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四百六十三生目 義足

 結局リュウには貢物を捧げるという古来よりよくある神の鎮め方をすることとなった。

 それをしたら過剰な神力も解放してくれるらしい。

 どう考えても扱いきれていない量だっからね。


 ただ肝心の貢物がさっぱりだけれど。

 リュウはたいていのものは寝ていれば手に入りそうな生活をしている。

 何をあげれば満足するのか……


 私達は坂を下っていく。

 リュウたちをあの場に残して。


「ええと……これで本当に大丈夫なんでしょうか? ワタクシ、絶対ぶっ飛ばさなきゃと思って準備していたんですけれど」


「ええ。ぶっ飛ばすのはまだ先にしたほうが良いでしょうね。リュウは既に朱竜という暴力装置の圏内に入った。もし彼が解けた封印で好き勝手しようとした時点で、朱竜を同時に恐れてしまい、意識がつよまり、事故が起こる……そうなれば簡単に飛んできますから」


「なんというか、話を聞く限りその朱竜が飛んできたら我が国は無事では済まぬようだが……」


「済みませんね。だからこそ、人側の協力体制も大事なんです。リュウを常に見張るのは他ならぬ、あなた達になるのですから」


「そ、そうか……既にこんなに多くの神にあっているせいで、何もかも感覚が狂ってきてしまっているな……」


 建国の神に5大竜に相当する神……

 確かに出会う相手としてはめちゃくちゃだよね。

 ラーガ王子の眉間にシワが増えていく。


「ローズオーラさまも神様なんですよ。ただ魔物あがりなので、少し特殊で、とてもすごいんですが」


「そういえばあのとき流れでやったが、オマエも神に該当するのか。なんなんだ神とは……」


「さあ……私はまったくわからない」


「ワタクシもわかりませんね。ワタクシの場合は生まれつき神でしたから」


「ふむ……その神から先程力を受けたが、これは……」


「そういえばキサラギさん、神の権威が中途半端な指の畳まれ方していましたけれど、感覚的にはどうなんですか?」


 王と違っておぞましい手が包んでいる様子は見られない。

 キサラギの内部にのまれ消えたままだ。


「確かに強い万能感だ。これで勘違いして、幾人も闇に飲まれたんだろうな。ただ、いまのところそれだけで、今から身分の低い奴らいたぶろうとかそういう気分にはならんな。そちらから見たオレはどうだ?」


「とくになにも」


「本当に力を手に入れたのか?」


「びっくりするくらい普通に見えますわね」


「おそらく、国が形を留める程度の力はあるのでしょうが、過剰な力だらけにはならない段階でしょう。ここから、濁らし肥やすかどうかは、貴方次第ですが……」


「クフフッ、そこに関してはこれからを手を打つ。それは……ん?」


 私達はそろそろここから出ようと差し掛かった時に背後から近づく足音に気づく。

 またフカかな……枷を解いたからな……と思い振り返ればそこに。

 息を切らしたアサイがいた。


「お待ちを……その、お話があります」


「先程の……」


「アサイです。白き竜を、お助け願いたくて」








 私達は場所を移して個室のような場所に案内された。

 そこは豪勢な食事が取り分けられて置かれている。

 どうやらあの部屋にあった食事の一部らしい。


 この部屋もわけのわからない高価そうな絵が飾られている……

 あと壺。


「助けろ、というのは? 私たち、むしろ先程までかなりギリギリなひどいめにあっていたのですが」


 フレイ王女が扇を広げて仰ぐ。

 ……わかりやすいくらい態度が雑になった。



「先程、白き竜がみなさん見たり、時には畏れ多くも触れる、なんてことも出来たりといつもと違う、特殊な状況でした。ただ、みなさんが去ってからすぐにまた白き竜は触れられないようになってしまって……多分、こんな機会、めったにないと思うんです。よろしくおねがいします、白き竜に、義足を作ってください……!」


「義足? 確か枝を切り出したようなものを支えにしていたな……ふむ、もしかしたら献上品になるかもしれんな」


「そ、それです! それでお願いします!」


 キサラギがこぼした言葉にアサイがすがりついた。

 そういえばリュウはさわれない見られないという状況だったっけか。

 私が看破した状態でのみ干渉が可能……と。


「脚なんて、彼が満足するのかしら?」


「それは……白き竜が昔話したことが関わってくるので、おそらく。白き竜の身体、つまり白き竜が降誕なさる前の人が関係するそうです。腕は元からなかったけれど、足は後からだった、と」


「どういうことですか? それが僕の脚を切った理由にも繋がるのかな……」


「白き竜のお考えは深く、浅慮なワタシには理解がしきれませんが、少なくとも、過去に存在していたことはわかります」


 アサイはひと息入れてからリュウの過去を話しだした。

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