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四百八十二生目 跳茸

「まあ食材になって出された以上、食べられないものは入っていないだろう。遠慮なくいただこう」


 毒とかも特に気にせず食べ始めた。

 まあ今更仕込むわけもないからね。

 ランムは少し悩んだあと謎の和え物に手を出す。


「なるほど、見た目で想像がついたが、これはよく調理されている。 和の浸しもので良いだしです」


「見た目でわかるんだ……」


 私はまったくわからない。

 においも謎なんだよね……

 そんな調子でランムは箸を進めていく。


 そして最後にはアイスがすくわれてひとくち。

 ……美味しそうに目元を綻ばせている。

 よかった月組のみなさんの口にはあったようだ


 ちなみに何の味かと思ったら謎のフレーバー味だった。

 おいしいことしかわからない……

 なんか……あるよねお菓子でも。

 材料はさっぱりわからないけれどとにかくうまい味がするというもの。


「密林で食事といえば、やっぱりあの味を思い出しますよね……」


「やめろ! せっかく温かいメシにありつけているときにアレを思い出させるのは!」


「あったかくはあったじゃないですか。そもそもスープに溶かさないと、硬すぎてなにも食べられなくて……」


「やめろ、あの栄養しか考えていない携帯食料のことは! そして水を温めたやつにそこらへんの草を煮込んだだけの代物をスープと呼ぶのは……!」


 うわあ大変そうだなあ。

 月組ってそんな任務もあるんだ。

 ただ外での食事が大変なのは同意する。


 私達はそろそろ食べ終わるところだが向こうはもう終わったらしい。

 立ち上がっている。

 すると。


「ぬおおおっ!! 凄まじい力がわいてくるっ!!」


「い、今ならどんな仕事もこわくないきがする……! なんなんだあ!?」


 ……(エフェクト)が彼らからほとばしりだす。

 これはなるほど人気ってそういう。


「わ、わたしも何か急にやる気が!?」


「みんなすごい光ってますね。私も光りだしましたけど!」


 全身に力がみなぎってくる。

 こう普段よりパワーがだせるというより目がパッチリ全身快活といった感覚。

 みんなで光が収まりながら先程食事を出した研究員の方を見る。


「全部食べると……あー、説明面倒なんで、とりあえずめっちゃ元気になる仕込みがあって、24時間研究できるって力の食事っす」


 なにそれこわい。

 確かにこの世界は食事もグレードが上がっていくと様々な無視できない効果が発揮されていく。

 ただここまで1コースで組むような食事って中々ないよなあ……










 

 私達は二組にわかれる。

 というよりサムラとイマは研究所を見て回るらしい。

 ランムはもういいらしいので私はついて出ていく。


「あのキノコの森に行こう」


「あー……」


 やはり忘れられてなかった。

 いくしかあるまい。

 まあ気をつければいいだろう。


 というわけでたどり着きましたキノコの森。

 ランムには単純なつくりのマスクを渡し私もする。


「なるほど、幻想的な光景には毒がつきものということですか」


「苦しくなったら言ってください、解毒するので」


 下から見れば多くの木々と競うようにキノコが生え建物の層みたいに成り立っている。

 そして大小様々な胞子が飛び交っていて幻想的……までは良いんだけれど。

 小さいものは空気にまじり気管支を汚す。


 たいていは弾かれるがそれもくしゃみやせきという形になるし……

 変な所に入り込むと気管支系障害を引き起こしかねない。

 ただでさえキノコ類には複雑な毒が多いので。


 ただここで平然としている魔物たちも少なくない数いる。

 適者生存というやつだろうか。

 大きすぎるキノコをはじっこからもりもり食べているイノシシ魔物の横を抜けた。


「あ、少し止まってください」


 ランムは素直に停止する。

 目の前にそびえ立つのは背が低く地面から数十センチしかなく傘が広めで上に家1つたつくらいのキノコ。

 ……うん。言葉としてはおかしいんだけどね。

 この森では小さめのキノコなんだよね。


 私はそのキノコへと飛び乗る。

 すると弾力良く沈んだかと思えば……

 強烈に高く跳ね上げた!


 勢いは上のキノコまで届く。

 キノコに乗って上から下を覗いた。

 よしよし弾力キノコがあれば上下の移動は楽だ。


 普通のキノコ……この森のキノコは踏まれれば単なる弾力を返すのみ。

 しかしこの弾力あるキノコは違う。

 おそらく食べられないように生物学的な進化をしたのだろうが異様に跳ね返すのだ。


 サイズがサイズなだけに上に乗れば吹き飛ばされる。

 それを利用して移動するのはここに来る魔物たちに取って常識だ。


「大丈夫そうでーす! ランムさんも後につづいてくださーい!」


「あ、はあ……」


 こころなしかランムの顔がひきつっていた。

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