四百八十五生目 珈琲
ランムが固まった事件から少したち。
私達はカフェに来てやっと落ち着いた。
「あのような大兵器が実装されているなど聞いておりませんよ、さあ白状しなさいどのように運動し何体の製造を終えどこで製造しどのような兵装をつんで何人で稼働させているのか答えなさい!」
「いやいやいや!? だからゴーレムですって!」
「あんなゴーレムがいるかっ!」
いるんだから仕方ない。
激詰めされてただでさえするどい目がさらに光り輝き細められている。
ぶっちゃけこわい。
「魔法の"ゲートキーパー"産ゴーレムですよ! だからあの1体だけですし、独立して動いています!」
「"ゲートキーパー"!? 確か高難易度の作成魔法でしたよね、ただ、あれは先程のようなら大兵器を作り出せるものではありませんよ。複数の素材をかけあわせ、より高度な仕掛けをつくる、それが"ゲートキーパー"という報告があがっています。からくり人形の模造品ならともかく、あのような兵器ができるはずもありません」
「え? そうなんですか?」
それには私がびっくりだよ。
そんなことしらないんだもの。
しかしランムはさらに詰めてくる。
「すっとぼけても無駄です、あれほどまでに兵器運用に向いた最新の機体など皇国にすらなかったもの。さあ、設計図や工房を、さあさっ」
「落ち着いてください、ノーツは大事な仲間で、ゴーレムだけど擬似的に魂をもっているように思えるんです。というより、純粋な魂が宿っていて、それが人格として変化していっている過程なのかな?」
「ゴーレムに魂? 何を非常識な! ゴーレムに擬似神経をして、最低限度の受け答えが可能な研究はまだまだ途中でしたか聞いたことがあります。しかし、ゴーレムに魂を宿すなど、運用上に大きな問題が発生します。何せ、ゴーレムが自意識を持つということなのですよ?」
「い、いや、わかってますよ! 本来のゴーレム運用に自意識が問題なのは、人工知能はともかく自意識まであったらそれはもう道具仕様じゃなくて労働雇用ですから、でも私が作ったゴーレムってなぜか魂が宿っちゃうんですよ!」
「あなたが!?」
がっつりテーブルごしに肩を掴まれる。
2足歩行の姿で合わせて座ったのがここて聞いた。
明らかに単なるニンゲンとは思えないパワーで揺さぶられる。
「うわわわわ」
「一体どんな秘密を抱えているんだ、さあ、全ての技術を話しなさい!」
「いや、だから、そもそも兵器ではないんですよーっ!」
私はそのあとランムが落ち着くまで必死に説明を続けるハメになった……
「はぁ、では本当にあの1機だけと?」
「そもそも設計図とは違う完成形になったので、再現困難なユニーク機なんです。特に、魂があって人工知能があって、それでやっと動いているんですから、兵器としての量産なんて無理ですよ。実際、軍事施設の視察でもなかったんですよね」
「まあそうですが、ここまで来ると秘密の地下施設に工場があってもおかしくはないので」
「どんな施設ですかっ」
ツッコミをいれつつ訂正する。
そうこうしている間に飲み物が運ばれてきた。
……ランムはコーヒーフロートだ。
大河王国からの輸入品を使った希少な豆を使った飲料。
その上にアイスクリームが乗っている。
アイス好きでなければ頼まない商品だ。
逆説的に言えばこの短期間でランムはアイスをすごく好んでくれたようだ。
「ふう、少し落ち着きました。色々問いたいことは増えましたが……とりあえずいただきましょう」
「はい」
私はシンプルなコーヒー。
香り高いコーヒーだ。
……うん。すごくおいしいと思う。
私は別にコーヒーへ詳しくないのでだいたい何飲んでもおいしい。
ただ嗅覚が敏感なので予想以上に香りを楽しめる。
細やかな香ばしさの違いが豆1つ1つを感じる。
それなのにしっかりした味わいがまとまっている。
こんなに成り立っているなんてすごくありがたいよね。
私では出来ない。
「うん……これは良い豆を使っていますね。これほどのものが民間の店舗で飲めるとは、驚きです。なかなか我々ですら入手できないのに」
「独自の仕入れルートを確保しましたからね、まだ家で楽しむほど安価にはなりませんが。そうそう、ゴーレムに関してなのですが、通常の方で作成したゴーレムもいますよ。もちろん兵器ではないですか、見ますか?」
「何? それは本当ですか? ぜひチェックせねば……そもそもあの大ゴーレムも調べねばならないのに……今日は予定が詰まっているな」
そうはいいつつもゆっくりコーヒーフロートを堪能している。
どうやら優先順位はしっかりとしているようだ。
そのほうが心の負担としてもいいよね。




