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四百九十二生目 一級

 区切られた向こう側。

 ゲートを通っていけばそこでは外界と違ってやや物々しい空気が流れていた。

 戦時ではないので殺気立った感じはないもののそこらに駆ける魔物たちの練度が1段階は高いせいだ。


 レベルもさることながら技量が高いというのは大きい。

 粗野なライオンは威圧感があるけれど精錬されたニンゲンにはいるだけで周囲が静まる感覚があるように。

 それが魔物たちの軍団にも適応されれば物々しさはただいるだけで強く浮きだつ。


 その中でもランムは涼しい顔をしていた。

 一般の者なら気後れしていただらうにさすがだ。

 進んでいって建物内に入りそのままカウンターで手続きをする。


 中に進めば多数の部屋にわかれており……

 私とランムは目的の部屋へとたどり着く。

 武器庫だ。


 中には複数の魔物たちが吟味兼管理をしていて普段はなかなか見せてくれないたくさんの武装が見えた。

 たくさんの武装たちは剣や盾から始まり爪に鎧。

 槍や斧。

 それに銃もあり種類も豊富。


 ランムが感心しながら周りを見渡した。


「これは……凄まじいですね」


「そうなんですか? あまり武器には詳しくないのですが」


「間違いなく一級品たちですね。普段から使い込み、鍛え直して武器の練度を上げているのもいい。魔物たちのエネルギーを受けて昇華しているし、そのエネルギーを受けても武器が壊れないように何度も鍛え直した形跡がある……」


「そうなんですか! 一般兵用の兵装も、ちゃんとしたものを使われていると聞いて安心しました」


「……一般兵用!?」


 私だって軍事品のことをよくしらない。

 ただそれでも月組がしっかりしたものだと太鼓判をおすならば安心だ。

 命を守る仕事だからしっかりしたものを装備してほしいしね。


 とか思っていたらランムに肩を掴まれた。

 私は4足で小さいのでランムが大上段から顔を近づけてくるだけでこわい。


「これ、一般兵のなんですか!? 数はともかく質がおかしいでしょう!? 下手したら都より……だ、だったら上級兵や、将官たちの兵装は一体? どこで見られるのですか!」


「い、いやいや! 私は軍部ではないのでわかりませんよ! でも、多分月組のみなさまなら、何か見せてもらえるかと……!」


 ガクガクされながら答える。

 力は弱いので抵抗しなければ揺れないけれど抵抗するとさらに強く揺さぶられそうなんだよね。

 なので流される。


「あー、それなら今ちょうど良いよ」







 やりとりを見ていた周囲の兵が近づいて案内してくれた。

 案内された先は中庭のようになっている修練場。

 軍の訓練としては珍しい1対1のフィールド。


 片方は軍内でもトップと言われている実力者。

 雷獣の王……ライオンのような魔物。

 2足で立ち腕を組んで風にたてがみを流している。


 対するは……


「うーし、武具の調整、頼むぜ」


 軍団長。 

 その名はジャグナー。

 全身に鎧状の岩を生やした熊。


 重々しい外見だがそこに加わるのは武具。

 ガッチリした鎧が生えた岩の周りをカバーし鋼が輝く。

 そして拳に細かく指ごとに曲がる手甲。


 単なる手の守りではなく頑強そうな岩の刃が取り付けられている。

 触れるものを打ち砕くような拳の武器だ。

 対する静かな雷神は全身を薄手の軽鎧で覆っていた。

 軽鎧は胸までしか覆っていなくてあとはピンとはった布状の服。


 もちろん見た目と違って魔力などで全体の防御能力を向上させている高品質品だけれど薄く軽いというコトは早く脆い。

 同品質なジャグナー防具と比べれば差は歴然だった。

 素材がもったいないからというわけではなく雷神のファイトスタイルだろう。


 そして雷神の武器はというと……

 これまた不思議だ。

 大量の武器たちが背中にくっついているのだ。


 鎧と魔法鞘で収まっているのだろうというのはともかく縮小化を受けているとはいえゴチャゴチャとした武装がたくさん背にある。

 普通なら荷物持ちかと思う。

 しかし雷神はあの武器全てを扱うらしい。


「……」


 雷神は静かにうなずいて組んだ腕を解く。

 ランムは……目を細め固まっていた。


「嘘……伝説の中でしかみないような武具の品質? それをあの数? 全身に? エクセレントハイレア……いや、それ以上……?」


 エクセレントハイレア以上は鑑定士が複数人で鑑定しないと認定できないんだっけか。

 つまりいまのところエクセレントハイレアではあると太鼓判が押された。

 まあ金属の輝きとか布とか言っても単なるそれらではないしね。


 その正体はふんだんに魔物の素材を用いて作った武具。

 一種生きているとも言える。

 道具としての魂がそこにあるのだ。

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