四百六十生目 封印
リュウは片脚が単なる杖なため歩きづらそうにしてフレイ王女の前まで行く。
そこでリュウはフレイ王女の上から目を見た。
そして。
「はぁ……血は争えんな。あの日見た、オマエの親たちや祖母たちとどことなくに通う。その透き通るような空の青髮も、琥珀のような宝石に似た黄色の目も、そしてなにより、余に頼み入る眼差しの真剣さは、口よりもあまりに力強い。よかろう。神として、人の王たる者たちの願い、聞き届ける」
「ありがたき、幸せ」
リュウが……事実上折れた!
これはすごい。
フレイ王女が目線で合図を送る。
キサラギが目配りを受けリュウの元へと近づいた。
「まったく、何という役回りだ……」
「余は、貴様の事はよく知らん。余の場に無断で踏み入った者という認識しかないが、それ相応の報いとして、つなぎの王になってもらおうか。貴様はこれから、新たなる女王の傀儡よ」
リュウから神力が放たれていく。 みんなには見えていないが水流のようにリュウの前へ集まって行きそれが1つの形になる。
清からな水で産み出されたような手だ。
大きな手は人ひとり分掴むに事足りる。
その手はキサラギをつかもうとして。
……キサラギは不敵な笑みが浮かぶ。
「厶? なんだこの感覚……」
「なるほど、見えるぞ! これがオレに向けられる力!」
"神魔行進"。
それは繋がりのある相手に対し一時的に神使のような状態にすること。
このおかげで今この瞬間にキサラギは神の手を見ていた。
私とキサラギの繋がりは薄いから物理的につながらせてもらった。
キサラギは服の袖に私のとげなしイバラを隠し持っている。
物理的につながれば少なくともできる。
いまキサラギは神力をわずかながら扱える神の領域にいる。
手に対して干渉できるのだ。
あのとき……
『オレの力は、誰が誰に対してどのような視線を向けているのか読み取れる。熱意、冷酷、無関心、そして……殺意。言ってしまえばその場にいる人間関係を読み取れる。使う力を解析することも可能だ。そして……』
リュウの時を止めている間使える案の中で一番可能性を感じた方法。
それは……
「残念だな、これはカードゲームではないんだ!」
「ム!?」
手の指が4本キサラギを握ったことで順応したかのようにキサラギに消えていく。
リュウは顔をしかめ何度も力を使おうとして……
まるで動きがないことに気づいた。
「何をした! 余の力がコントロールできない!?」
「普通なら神の力をどうこうするなど出来ないから、油断したな。オレ自身は、向けられた力に対して権限を奪える。言い換えれば……封印だ。そして、オレはいま一時的に契約して、神の力を扱える!」
正直ちょっと伝えただけで一発ここまで扱えるようになるとは思っていなかったけれど。
攻撃を受けつつも死を避けて相手を封印する……
リュウが偶然にもやった戦法だった。
「無礼るな! そのような奇行ごときで余は止められん!」
「ちぃっ……! だいぶ重たい……!」
おそらく封印をこじあけようとしているのだろう。
リュウもキサラギも足をふんじばり頭に血管を浮かべるほどに力を込め合う。
「もう少し出力を上げて……!」
「ぐっ、蒼蜥蜴の使い、邪魔を、するな!」
「まずい、押し切られる……」
「良くやりました。わたくしはその人の意思を尊重しますよ」
「何ッ!? 錫蜥蜴!!」
出力が急に増す。
祖銀が神力を足したのだ。
あっというまにスキル構成は完成しリュウの周りに一瞬光の鎖が巻き付き消えスキルが一部封じられる。
これで……
「まだだ! っく、アイツの力を封じきれなかった!」
「返してもらった、権限を! 騙したな貴様ら! 余は心底怒り、心隠せぬ! フレイも、ラーガも貴様らも……!」
「もう……! 借りは返しましたから、私にはどうしようもありませんよ!」
フレイ王女が私の背後へと避難する。
それほどまでにリュウの威圧は凄まじかった。
振るう腕がないのに腕が単にあるよりも掴みかかられそうな威圧が場を包む。
「剥がすことや足すことは出来ないだろうが……おそらくまだ……!」
「そうだ、王家たち全員に権威を渡してやる。どうせこの力たちの多くはクソザコの神たちから奪ったもの。ヴァイの王族どもが、訓練もなしに権威を得たら、どうなるか見ものだなあ!」
「自暴自棄!?」
「全滅……いや、生き残ったひとりを操る気だ、オレたちじゃない、誰かを!」
「そこまでです、みっともない足掻きはよしなさい、ニセモノの竜よ」
全員がどうするか判断に困り硬直していた。
リュウはどんどんと周囲に多くの神力による手を作り出していてあれを王宮にいる人ら全員に投げたら……
大戦争が起こりかねない。
けれどそこで祖銀が前に出た。




