四百七十四生目 公園
ほとんどの質問はよくあるようなものだった。
ただそこに私の主観を加えるように注文が入っていく。
出来得る限り起こった出来事だけを羅列するならともかく主観を交えつつというのは難しい。
「参考になりました」
「それなら良かったです……」
「それでは、時間が惜しいので行きましょう。わたしの荷物は部屋の方へ!」
「ハッ!」
「え? 行くって……」
月組の者が高級宿泊施設へランムの荷物も持っていく。
そして私はランムに真横へつかれて。
「もちろん、アノニマルースの調査です。共に来てくれますね?」
「は、はい……」
有無を言わさぬ気迫がそこにあった。
私とランムはそのまま移動する。
ランムは長旅なんのそのという体力でアノニマルースを練り歩き説明をしていく。
ただ彼女が進むのは観光区の方ではなくて……
「こちらは?」
「あ、こっちのほうは住宅街になってきますから、あんまり見ても面白いものは少ないですよ?」
「大丈夫です。それを決めるのはこちらなので。調査とはそういうものです」
「そうですか……?」
しかたないのでついていくことに。
私なんだか今日は振り回されそうだぞ……
まずついたのは。
「ここは、訓練所かなにかですか?」
「うーん半分はそうなんですが……そもそも民間の公園で、魔物たちが遊ぶためにある施設がほとんどですね。訓練というよりも的あてです」
いきなりここにきてしまった。
ニンゲンの目から見たらかなり特異に映る場所だろう。
魔物子供が遊ぶ場所は。
遊具はあるものの目立つのは炎立ち雷が走り葉が舞い水噴き出す場所。
みんなが区分けされたカカシに向かってワザを放ったり簡易なからくりを回して的を動かしていた。
「ここの理念や存在理由を教えてください。出来得る限り、あなたの言葉で」
「私はここの開発に関わってないので、言い切ることはできませんけれど……この公園は、もちろんみんなが楽しむためにできてはいるんですが、能力発散とコントロールのためにもありますね。子どもたちはまだまだ自らの力感覚が完全ではありません。自身の中にエネルギーがたまりこむと良くないことも起こります。それらをうまく発散しつつ、一体どうなったら力が放たれて、どう痛い感じになるのか、こまかくチェック出来るんです。不意に誰かを傷つけてからはでは遅いので。ちなみに成長してからは器具たちは使用禁止ですね。壊れちゃうので……」
「ふむ、危険な遊具や兵の育成ではなく、あくまで教育の一環だと?」
「大局的にはそうです。けれど、もっとざっくり、楽しむため、娯楽という見方でもいいと思いますよ。あ、あちら行きましょう。始まるみたいですよ」
変に問い詰められても何も出てこない。
鋭い眼光を受けながらランムを公園奥へと移動させる。
そこでは小さな広い空間が出来ていた。
小さい子たちがわいわい集まり対峙するのはまたふたりの子供。
周りより少し大きい。
成長期に入った子かな。
「あれは?」
「アノニマルースは魔物たちが集まります。ゆえに、よく腕自慢たちがバトルするんです。ここでのカジュアルバトルは簡単なスポーツ扱いですね。ニンゲンたちの街に決闘を街ごと取り組む地域もありましたが、ここではバトルとして簡易に競い合い、高め合ったりストレス発散しあっています」
「それは、野蛮ではありませんか? 危険ですし……」
「そこは、見ていただければわかります」
広場に薄い透明な膜がはられていく。
あれはふたりの力を受け取った結界。
ここに組み込まれた魔法陣のものだ。
そして……
「ようし、いくぞー!」
「来いや!」
光を全身でまとった体当たりが炸裂する。
そのまま相手がうけてなんとかいなす。
相手は反撃としてアッパーをいれる。
体当たりした側は吹き飛ばされるもすぐに立て直し……
また両者光の火花散らしてぶつかりあった。
「野蛮なやり取りしか見えない……まあ、結界で外部へ影響が出るのは防いでいるようですが、この傷はどうすればいいと。だいぶ痛いだろうし後遺症といった危険や傷病も……」
「大丈夫、みていればわかります」
さらに戦いは続いて最後は大きく片方がふっとび倒れる。
その瞬間に結界が解除された。
ワアと歓声があがる。
近くの魔物が近寄っていく。
「ふたりともナイスファイト! ほら、これ」
「サンキュ」
「ありがと」
ふたりが受け取った水筒を飲むとみるみる傷が治る。
「なっ!? あれは高額なポーション!?」
「アノニマルースは既に安定的に各魔物たちが持ち、すぐに汲み引ける体制が整っているので、原水を希釈したものをどこでも得られるんですよ。詳しい仕掛けは秘密です」
近くの大自然公園ででかい龍穴があって水もガンガン湧き混ざり合って凄まじい効能を持つ水になっている。
もともと荒野の迷宮は掘れば水が湧く環境だったが上水道もばっちりだ。




