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四百八十九生目 擦違

 オルオルさんが慣らし撃ちに戻ったのを見つつ。


「軽くやってみましょうか」


 私からの提案にランムは頷く。

 練習用の銃ならば借りられる。

 中に詰めるのは低威力の弾丸のみだ。


 前世界と違って弾丸で弱くても穴が相手致命的な傷になる……ということはほとんどない。

 もちろん実力者の乱射はこまるが……

 アノニマルースの銃は全部管理されているからそう簡単にはされないようにしている。


 もちろん絶対はないけれどもそもそもこの世界はみんな素で武装しているようなもの。

 魔物たちなんて銃より断然恐ろしい兵装を肉体として積んでいることは珍しくない。

 そっちの対処が大変だったりする。


「これが貸し出しの銃……?」


「すみません、月組の方たちが扱うものよりはどうしても格が落ちるので……」


 レンタル屋で並べられた銃たちは製作者たちの失敗品と弟子たちの試作品。

 月組たちは国のナンバー2。

 それはもう国家最高峰の武装だろう。


 だからやっぱりチャチく見えてしまうはずだ。

 ただ私の予想とは違いランムの目は細められているもののなんだかヒクついている気がする。


「その……わたしの知っているレンタル品とはだいぶ格が違うのですが」


「ええまあ、やはり都のものと比べればどうしても劣ってしまうかと」


「そっちではない!」


 ダン! とランムが机を平手で叩いた。

 私も店員さんもびびったからやめてほしい。

 それにしても……?


「そっちじゃないって、まさか別の問題が?」


「貸し出すには質が良すぎます。ここは軍事兵器の量産所かなにかですか」


「ええ? そりゃあある程度撃ててちゃんと飛ぶ銃たちらしいですが、聞いている話によるとここのは店に卸せないものらしいですよ。軍に卸すのは店卸しより更に信頼が置けるものですし……」


「なっ、こんな、一般兵が持てるようなものでは……というより、たいした兵装はないという報告は一体……!? あいつらは何を見て……!」


 多分戦車みたいなのに期待していってあんまりなかったらふつうに報告してきたんだろうな。

 それはもう今のトレンド的に仕方ない。

 ただ魔物たちはまたニンゲンたちも事情が違うのだ。


 戦車だってその車を引いて動かす側だし大型の常設兵装だと守り用だから皇国と同規格が多い。

 魔物はみんな似た規格で扱いにくいのもあってあんまり乗り込む系はないんだよね。

 そして個々の質も高く走れば個々で戦車になるような大型魔物もいる。


 まあ見るところが違ったね……

 そんなこというともっている銃がギリギリ音をたてているランムを刺激しかねないので言わないけれど。


「……はぁ、あとで言っておかねば。まだ何か隠し事があるのなら、今のうちに言っておいてください」


「いえ、そもそもここも含めて私は管轄しているので……なんというか、アノニマルースはもうみんながみんなで作って盛り上げているので、私も多くのことは知らないんですよ」


「まさか、そんなはずは……」


「というより都市ひとつなんて個人管轄できる範疇を大幅にこえていますって」


「それは……」


 ランムは何かを考えるように目線をさまよわせたあとため息をつく。

 私の管理下でなにもかもできるわけがないとやっと納得してくれたのだろう。

 だから銃がそんなに良いグレードなのも今知ったよ。








 ランムは借り物の狙撃銃を。

 私はいつもの銃ビーストセージで狙撃場に移動した。

 互いに的を撃ち出してすぐに私の銃へ目を細めてくる。


「……あげませんよ?」


「なんというかその銃についても聞きたいのですが、さすがに私物ですよね。それなら、深くは詮索しません」


 いやあ……何か見抜かれていそうだ。

 さすがにこれだけでは未知の技術塊だとは見抜かれていないだろうけれど。

 ランムの狙撃腕前はさすがの一言だった。


 借り物なのにすぐ銃のクセを見抜き。

 普通より威力の足りない弾丸でスコンと的に当てていく。

 中距離相手で動いていく的に外さない。


 スキルはそんなに使っていないだろうにあまりのここちよい連続射撃に見入ってしまった。


「……実際に来てわかりました。わたしたちが聞いている段階では、まだ魔物たちの集落扱いだったのです。ただ、今はすっかり騙された気分ですよ」


「その、とても詳しいわけではないですが、ちゃんと細かく報告が入っているはずですが……」


「そう、そこが異様だったのです。都からすれば外れにある変わった魔物の集落扱いなのに、この街からの許諾、資金援助申請が異様に多いのです」


 そう話す間も射撃は止まらない。

 それはフラストレーションを晴らすかのごとく。

 凄まじい連続射撃音がしばらくの間鳴り響いた。

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