四百八十三生目 探査
ランムはおそるおそる弾力キノコの上に乗る。
しかし慎重ということは跳ねないということ。
ノリにくそうにボヨンボヨンしているがあれではだめだ。
「おわっ、おおっ……」
「もっと高く跳んで着地しないと、ここまで来れませんよー!」
「そうはいうがな! わかってはいる、わかってはいるのですが……はっ、はっ……」
さすが月組と言った様子で文句は言うけれど行動が早い。
しっかり立ち上がって徐々に跳び始める。
ある程度はねた所でぐっと足に力をためて。
大きく空に跳ぶ。
黒服が舞うのはさまになる。
スタリときれいに着地してみせた。
「おお、案外なんとかなりますね」
「やはり月組の方たちはバランスが良いですね。すぐものにするとは」
「もっと膝に来るかと思いましたが、キノコの足場が衝撃を吸ってくれた、か……」
ランムが納得しメモを取って進む。
このキノコギミックに満足して次に行ってくれれば良いのだけれど。
本当にこの場は毒を除けば幻想的な光景が広がっている。
歩いていくだけでもキノコという感触が面白い。
「キノコのうえを歩いたのはさすがに初めてですね」
とランムも喜んでいた。
目がするどいままなので本当に喜んでいるかはよくわからないけれど。
まあランムから不満らしい不満は飛び出さない。
私達はキノコの森探索を続けた……
密林内で占める割合としてはそんなに多くないのだが立体的な作りのためにしっかり探索しようとすれば1日あってもたりない。
ただ今回ランムが求めているのは全体像だと思っている。
けしてまだ私の迷宮がバレているわけではないと思う!
特に魔王とも関係がなく見つかって困るものは迷宮入り口しかない。
現在魔王は月組に見つからないところに隔離中。
「それで、お聞きしたいのは、ここを作り出した理念は、あなたとしてはどうですか?」
「……え!? 自然現象ですよ!?」
「……まあ、それはともかくとして、ここを自然公園にした理由です」
ええー……
知らないよそりゃ。
完全に成り行きでしょう。
ここだけじゃない。
全体的に街は成り行きでできていく。
私がわざわざ携わってないものも多くランムが聞いてきてもちゃんと答えられるかは微妙なことばかり。
もしかしてだけれど街の総責任者を間違えてらっしゃる?
私は街より外回り担当なんだけどなあ……
間違いなくたぬ吉に聞いたほうが正確に返ってくるよ。
と言えたら楽だがそんなことはあの眼光鋭い目が許してくれないだろうなあ。
「いや本当に私ではそんなに……とりあえず、別に誰のものでもない地域になり、木々も多いから自然公園という形にしちゃおうとしただけなんじゃないですかね? 街中に緑や川があるのは環境的には大事ですし……」
「そうですか……」
なんだかあまり納得が言っていない様子でメモられた。
仕方ないよ言うことないもの!
とりあえず歩みはしたから私は同行するだけだ。
キノコの森で何度も跳ねて上へ下へ移動し続け。
予想通りあっという間に時間をくった。
調査ということで細かいサンプル採取などもしていればすぐ日が沈む。
「では、3日目もよろしくおねがいします」
「あ、はい……ではまた」
当然のように明日も探索時に指名され宿でわかれる。
2日目にしてだいぶ気疲れが激しい。
大河王国のえらいさんたちを相手にするのとはまた違う。
ただ夜こそがいちばん気をつけなくてはいけない。
私は気合を入れ直し夜に備える。
幸い先程の食事効果で夜は疲れることなく連絡をやりとりした。
『月組たちが何を探ってるのかがわかった』
それは突然入ってきた連絡だった。
昼間の行動それに夜の動き。
私達や偵察部隊それぞれの報告をまとめ上げ素早くももう司令部では答えが見つかったらしい。
正直探ることすらおっかなびっくりだけど。
ああいうえらい人たちって自分たちがやることを探られるのを嫌いがち。
まあ少なくともサムラやイマなんかは気にしないだろうけれど……
皇国は徹底した皇王至上主義だ。
皇国の信仰は入り乱れているものの独自の5大竜信仰のひとつと言ってもいい。
神話に多数の神々が登場して行くタイプの多神教だ。
そのうちの1柱の血を人の身で受け継いだのが皇族とされている。
いわゆる半神半人。
ただ……徹底した格差はそこで起きていて誰も皇王の顔を見たことがないらしい。
誰も正体は知らず実在するかも不明。
ただ家系図や葬式それに即位式はあるのでなんらかのやりくりはあるらしい。
もしかした月組も関わっているのかも。
そしてそんな神秘性を保っているからこそ皇王に探りを入れるかとそのものが不敬扱いなのだとか。




