四百七十五生目 鍛冶
驚くランムさんと共に歩んで移動しつつ話していく。
とにかく良いイメージ持ってもらわなくちゃね。
「さすがに回復の源泉は販売分もたくさんあるので湯水のようには使いませんが、アノニマルース民ならば常に福利厚生で希釈液を得られます。怪我や病気に繋がる傷が塞げるのですから、結果的に医療費が浮いているそうですよ。ほとんど通常寄りの水は上水道を通していますが、苦労したのは濾過問題。荒野の迷宮は水が濁りがちなので。下水は排泄物用のスライムを取り入れていますが、上水は同じ仕組みではいきません。最近、他国の水浄化を参考にして、現在の水から更にグレードをあげて、直飲みでも危険さが一切ないように――」
大河王国の大河はすごかった。
勝手にキレイになるんだもの。
アレをこっちの水でも取り入れられないか研究中だがわりと目処はたっている。
そうこうあれこれ話していたら場所も移り変わりランムさんの目が驚きに丸くなったり細く鋭くなったり。
何かを手元に素早く書き留めていたりと。
忙しそうだ。
彼らは良いか悪いかってあんまり言ってくれない。
とにかく次と言うだけだ。
今度彼女が足を止めた場所は。
「ここは、なにかやたら大きい場所ではないですか?」
「あ、巨人系族のエリアですね。特に鍛冶業が盛んなエリアです」
「なるほど、同じ規格ではアノニマルースでは過ごせない者たちが多いのですね」
「まあそこは仕方ないですね。最大身長は100mほどありますし……」
本当に大きい魔物もいるんだよねアノニマルース。
流石にそこまで大きいとアノニマルースの機能を最大限活かせないので生息地と行き来したりするけれど。
でもバケーション気分でアノニマルースに訪れられるのは大事な要素。
「100m……」
ランムさんの声が僅かに引いていた。
鍛冶施設を解説できるだけしながらあるいていく。
すると今度ランムが足を止めた場所は……
「ここにたくさん有るものは……風車、ではないようですが」
「龍脈車ですね。最初は1つだったのが懐かしいです」
ランムが鋭い目を龍脈車のほうへと向ける。
昔1つだけあったこれは便利ってことで量産された。
中では自動で大きな鍛冶を打てたり何かを擦れたりできる。
全部ここにあるということは中に巨人たちが入って作業するということなので大きさがすごい。
いちいち見上げるサイズ。
今動いているのは半分くらいで巨人サイズの魔物たちが山のような資材を運んでいる。
ランムさんはいちいちめずらしい同じものを見たという様子でメモをとり周りを見渡す。
大都会から田舎にきたおのぼりさんという珍しい立ち位置。
そして1番大きいのは……
「あの……もしかして、あの城か何かみたいな建造物も」
「そうです、龍脈車です。アノニマルース内でいちばん大きいですね」
本当にアノニマルースの土地確保を広めに取っておいてよかった。
まだ郊外はロクに開拓できていないがエリア確保だけは考えておくのだいぶ大事だね。
最高にデカイ建物たちが建てられる。
しかも巨大魔物に合わせた仕様だからとにかく隙間が大きい。
小柄な私達は邪魔にならないように道が用意されていてそこを通る感じだ。
車道と歩道みたいなもの。
「その、一体どういう技術、いや、力……ありえない……」
「どうなさいました?」
「いえ、また理念の方や存在理由をあなたの言葉で聞かせてください」
「ここも気づいたらこんなに大きくなっていたんですけれど、ここは元々、龍脈のエネルギーを街のエネルギー問題解決に役立てつつ、鍛冶の補助も出来ないかと考えから始まって、そこから少しずつ増えて――」
そういえばなんでこんなに大きくなったのが出来たんだっけと思いつつ話す。
確か長が自分のはもっと立派にしたいと言い出して……
だったらランドマークになるような改築をしようとかの話になり。
むしろ長の家や仕事場もやってしまおうとかの話が出て。
やるなら世界一の鉄火場を作るとか息巻いて……
なんか……できていたんだよね。
そのようなことを話しつつランムが納得したのかわからないがまた歩みをすすめる。
ちなみに鍛冶ギルドアノニマルース支部も兼ねている。
中を見ていくかと思ったけれどそのまま別の場所まで行った。
「あの」
「はい?」
「これは、何かの催しですか?」
「昔催しついでに作られたものですね、お菓子の城は」
いくつか足を止めたが今度大きく見上げたのはまた城。
お菓子のだけど。
現在も立派に建っている。
ハロウィンで建てて我ながらおいしく出来上がったので観光名所になっている。
入場料安いよ。障害者は半額。




