四百六十七生目 英語
翌日……とはいわず当日から大忙しになった。
「全国から貴族共を呼んで盛大な即位式をしろ。ここで金に糸目は付けるな。それから国一周パレードをするといい」
リュウの言う計画を組むだけでも難しく猫の手も借りたい状況にすぐなる。
もはや詳しい事情を知っていれば国内だけではなく国外のやつもと私やドラーグそれにローズクオーツとノーツまで駆り出される。
「その際、民に誰かと対等に話す姿を見せるな。誰の意見も聞くな。王の全てが絶対で正しく孤高であるように見せよ。まぁ無駄口を叩かずに鷹揚に頷いておればよい」
リュウはそういうものを話したがりのキサラギと相性が悪かった。
事前にスピーチや質疑応答をしぬほどまとめる羽目になる。
幸いキサラギの側近が普段から感化されよく知っていたため、
「王になった」
「左様で。では、事を進めます」
と、二つ返事でキサラギから仕事を受け取る。
ここまで王になると信じ切っているのも珍しい。
ニンゲンだけど女性とも男性とも言い難い不思議な雰囲気を持つ方だった。
「振る舞いはラーガやフレイは教育を受けているが、余は貴様をよく知らん。社交ダンスはできるか?酒と食の知識はあるか?」
「クフフッ、外面を良くすることか? 任せろ、なぜこのナリでなめられずにここまで来たと思う」
「……暴力は駄目だよ?」
キサラギは低身長で身が細くなおかつ服も貧相なのを自覚していた。
即位式当日はそれはもう立派で綺羅びやか過ぎて服なのか鎧なのかわからないくらいのものを着させられていたが。
なによりもキサラギが完璧かもしれないと言えるほどに外向きの顔をつくれたことが意外だった。
グレイによると「最初はいい人だと思ったんだけれどね」とのこと。
正直即位式の内容は殆ど覚えていない。
凄まじい速度でニンゲンたちを呼んで凄まじい速度で会場を成り立たせ凄まじい速度で行脚を開始した。
グレイが言っていた「キサラギはいろんな場所へ同時に現れるという噂がある」というのもそこで正体が判明する。
キサラギの部下がひとり魔術師がせっせとこまめに国中……いやもっと広い範囲に魔法門の元になるものを仕込んだらしい。
誰でも扱える設置型魔法門と比べ本人しか無理なそれはかなり使い勝手が悪いものの設置費用がとても安い。
快活なおじいさんだった。
私達やキサラギたちはおじいさんに付属してワープし街を通りまたワープする。
当然現地ではなんの準備も間に合っていないが気にしない。
とにかく交通整理と警備だけは気を配る。
主要都市は抑え村にも出来得る限り通るだけでも顔見せする。
キサラギは鳥車の中から無限に手をふる作業だ。
強行日程は全員に疲労をためていく。
なんだか色々ワイワイと盛り上げがあった気もしなくもないけれど忙しいという記憶に全て吹っ飛んだ。
私もワープ魔法使えるからってこき使われた……
あと警備ギルドとしても警備を激しくやりつづけたりして。
そして何日たったかわからないある日。
やっと終わって王宮に帰ってくる。
疲れた……神たちへと報告も道中でしたし納得してもらえたけどスキマ時間つぶして行ったのがつかれた。
「……被害は?」
誰かが言葉をこぼす。
「……権威の力って偉大ですね。顔見せをした途端、その地域で犯罪率が激減しました」
「言われたとおり、やって正解だったか……今の所は」
「こんな不気味な力、頼らないように済むまでが遠いですわね」
「今便利なら、便利に使わせてもらうまでだ。未来のことは、今はいい……だから、大きなおおきな流れの中でつなぎの王であるというのは事実上変わらんだろうな」
王宮でなんとなくメンバーが個室にあつまりお疲れ会的な状態になった。
全員がさっきまで外行きの姿で交流していたとは信じられないほどの疲労っぷりだった。
「でもこれで、最初の関門は突破しましたね」
「ああ、こっから将来に向けて政治改革し、最終的に投票制度まで持っていくのは骨が折れそうだ……」
「義足はどうなりまして?」
「今、医者に映像を見せているところです……」
……あ。
今思い出した。
「だったら、良いのですが」
「ところでキサラギさん、例の話……」
「ああ、少し場所を移すか」
キサラギと共に王宮から外が見える場所に移動する。
高い位置から庭の絶景が見放題だ。
「それで、英語を使えたのは偶然ではないのだな?」
「はい。私も元は地球の人でした。あなたも?」
「まあな。オレ以外にも似たような経験をするやつがいるとは思ったが、まさかこんなところにいるとはな……」
「割と、国1つにつきひとりくらいいるかも。もちろん私みたいに魔物だったり色々転生しているけれど」
私達は英語でやりとりする……




