四百五十五生目 乱雑
リュウが謝られて怒ってはいるものの明らかに強硬姿勢を崩した。
まあ……それはともかくとして。
これはチャンスだ。
「今、色々とドラーグから聞かせてもらいました、能力で。キミのことや、この国のことも……殴ったのは申し訳ありません。また洪水でながされかねなかったので」
「そうだ貴様、蒼蜥蜴の所に所属する使いだな? あいつが使いを取るなど聞いたことはなかったが、その気配からは確かに蒼蜥蜴を感じる。あいつは非常識の塊だ。喪失した常識が鱗をまとって歩いている。地上にいてはならぬそういう存在の使者をやっているやつなど、非常識に非道、非常に腹ただしい。ただ、自分の行いが悪だと理解する程度の知能はあったようだな。世はそれが出来ぬ愚民ばかり、余は、自らの行いを恥じ、向き合おうとするものに一定の評価はすることにしている。確かに濁流を生もうとしたのは事実だが、そも、それで誰かを殺すつもりも、そのような事態になるよう調整するつもりもない。余が怒っているのは殴られたことそのものではない。あれは朱蜥蜴の赤熱に比べれば蝶の遊びじみたものだ。余が真に怒っているもの、それは余が愚策じみた暴力に頼った解決法をとったと思われたことだ。重ねた謝罪の言葉はもはやどうでもいい。本当に謝罪の意があるならば、この状況を説明せよ」
めっちゃくちゃ語るな……
ええとざっくり言うと。
とりあえずこの場の説明をしろと。
「ええ。実は――」
私たちは話せる範囲のここまで来たあらすじを話す。
つまりアール・グレイに呼ばれめちゃくちゃ揉め事が起こりつつも王都にきて不正を見つけ出そうとしたこと。
リュウに関してのこと。
王や政治の話も混ぜつつ……
何ならラーガやキサラギから驚き混じりの質問が多数飛んできて……
それらをほどほどに答えつつなんとか終える。
「――というわけです」
「なんというか……よくもまあ、色々とやっていたな貴様は……」
「まさか、ワタクシもこういう形になるとは……」
「フム……かなり突飛な状況になったのは理解した」
「キサラギさん、カード以外にも理解がめちゃくちゃ早いんですね。わたくし、まだよくわかってません」
「ハァ〜〜……嘘だろう……」
リュウは玉座で轟沈したようなため息を晒していた。
完全にドラーグの激運がうえだった。
単なる時間が稼げればいいだけのカードバトル時間だったわけだ。
もちろんふたりはそんなことしらなかったわけだが。
ちなみに本名がリュウなのも知れ渡った。
「ど、どどどどうしましょう、白き竜よ!」
「完全に事故だ……やはり私に始末をおまかせを! くっ、まだ外れないのか……」
「やめろ、気持ちはうれしいがそもそもオマエでは正面きって誰も倒せん。フカは不意打ち特化でそれも破られた以上、暴力など無意味だ」
「はっ」
暴れるフカをリュウがしずめてくれた。
というか本名わかっても白き竜と読んでいてすごい信仰心だ。
やはりここにいるというのが特別なのかな。
ちなみにアサイやフカだけではない。
別の部屋にまだ女性たちが待機しているようだ。
……つまりみんな【白き竜】にあてがわれたもので同時に信奉者なのか。
「リュウさん、僕たちは僕たちで譲れないものがあってここまで来ました。そのことを踏まえてお願いがあるんです」
「そのような――」
「お願いです、ソウルで通じ合った間ですから」
「――ことは……ウム……申すだけ申してみよ」
先程めちゃくちゃ盛り上がった仲だけあってドラーグが大きくなろうとも結局そこを切られると弱いのかな。
あと単純に下手に出られると行き場をなくす感じかな……?
同じ顔のない神でもスイセンとは大違いだなあ。
「まず、ワタクシたちとしてはそちらのことをもっと知りたいと考えています。一体貴方は、何者なんですか? 白き竜とか、神話とか、そういうのを除いて、あなたの目的は……」
「フム、言うに事欠いて目的とな。貴様らはこう、生きとし生けるものがおそらくとんでもなく高い志と共に崇高なる目的を掲げ多くのものを巻き込んで行くと思っているタイプか? 忘れるな、多くの者は生きるために生きていることを。それを踏まえて言おう。別に余はこの世を憂いたり自らの夢を叶えようとするものではない。ただ王に権威の力を与え、見返りに国に保護してもらい国を平定してもらう……良くも悪くもそれだけだ」
「だ、だったらこの国中にいる土地神たちに力を返してもらったら……」
「は?こいつらクソザコのあやつらに力を返せだと?断る」
「ひうっ」
ローズクオーツの提案を一蹴する。
というか今クソザコって言ったな……
割と怒った時の言葉選び乱雑だよね。




