが、アイツはああ見えて凄まじい実力の持ち主、ついでに性格もまさしく見たとおり、なのに活躍が凄まじくTプラスのランク。性格さえ良ければ、W帯も夢じゃないと言われている、イカれた男だ」


「ああん!?」


 酔っ払ってあちこちにガンを飛ばしながら歩くさまは上位勢の威厳もない。

 しかし隠す気もないその気配こそ……

 圧倒的な力を放っている。


 能のない鷹なので爪は隠していないがそれはそれとして鷹なことにかわりはないといった様子だ。

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