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四百七十八生目 密林

 アノニマルースは自治権の強い自治体ってだけなのだ。

 何も嘘は言っていない。

 それに難民全員が大河王国民だとも言っていないが言わなくとも納得してくれたので良しとする。


 どうせ書類には書いてあるしね。

 難民の逃れてきた国がほとんどわかったのは事実。

 そういう先にも私ではない誰かがちょくちょく顔を出していったりもしている。

 少しずつ改善していかないとね。


「一体、この町が目指す先は……とにかく、次へ行きましょう」


 スタスタと歩くランムに合わせ私も歩いていった。

 ここもちゃんとした住宅街になる日は近いなあ。

 大河王国街とかの区分になるのかな。


 生きるという権利がもっと広く適用される日はきっと未来に来る。







「ここが自然保護区のアノニマルース立公園です」


「ここって、町中ですよね……?」


「自然公園は大事ですよ、一気に空気が良くなり地盤が固まりますから」


 私達は少し遠くから大密林を見る。

 もうあそこが1つのダンジョンなんじゃないかなって最近思う。

 1番大きい木は果たしてすでに何メートルあるのか測り方もわからない。


 外部からは当然危険なため入場制限が引かれている。

 安全な道筋はあるため入場料かパスで入れる。

 現地ガイドつきがおすすめ。


 今回私はいるし月組のランムさんはフリーパスなので気にせず入る。

 ツアーガイドは私だ。


「どこらへんまで行きますか? 1番危なくないルートだとさわり程度ですが……」


「今日は長時間調査が可能なので、内部のこともよくわかるルートで。行きましょう」


「わかりました。あ、どのくらい戦えますか?」


「……うん?」


 ランムは表情が固まる。

 そして彼女は……

 すぐに自然公園の洗礼を受ける。









 私達はふたりして走っていた。

 全力だと置いていってしまうから適度に距離を取りつつ。


「ハァ、ハァ、ハァ……!」


「もうちょっとです、もうちょっとで撒けます!」


「ねえ、戦っては、駄目なの……!」


「出来得る限り保全する必要があるからですよ!」


 私達は背後から迫る巨大な虫から逃げていた。

 触覚が長く身体が黄色で小さめの(はね)を持つよくわからない虫。

 密林とかにしかでないタイプかな。


 よし見えた。


「この先! おーい!」


「うん?」


 密林の草木で隠された向こう側。

 そこにはより巨大に蠢く何か。


「救助? 助か……いっ!?」


「走り抜けて! いやいっそ!」


「ひあっ!?」


 ランムがそれを見て足を止めてしまったのでとげなしイバラで掴み持ち上げる。

 そのまま駆け抜けてその巨体向こう側へ。


「虫、よろしく!」


「おお、ラッキー」


 それは蠢く大蛇。

 山を削り動くような巨体。

 私達は彼の影に隠れる。


 この密林と釣り合うような大きさを誇る蛇は……まあ知り合いではある。

 そこまで深い仲ではないけれど。


 蛇らしく舌をチロチロだし……

 黄色の虫が茂みの中から飛び出す。

 そして蛇はその虫に一瞬で飛びついた。


 牙をつきつけそのまま丸呑みする。

 来世は元気に跳ね回れると良いね……

 とりあえずこれで私達は助かったしトゲなしイバラを開放する。


「ありがとう、助かったよ!」


「蛇……!」


 ランムが必死になり懐から銃を出す。

 私は慌ててランムの前飛び出した。

 いやいや!


「落ち着いて! 味方だよ!」


「……っ!?」


「なんだ? ニンゲンか。ニンゲンになんて興味はないぞ……」


 そして赤い鱗を持つ大蛇……ヤマガフガはゆるりと動き出す。

 地を這って移動するため巨体の割に移動音がとても少ない。

 結局ランムが構えている間に去っていた。


「っはぁ!」


 ランムは息をはきだし銃をしまう。

 肩で息をしていた。


「それじゃあ行きましょうか、まだまだめぐるところはあるので」


「なんなのこの森!? いやむしろ、この町全てが規格外……!」


 ランムは頭に手をやって髪の毛をワシャワシャとこする。

 あぁあぁセットした髪が乱れてしまうよ……

 世界には異様な場所なんてここよりもたくさんあるからそうでもないと思うんだけれどなあ。


「大丈夫ですよ、さっきの虫は魔物ではありませんし、蛇はアノニマルースの市民というより、野生環境で生きているだけなので。そこらへんで寝ている魔物の力量が、街一つ簡単に滅ぼせそうな迷宮とかより断然ふつうですよ」


「比較がおかしいのですが?」


 ランムにぶつくさ文句を言われながら密林の中を歩いていく。

 なぜだ……

 それに月組ってもっとエリートでとっつきづらい感じかと思ったけれど大自然に放り込まれたら普通なんだなあ。

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