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四百九十一生目 軍事

 ハックの制作品で埋め尽くされた部屋内。

 ユウレンからしたらハックの制作品はまさしく神からの賜り物だったそうだ。

 ユウレンとの相性がずば抜けて良くてユウレンの能力を何倍にも高めてくれる。


 剣と鎧が戦う者の武装ならば。

 この部屋と置物たちが死霊術師たちの武装なのだ。

 その中央に座るのがユウレン。


 集中しているのか静かに目を閉じている。

 魔法陣や設置された宗教的な像たちの中央にいるためなんだか神秘的な雰囲気を感じる。

 いわゆる黙っていればというやつだ……


 ランムさんもさすがに業務途中なのを感じて黙っている。

 積み上げられた多種多様な白骨たちは1つとっても清められ念はなくただただ純粋な骨。

 肉も血もないものが選びぬかれている。


 ユウレンがスッと腕をあげ手先で柔らかく何かを宙に描いていく。

 あれは死霊術師の独特な空文字。

 私もまだ理解はしきれていない。


 読むことは出来るんだけどその真髄がまだまだ。

 ただ文字の読みがわかってもそれが指す意味合いのその先がわからねば今何をしているのかがわからないのだ。

 例えば漢文が少し近いかもしれない。


 やがて書き終えれば魔力が充満し(エフェクト)によって場が輝き出す。

 空気に蛍のような光が舞う光景は魔法系統でも好きな演出のひとつ。

 やがて魔法の(エフェクト)はユウレンの前に集う。


 ユウレンの目前に(エフェクト)が集って縦長に重なって形になっていく。

 足元から徐々にスケルトンの形となっていき骨の山からパーツが飛んでいく。

 よりスケルトンとして強く有用なパーツを選び合成し組み上がっていって。


 やがて体が上半身まで出来だすとこんどは肩から腕が伸びていって。

 繊細な指まで出来上がると最後に頭骨が組み上がる。

 虚ろで空白の瞳に力強く(エフェクト)の輝きが灯った。


「ふう」


「ユウレン様、お客様です」


「あら、ローズと……月組のみなさま」


 ユウレンがすっと立ち上がり挨拶をする。

 自分が作ったスケルトンのほうが大きいからスケルトンに指示してどいてもらっていた。

 ユウレンはその長い黒髪を揺らす。


 全身が特別な装飾品で着飾っておりいわゆる業務用の姿。

 全身揃えるのは大変だったらしい。

 金色が鈍く輝き宝石たちも埋め込まれ綺羅びやかというより妖しげな雰囲気になっている。


 それもそのはずで1つ1つが魔術的に意味のある刻みがされ配置もされてエネルギーが込められていた。

 ちょっとやそっとじゃ手が出せない高級品になっており見た目の美しさとは別に超実用型だ。


「どうも、月組です。町中にスケルトンたちが溢れていたので、どのように量産され売られているのかを見に来ました。とはいえ、専門家ではないのでそこまで詳しいことはわからないのですが……」


 そうは言いつつスケルトンのほうを見る目が細まる。

 だんだんわかってきた。

 普段からクセで目を細めるものの何かを見抜こうとするときにも目を細めている。

 つまりはスキル使用だ。



「まあ、これが生業ですので良いも悪いもないのですが……やれる範囲で全力を尽くしています。最近は特に腕前の上昇も良い感じで、メンバーも増えてきています。同時に街からの発注も多いため良い循環が出来ており、その資金をもちいてより量産かつ高品質になっていますの」


「これは……なるほど……パッと見た印象だけでも凄まじいですね。骨でできた美術品のようだ……なのに実力はもしかしたら都にあるもの以上……」


「まだ本格的な活動時間ではないためみなは来ていませんし、やることも基本的に今の繰り返しですが、よろしかったらこの場の力を高める様々な芸術品を見ていってくださいな」


「あ、はい……?」


「ほら、この像はししょ……先生が作られ私に渡してくださった第一作で、ほら! これなんて先生が私の誕生日に合わせて作成してくださった魔力水をためる壺で、これの造形もさることながら効能が――」


 その後。

 興奮したユウレンが落ち着くまで散々自慢話を聞かされた。

 最後の方なんてランムは頭が痛そうな顔をしていたけれど見なかったことにした……








「間違いなく、腕は良いのだけはわかりました……死霊術師には変わり者が多いとは聞きましたけれど」


「あはは……」


 私達は軍事施設を目指して再度有るき出す。

 だいぶげっそりしているように見える。

 月組は過酷な状況下での活動は多かっただろうけれどひたすら調度品の褒めを聞かされるというのはなかっただろうなあ……


「まあ、データはもらえたのでよしとします……おや、あれが軍事施設ですね」


 そうこうしている間についたようだ。

 私達は軍事施設として区切られた領域内へと入っていく。

 緑で区切られていること以外は立派な建物があるようにしか見えなくもない。

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