四百七十九生目 救助
ランムの親しみやすさを発見しつつ密林を歩く。
範囲の広さはともかくとしてとにかく上下に広い。
下からのコースではチェックできないこともあるので上からも移動する。
「はぁ、はぁ……なぜわたしがこのような密林で探索じみたことをしなくては……」
「少し休憩しましょう。この木なら虫はそうそう襲ってこないはずなので。内部網羅の上級者コースは、そちらの志願ですよ」
「わかっては、いるんですがね……こう、我々も来たくてアノニマルースに……いえ、やめておきましょう」
そりゃあ月組も現地部隊ということは指示部隊がいるよね。
それらに怒りを向けようとしてやめたらしい。
月組全体としては国のナンバー2。
月組自体も多くの手先があるだろうからそういう怒りの連鎖がむなしくなったのだろう。
大木の上は枝がひろがり大きくてしっかりとした足場になっていた。
ここに簡易的に座るための布を敷き休む。
軽く木陰にもなっていて高所特有のさわやかな風が吹き抜けていく。
ほてった身体を冷ますのに最適でランムもやっとひといきつけたと息をはいた。
黒服と獣。
ひとりといっぴきはお茶を汲み飲んでこのひとときを共にすごす。
「悪くないですね」
「旅亭のお茶、良く身体に染みますよね」
ランムは良い笑顔ですぐ1杯飲む。
自動的な気温調整機能は優れていても密林の多くは熱帯化させてある。
その影響が少なからず出てしまうからこまめな水分補給と休憩は大事だ。
壮大な景色として成り立つここは周りを見渡しても更に高い木々やたくさんの虫たちが蠢く姿。
それらを狩りに来る魔物たちやツアーしているニンゲンたちなどさまざま。
「少しはアノニマルースのこと、知ってもらえましたか?」
「まあ、嫌というほどにね……それに、こうしてきたからこそわかりました。普段の報告のことは、かなりただ入り口をすくっただけなことだと。おそらくそちらの担当と小部屋で少し話すだけのような調査で」
「う、うーん、そうかもしれませんね」
そのとおりである。
ランムの目がギラつくのがどの意味合いを持つのかはかりかねて困る。
そうこう話している間に休憩は進む。
ランムがしばらく語るのを聞くという感じだったが。
ひと息ついたのかランムが外に目を向けた。
「あちらのほうはまた雰囲気が変わっていますね」
「あー……キノコの森ですね」
キノコたちが連なり木々すら越えようと生えている場所がある。
それこそがキノコの森区域。
ただあまり近づいてほしくない。
なぜならキノコの森には地球の迷宮への入口もある。
ただ今回はちゃんとした中巡りなんだよなあ……
……うん? なんだろこの音。
「ふむ、行ってほしくなさそうですが、何か理由が? ま、まさか……先程のような虫がたくさんいるのでは……」
「ちょっとまってください。あれは……」
光神術"エコーコレクト"。
これで音を正確に拾う。
向こうの森かな。
私が少し声色を変えたせいか必要以上にランムが警戒しだしているが……
音は……何かを追いかける振動か。
そして叫び声。
「「うおおおおー!!」」
「だから駄目って言ったじゃないですかー!」
「貴重なサンプルをやつらアノニマルースの魔物に見つからず手に入るチャンスだったんだぞ! こんな場所にいる虫たちが単なる虫なわけがない! みすみすこんなチャンス逃すわけが!」
「だったら起こさないでくださいよー!!」
あの追っている音から察するにまあまあ危なさそうな虫かな……
もしかして誰も彼らについていない?
ひっそり忍び込んだのかな?
"鷹目"を使って……
……いた!
「あれは……サムラさんとイミさんでは?」
私は魔法で亜空間から望遠鏡を取り覗きランムに渡し見る。
「何? 貸してくれ……本当だ! なぜ追われているんだ」
私もわからない。
ただわかることは……
「助けにいきましょう!」
「今度こそ、遅れはとるまい」
私たちは手早く片づけて立ち上がり……
私はグラハリーサイズへ巨大する。
「何っ!? それがあなたの本当の姿!?」
「いや、本当の姿とかではないのですが……とにかく乗ってください!」
「わ、わかった」
専用の鞍をつけトゲなしイバラを伸ばす。
ランムが乗るとトゲなしイバラで素早く固定する。
「ひあっ?」
「いきますよ!」
「ワアっ!?」
飛び降りる!
遥かに高い木々から落ちて行き……
太い枝に乗る。
着地の反動を活かして枝で跳ねるように飛び出しまた枝に乗る。
これを繰り返せばあっという間に到着だ。




