四百六十八生目 革命
キサラギはここにくるまでの話を軽くしてくれた。
彼はとある大国で暮らしているおじさんだったらしい。
そのころはまだ身長が180ほどあったんだとか。
ライフラインである国の大農地が荒らされ調査。
その途中謎の光が辺りをつつみ……
気づいたら小学生になってここにいたんだとか。
絶対まだ成長するはずと言っているが今の所見込みはない。
大人だそうだし。
「そうか……もっと元の土地に住んでいた奴らも、会ってみたいものだな」
「全員が善意で動いているタイプではありませんよ。この世界に来たことで、狂う者もいました」
「それはそれで、先手を打って潰しておかねばならないな」
キサラギはそう言って悪い笑みを浮かべた。
「それと、ちょっと小耳に挟んでおきたいんですけれど……」
「なんだ?」
キサラギとはいい関係を築きたいが正直彼の人となりがわかりにくくなんとかなるかわからない。
まあいい方向に行くよう私も協力するしかない。
ソレはアノニマルースに戻ってからも続く。
「ホルヴィロス、どんな感じになってる?」
「んー、とりあえず女の子の方から。肉体の方は問題ないね。過去に受けた可能性のある傷も含めて、きれいさっぱり直った。ただ、心がね……とりあえず、脳の感情器官修復や魂の正常化をしているけれど……そうだね、悪く言えば、治療後しばらくはすごくフラットな状態になると思う。まるで中身がないかのように。けれど、そこからリハビリを繰り返して日常的な思考や感情を後天的に獲得しなおせば、多分治る見込みがあるかな」
つまりリセットをかける必要があると。
ホルヴィロスが言うのならそうなのだろう。
「すごい、さすがホルヴィロス!」
「でしょー!」
ホルヴィロスはその白い身体を振るわせシッポもブンブンしている。
うーん……実は神様なんだけどなあ。
これがホルヴィロスの良さであり困った点でもある。
「そして、足の方は……」
「やっぱり、出来得る限り本人を診てやりたいのは山々だけど面倒な神らしいから、会わずに済むのはありがたいね。映像も立体再現されていたから、なんとか割り出してみたよ」
「すごい、本当にありがとう!」
ホルヴィロスはカルテをツルで持って渡してきた。
カルテには映像を解析して出した付け根部分のサイズや長さを測ってもらえた。
これを持って……
アノニマルースの大公園。
何もかも巨大になった樹林の奥地。
龍穴がある近くには大自然を活かした研究所。
ここはバローくんというニンゲンの少年……いやそろそろ青年?
まだ早い?
ぐらい年頃の子を中心として日夜研究に励んでいる。
最初は精霊学だったが興味は多方面に伸び研究所自体魔物や人の入りが大きくなって様々な研究施設が入り乱れるようになった。
それは当然仲のいい九尾博士もここによくいるというわけで。
「なるほど、これが聞いていたやつか……ワシとしては、ノーツのさえできれば、こっちはオマケなんじゃがなあ」
「ポーズ変更」
「交換条件なんですから、やりましょうよ。それに、ゲートキーパー型義足なんてめったに作れませんよ、技術革命を起こしていきましょう!」
ノーツがこの研究施設で全身を観られながら研究されている。
ノーツは私もわからないレベルで自己改造や変化を遂げており非常に興味深い技術で作られてあると研究をされている。
ただノーツはいつでもよかったらしいが私としては交換条件がほしかった。
それが義足づくり。
ノーツの技術は前世的な科学とこちらの科学のハイブリッド。
いいところがたくさんあるからぜひ研究し最高の品を提示したい。
でなければ……あのリュウのことだ。
絶対文句をつけて跳ね返す。
国中の神力をかえしてもらわねば。
「いろいろ糸目をつかないから、最高傑作をお願い!」
「事情は少し聞いています。どんな相手でも納得するものを作りましょう!」
「まあワシは義足や義手程度なら作ったことが有る。専門の技師を超えた技術の粋で作ってやるかのう」
贈呈品なので私の力だけではない。
大河王国は余裕が少ないとは言えバックについている。
そのことを知っている彼らは良い笑顔で研究費を得られる算段をつけていた……と思う。
そして時は進み。
「リュウ、あれ以来だな」
キサラギと私がたくさんの水量が落ちている例の空間に来た。
ここはやはりリュウの神域という扱いでいいのだろうか。
ここにいるリュウはかなりキリッとしている。
「全く、神に大してとんだ不遜な態度を取る王だ。そう、あれは……」
「おっと、今死ぬほど忙しくて正直今も吐きそうなのを我慢してここにいるんだ。貴様に協力してもらうための贈呈品、受け取ってもらうぞ」
「ほう、言うからには、それなりのものなのだろうな?」
……なんでこのふたりただ贈呈品渡すだけですでにバチバチに火花が飛び散っているんだろう。




