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四百八十四生目 兵器

 探りを入れているのは月組だし何らかの探りを入れられているから探っているだけなのでセーフだとおもいたい。

 何よりバレなきゃセーフ。


『その、月組の目的って?』


『ああ、月組は皇国の脅威を探している。魔物だけで自治体任せのアノニマルースが異様な急成長をとげたのを、不審に思って敵対勢力の介入や、そもそもアノニマルース自体が敵対勢力と化す可能性を考慮しているらしい。ただ、情報が書類上の、しかも断片的なものしかなく、実物の変化速度や変化に驚かされているらしい』


『ええ……』


『言葉は悪いがアノニマルースの位置は田舎の中の田舎だ。都からしたら突如別国が生えたぐらいの衝撃なのだろう。特に初めは、肩を寄せ合う集落みたいなものだから、コボルト集落の少し発展版みたいな扱いを都はしていたらしい』


『ええ……?』


 アノニマルースが敵かもしれないと思われるのも驚きだがアノニマルースがまだ底辺みたいな扱いを受けているのも驚いた。

 どうりで国の公的資金がなかなか降りないみたいな書類がよくくるとホルヴィロスが言うわけだ。

 アノニマルースの状況は良く伝えているはずなのに……


 国のゆっくりっぷりには驚く。

 いや牛歩なのはよくある話だけれど。

 こう……インターネットワークとかあるわけじゃないからリアルタイムの現在ってなかなか向こうに伝わらないよね。


『最近、魔王討伐をした結果が都で話題になり、正式な調査が出向いた……と言った様子だね』


『え、まあまあ前の話だよね?』


『都ではこれが最速、ということなんだろうなあとは』


 ううん。

 タイムラグがひどい。

 しかも結果を出したことにより国内から目をつけられるとは難儀。

 

 大河王国はそれはそれは問題だったけれど皇国も別方向の問題があるよなあ。

 とにかく今は別に反抗の意思なんてないこと。

 そして簡単には潰せないってところも見せつけないと。


 それは司令側も同じだったらしく念話で話された。


『――とまあ、こちらは対策を考えて動かしている』


『うん、良いと思う。それと魔王の件は?』


『魔王もやはり監視したいらしくあちこち探し回ったり話を聞き回っているな。幸い、本当に魔王が何もしていないのがここに効いてきている』


 魔王がしていること……

 カード切って雑物ためこんで自身の力がどこにあるか探っているぐらいかな……

 ほぼほぼ安全である。


 油断しているわけではないけれどフォウの根が本当に善良だからなあ。

 私達の範囲で大丈夫だと見せたいが……

 下手なことすると勘ぐられそうだからやはり隔離のままか。


 とりあえずその日は月組たちが夜探索しているのを見張ってもらいつつ休んだ。









 3日目。

 ランムと合流しまた同行する。


「そういえば、自治軍事施設にはよっていかないのですか?」


「一応、他のものが行っていますが……すぐにどうこうというものはなかったと報告は受けています。特に兵器数が乏しいと」


「まあ、それはそうですね」


 ニンゲンたちは軍事力に対して数以上のものを求めている。

 もちろん頭数は大事だ。

 しかし頭数はあっさりと頭打ちにもなる。


 国の人口と領土は簡単には変えられない。

 ほとんど山地と海辺そして迷宮付近にあたる部分がほとんどを占める皇国。

 数少ない平地は都と農地が埋めて食料限界もある。


 隣の帝国を見ればゴリッゴリの兵数。

 皇国だって潰されないためには手を打たねばならない。

 まあ帝国の周りみんなに言えることだけど。


 やはりそこで台頭してきたのは一人頭の質だ。

 正確には個人がめちゃくちゃ強くなることではない。

 それは運もあるからね。


 一人が纏うのは鎧と剣ではない。

 相手を狙い撃てる大口砲の機体。

 兵器運用だ。


 魔法機体たちによる個々人のレベルに寄らない運用。

 技量ならば兵の鍛錬でなんとかなる。

 スキル確保も最低限鍛えやすいもので揃えて最大限威力を高める。


 今の軍事トレンドはそこらしいので月組には目立ったものとしては映らなかったのだろう。

 何せほぼ魔物たちは個々人の質で立ち向かうからね。

 スキル構成を考えたところでどうしてもニンゲンたちにまかせて前に出たほうが良い。


 そして月組ならば……

 そんな軍隊たちなどきっと飽きるほど相手にしているだろうし。


「なので、今日はもう少し菓子の城を――」


「おはようございます」


「あ、おはようノーツ」


「――菓子……城……え!?」


 ノーツがズンズンと歩いてきて通り過ぎていく。

 それを見てランムがメモを持ったまま固まった。


「あ、うちのゴーレムです。良いですよね」


「大兵器ーっ!!」


「え?」


 ランムが叫んで顎をあんぐりとあけて固まってしまった。


 

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