四百六十二生目 孫娘
朱竜特殊召喚準備スタンバイ!
本当に呼び出すと洒落にならないが。
朱竜の気配が消えたのかリュウは落ち着きを取り戻し祖銀を睨む。
「錫蜥蜴……! なんなのだ貴様! 貴様がこのようなことをする理由はなんだ、余を貶めて楽しいか!?」
「封印は長くは通じないでしょう。しかし、解けたときに余計なことをしたが最期、貴方は焼かれます。自らが恐怖で起こした行動によって」
「貴様……!」
祖銀は聞かれたことにはまったく答えずにつげたいことだけ告げて踵を返す。
これをやられるとつらい。
私は蒼竜に似たようなことよくされる。
「白き竜……いえ、リュウ様」
「フレイ……オマエもどういった了見だ。余はオマエが幼いころも見守っていた。それがこの仕打ちか!」
「リュウ様、そもそもの件について、我々は誤解があるようです。私たちは、本来リュウ様を亡き者にしようとしたり、大国を作り上げた功績を亡き者にしようとしているわけではありません。むしろ、これはリュウ様のためも含め、今後組み立てる大河王国のためにやらせてもらったことを説明します。我々が同じ位置に留まるだけにも、大河の流れに逆らって泳ぎ続けなければどこまでも……海まで流されてしまうように」
「オマエ……くっ、話してみよ」
リュウはフレイに上気した顔で見つめられたじろぐ。
下手に出られると本当に弱いな……
「まず私たちは貴方様のご利益を阻むつもりはありません。大河王国の発展は、貴方様の利益にも直結します。私たちはリュウ様だけに負担を押し付け生きてきました。もちろん、それは今まで我々すら王から聞かされることなく育ったからです。おそらく、そのころから権威という水は腐りだしたのでしょう。腐った泥水は、貴方様のお力を良くない方向へ曲げます。終る海へと船を漕ぎ出すのです。きっと、私達では把握しきれないような、この国を終わらせるような行為がたくさん行われてきたのでしょう」
「それって……」
フレイ王女が目線でアール・グレイに合図をだす。
一瞬アール・グレイも驚き止まったがその真剣なまなざしに突き動かかされた。
……なるほどフレイ王女はなんとなくアール・グレイが何を調べていたのかを知っているのか。
「……では、代わりに補足させてもらいます。まずこの国で行われている差別的制度について――」
そこからはたびたびアール・グレイが補足しフレイ王女が語りかけるという状況に落とし込む。
とにかくフレイ王女は話す。
アール・グレイが話し終えて何かリュウが話したげに口元を動かせばその音よりも早く。
口元を扇で覆って目で笑ってみせたり。
目を揺らしてみたり。
声が溶けいるように細く強かに出したり。
フレイ王女は気づいている。
リュウがフレイ王女に甘いということ。
私でも気づいたのだそれはそうだろう。
彼女はその手のプロだ。
話術は駆使されとにかくリュウの下手に出ながらも全方位丁寧に包んで囲み捉えていく。
張り巡らされた蜘蛛の糸はアドリブでやっているとは思えないほどに。
巧みにリュウに気づかせないほどリュウを追い詰めた。
そもそもこの国は次世代まで持つのかすらわからない段階なのだ。
フレイ王女の言葉はアール・グレイが真実味をもたせてくれた。
私も出来得る限り知る情報を正しく話しそれ以上突っ込まないようにする。
ソレだけでスルスルと面白いようにリュウの反論可能ポイントを潰していく。
単に下手に出ているのではない。
それを武器にして攻め込んでいるのだ。
「――つまり、ウクシツ大河の水が濁る用に合ってはならないこと、そしてソレこそ水の性質、滞れば濁るということ。それは避けねばなりません。リュウ様、まだこの国は未来があります。リュウ様のご尽力があらばこそ、国は育つのです。ぜひ、この国を建て直す機会を我らにお与えくまさい。これは謀反ではなく、リュウ様のためだと証明してみせます」
「しかし……」
「どうしても、だめですか?」
ズイとフレイ王女はリュウへと顔を近づける。
背後に下がらせられたアサイとフカがベリーショートベールで覆われた顔でもわかるほどわなわなと警戒心マックスにしていた。
そしてリュウはというと。
「そう……だな。そこまで余に頼まれては仕方あるまい。余のためにそこまで考えて動いてくれるのならば、仕方あるまいて。ただ今度、余のために何か貢物を持ってくるように。それにて、今回一連の不躾は不問とする」
「ええ、それはもちろん!」
……なぜかリュウのためにこちらが働いていたというテイに化けた。
恐ろしい……これがガチの話術。
「白き竜よ!? 何か、何かがおかしいですって!?」
「ええい今日はやけに聞き分けのない! 余が良いと言っている! もしや惚れた腫れたと言う話と思っているのか? そうではない、人で言う孫の成長を見ているような感覚であってだな……」




