五百一生目 仮想
スイセンの顔は花で覆われているためわからないが花の感じからすると笑って見える。
顔のない神々の1柱が割とあれこれされたのにこの様子……
そもそもそれらを知っている感じ。
一体どういうことなんだろう。
それに……
「リュウと知り合いなんだ!?」
「それはそうサ。ボクとアイツは顔のない神、知り合いたくなくとも知り合っている。アイツが何をしでかして、そしてミスして追い詰められたのか、まあリュウは誤魔化しているけれど、ある程度わかるものさ」
顔のない神という単語はちょくちょく出てくるものの中身がまだよくわかっていない。
スイセンに顔はないけどリュウには顔はあるし。
それに……ここまで知っているということは【手紙】のやり取りもしているんだろうか?
「不思議そうな顔をしているな? まあいい、無知蒙昧型ブスのオマエが知るはずもないだろうな、神同士の連絡手段など」
「え、【手紙】のことなら既に……」
「ハハッ、【手紙】? また古臭い概念を使ってるネエ、神たちの概念は、次々世界に仕組みをもたらす。最新の流行についてこれないから、だからこそ常にダサい姿なんだよ」
「むぅっ……」
今は私の服装はニンゲンたちに扮しているので2足歩行型で冒険者の服を着ている。
このオーダーメイド服も長いもので正直バカにされるいわれはないがこの神は常にこんな感じだ。
話が逸れる前に聞くこと聞かなくては。
「その、村人たちから逃げているの?」
「ああ、正直今は目立ちたくない……ニンゲンがついてくるとどうしても目立つからな、マズい神たちに見つからないようにするには、これが1番だ」
「そ、そう……あとは、その新しい仕組みって?」
「これだ。どうせ古臭い大神あたりしか連絡していないから【手紙】しかないんだろう? まあブスグループのことなんて興味はないけどね」
スイセンは手のひらに花を乗せる。
スイセンの神力が形を伴ったものだ。
そっと顔に近づけてから手をこちらに向けると花びらが散っていきおいよくこちらに飛んできた。
風……いや。
これは神力エネルギーの流れだ。
攻撃性はない。
そのまま受け入れると私の中に情報が溢れていく。
これは……部屋?
仮想上の部屋を無意識下に作りそこで念和のように文字や映像データを交換して……
……ん?
いやまさかこれって。
「なんというか、すごく面白いものではある、けれど……」
「ついでに笑わせてくれたカラ、ボクたちの部屋鍵も渡しておこう。あ、けれど発言権限は与えないからそのつもりで」
スイセンは爪を磨きながら話す。
部屋の鍵と言われてスイセンから飛んできた珠は実態を持っていない光。
私は何気なしに受け取ると砕けて私の中へ吸い込まれていった。
この情報は……顔のない神々の部屋にアクセスできるようになったようだ。
これって何……?
「あ、ありがとう……?」
「その【会話部屋】は自分でも作れる。神相手限定だけど、ブス同士仲がいいやつはいるんだろう? 誘っておけばいいサ」
「うーん、【会話部屋】……っと」
実際の仮想部屋内にアクセス。
意識を向ければ場所の中へ簡単に入れた。
私の脳裏に不可思議な光景が浮かび上がる……
質素な部屋の中に4つのマークが浮かんでいる。
1つは花。
1つは水。
もう2つは……
なんだろう。
フワフワしたハート型の模様と虫の翅らしきものがそれぞれマークでかかれている。
この4つのマークが顔のない神々のことなのかな……?
そして特徴的なのはやはり部屋内のマーク近くに浮かぶ文字群。
[なんだ、ふたりはいないのかい]
[やっぱりあのふたりはタイミングもセンスがない]
……今のは花から飛んできた言葉だ。
今度は水から文字が飛び交う。
[むしろ余がオマエと同じセンスだと思われるのが屈辱的でしかないが、今はそれどころではない。そこにいるらしいな、ローズオーラ。このような下等な者共の発言を聞いていても笑味不愉快にしかならぬが、一応は仮想的に過去に遡ることで過去の発言を覗ける。暇なら試せ。ただ、余からの忠告として、スイセンを含め顔のない神とは関わるな。今さっき聞いたときは相当に驚いたが、同時に深入りしすぎているきらいがある。余はともかく、他の3人は極悪非道、神を神とも思わぬ悪鬼羅刹どもだ。脚のメンテナンスでまだ聞きたいこともある。無駄にやつらに気をとられすぎるなよ]
リュウの文は長いなぁ……
そして互いに仲がいいのか悪いのか全然わからない。
ええと過去の閲覧……と。




