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四百九十四生目 模範

 激しい競り合いで互いに決め手はないようにみえる。

 ただ無傷ではないのも事実。

 パフォーマンスは互いにほとんど落ちていなくて轟音と稲光が響くばかりだけれどよく注目すると傷が見える。


 ジャグナーは雷神によってチマチマと削り寄せられていた。

 伝説のようなとうたわれた防具たちにはごまかしきれない傷が生まれていた。

 内出血もあるだろうし防ぐことでたまる傷というものは大きい。


 何せ雷神の手数はとにもかくにも優れている。

 たくさんの武器を手品みたいに扱う。

 その関係で動きに慣れることも予測することも難しい。


 だが雷神も少なくない怪我を負っていた。

 全身に土汚れが目立ち毛皮も乱れに乱れている。

 骨にもヒビが入っているかもしれない。


 接近出来ないジャグナーが不利に見えてむしろ優勢なのは武器のせいだった。


「おらっ!」


 ジャグナーが宙に向けて腕を伸ばし雷神に向けて拳を握る。

 すると雷神が不可思議な揺れをした。

 ……(エフェクト)が雷神の腕を掴んでいた。


 これがジャグナーの拳武器の便利点。

 距離をある程度無視した攻めが可能で先程から何度も拳を叩き込んでいた。

 雷神はすばやく手刀で(エフェクト)を払うがその払った手をさらに掴まれる。


 そしてグンといきなり雷神がジャグナーに引き寄せられ……

 引き寄せたタイミングで地面に叩きつける。

 追撃の直接拳を雷神は暴れるように回避し槍を振るって距離を離した。


 振るった拳は爆音を響かせ土を巻き上げる。

 知っているつもりだったけれど昔よりさらに力が増しているなあ……


「ランムさんはどちらが勝つと思いますか?」


「え!? えー、んん、そうですね……」


 あっけにとられていたランムに声をかける。

 ランムは少しだけ戦いに視線を向けて。

 考えをまとめて告げる。


「……熊のほうがほぼ間違いなく勝てますね。たとえこの先獅子の方が切り札をきったとしても、熊側の手札で切り返し封殺できそうなほどに余力差があります」


 ……あっけにとられていただけでやはりこの戦いをしっかり見極められている。

 ランムの目は本物だ。

 そして私としてもほぼ同意見。


 雷神が少し離れ背中の武器たちが一斉に宙へ浮く。

 雷神自身もそうだ。

 多分磁力というやつだろう。


 それを魔法的な行使をして絶対的に扱っている。

 武器を一斉に開放したということは……

 一斉に刃がジャグナーに向く。


 あらゆる方向から雷撃の如く一斉連続攻撃。

 ありえない手数の多さは普通ならば命の危険すらある。

 しかし。


「……」


 そこにジャグナーの肉体はなかった。

 正確には岩があった。

 ジャグナーを模した岩が崩される。


 ありえないほどに早身代わり……と思ってふと雷神も気づいた。

 そもそもなんどもクマ型岩をジャグナーは使って攻撃していた。

 雷神は使われるたびに攻撃はしていたが全てが全て粉々になるまで切り刻んではいない。


 つまり中途半端に避けただけで終わった1体とジャグナーが入れ替わるスキルを使った……ということ。

 雷神もおそらく入れ替わりに気づいた。

 近接系なら必須の周囲を常に正確に把握スキルだろう。


 だが大きな武技直後は悪かった。

 スキだらけになるということで手元に武器が戻り状況チェックまでが致命的に遅れる。

 気づいていたのに足元をジャグナーに掴まれていた。


 地面に叩きつけられ立ち上がりに合わせて早い熊の斬撃。

 そして怯んだ雷神に対して大きく踏み込み。

 大きくストレートパンチが放たれた……!











 やはりというか予想通りというか。

 試合結果そのものはその場にいた全員の想定通りだったかもしれない。

 それはそれとしてファンで意見がわかれていたようだが。


「やっぱすげえよ軍団長!」

「ジャグナーかっけえ!」

「ため1発で鎧砕くとか正気の沙汰じゃないぜ!」


「だいぶ惜しかったな雷神ー!」

「もう見えないぜ雷神!」

「雷神こそヒーローだ!」


 ふたりは互いに回復薬を得て傷を癒やし横にならぶ。

 歩いて荒れた場から離れる。


「まったく、お前は日にひに強くなっているな。1対1でここまで試合させられるとは」


「……ぇ……」


「でも負けたって? バカ言え、オマエが軍に所属している最大の理由でもあるのは、あんな狭い空間では発揮出来ない力がメインだからだろ。オマエの能力はまさしく対軍用、それなのに個人戦でもあれだけ強かったら問題がなさすぎるんだよ」


「……ん……」


「ふたりとも、あくまで模擬の範囲だったからね」


「……えっ!? あれでふたりともまだ……いやでも、確かに見立てでは……」


 ランムがまた考え出してしまったがまあよしとしとこう。

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