四百五十三生目 終演
ドラーグはSPが4まで削られた。
あの様子では瀕死時に使えるカードなんてデッキに入っていないだろう。
まあさっき白き竜もレアと言っていたから間違いない。
『カウンターがキレイに決まった! ぎりぎりまで、最大の効果を発揮するタイミングを狙っていたんですね!』
「ま、まだまだ!」
「いや、これで終わりだ。クイーンの特殊効果! 最後の抵抗! 攻撃を食らったさい、生き残っている、いないにかかわらず、攻撃した相手に対し封印の効果! 封印された魔物はバトルや特殊能力を発揮できない!」
「そ、そんな!」
「さらに! 精霊の国フィールド効果で精霊王の特殊効果もクイーンが発動! 小さな毒針! これは、精霊王が攻撃され生き残ったさい、相手のプレイヤーにSPダメージを与える! それは、各プレイヤーのターン終了時、2SP!」
「えっ!? それじゃあ!」
「普段の戦いでは誤差よ。しかし……貴様のような熱きメイリストとの戦いならば、大差がつく。これが厄介なことは、解除方法が少ないこと。貴様のデッキでは、おそらく今はあるまい」
「うう……」
ドラーグの周囲にまるで毒みたいな緑の泡が受かりだす。
あれが半ターン毎に2SP削る……
確かに今までの戦いから考えると非常にちまちました削りだ。
だけれど……
『決着が、ついた』
『これは決まりましたね……! 凄まじい戦いでワタクシ、興奮してしまいました!』
「うう……これでターンエンドです」
朱竜カードには鎖みたいなのが巻き付いて封印されている。
ドラーグは毒のようなマークが浮かぶ。
もしドラーグがカードを引くターンが回ってくればまだ起死回生出来たかもしれない。
けれど……そのターンはない。
「余のターンだ。これで毒ダメージがSPに入り、貴様は2……ハァッ、本物の戦いとは、これほどまでに熱くなるものだとはな……ドロー。これで、余の山札には3枚、SPは1、どちらが勝ってもおかしくはなかった。違いがあるとすれば、勝負カンでしかない。あそこで朱竜への戦闘を止めていれば、余は負けていた。初心者ゆえ、そこまでテキストを読み込めてはいなかっただろうし、カードも読めなかっただろう」
負けるのはドラーグだがどちらかといえば全力を使い果たして疲労困憊に見えるのは白き竜。
まあずっと叫んでいたしね……
『ちょっと思っていたけれど、白き竜って語りが好きですよね』
『それは……本人には言わないであげてね』
「黒蜥蜴よ、貴様が憎き朱蜥蜴の子であることはかわらん。ただ……名を聞こう」
「え? ど、ドラーグです」
「そうか。ドラーグよ。オマエの脚は、熱き魂の戦いの証として、オマエとの美しきデクレア・ウォーの印として、貰い受けよう。ここで戦ったのは、黒蜥蜴ではなく、ドラーグ、オマエ自身の魂だ。脚は専用の保管をしておく。オマエには帰り専用の結界で記憶を錯乱せぬように、認定の施しをしておく」
『素直にドラーグのこと認めればいいのに……』
『今大事な話しなかった!?』
『……ハッ!? 帰り専用の結界!? それのせいでワタクシは、ここへ来た道筋が曖昧なことになっていたのか!』
今完全にアール・グレイさん意識が無に溶かされていたな……
不意打ち気味にだいじな話が来てびっくりしてしまう気持ちはよくわかる。
それになんでアール・グレイが奥までの道のりがはっきりしていなかったたがわかった。
『結界のことが分かったのなら、私が対処できると思います』
『ええ、ここの情報は絶対に持ち帰りたいですから』
『親父……』
ラーガ王子は再び王の方に目をやったらしい。
記憶の中にいる王は倒れ伏した姿からうめき起き出しているが……
前までの威厳はまったくない。
それが先程ラーガ王子に王が言っていた「親と呼ばれるなんて」と言うことにつながるのだろう。
王と呼ばれていたのはあの神力が見せた一種の幻なのだろう。
「余は何もしない。ターンエンド。これで……ドラーグは2SPダメージを負う。ジャッジメントブック!」
ドラーグのSP表示が0と書かれる。
すると空に大きく後攻勝利と表示され祝うかのような紙吹雪みたいな演出がはいる。
もちろん光だ。
そして……
ドラーグの右脚が不可思議な力で吹き飛んだ。
「ハァ……しばらく休みを得たいな……」
そこで記憶は終わる。
「「…………」」
場はさっきまでとうってかわって静寂に包まれた。
見せられたものがものだからね。
ドラーグだけはまっすぐ白き竜に向かって見定めている。
「まったく……とんだ挨拶もあったものだ」
白き竜やアサイそれにフカは今さっきそそくさと体制を整えて玉座に座り直しこちらへ向き合っている。
こう……あっけに取られていたところ申し訳ないけれど途中めちゃくちゃ頑張ってたのは見てるからね。




