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四百四十九生目 絵札

 正直私達は結果を知っている。

 次回ドラーグ負ける! だ。

 記憶なので起きた出来事は変えられない。


『なんでこのふたりはカードゲームに興じているのだ……?』


『正直、王に関することでもっと情報が欲しかったのだが……』


『まさか国の命運が手元遊戯で決まるとは……』


 アール組が不満を漏らす気持ちわかるけれど私もこうなるとは思わなかった。

 ただ記憶なので無情に再生されるのみ。

 ジャッジメントブックは白き竜の言葉どおり先行後攻をランダムで選ぶらしくクルクルとコインが回る(エフェクト)が起きた。


 やがてコインは止まりドラーグ側が先行だと示された。


「フム、運はいいらしいな」


「はい、よく言われます。ええと……」


「先行1ターン目は、攻撃と追加ドローが出来ない。それ以外は先程話した通りのルールだ。そして試合開始なのだから宣言する。デクレア・ウォーと」


「わ、わかりました」


「「デクレア・ウォー!」」


 自動的にそれぞれの山札からドラーグと白き竜に5枚ずつ配られた。

 これも本の効果か。

 宙に5枚浮いたカードをドラーグは見つめる。


 ドラーグ側からの視点なので白き竜の手はわからない。

 少なくとも悪くはないはずなんだけれど。


『記録、読み上げ開始。1ターン目先行ドラーグ』


『これは意外に良いのが揃ってるんじゃないでしょうか?』


『あれ? ふたりともカードわかるの?』


『少しはわかります!』


『データは既に落とし込み済み』


 ローズクオーツとノーツが詳しくなっている……

 良いけれど。

 対戦は進んでいく。


「このモンスターを出します!」


 ドラーグがカードを爪で選択するとカードが飛んで場の枠にはまる。

するとその上から(エフェクト)で出来た魔物の姿が描き出された。

 す……凄い技術だけど何!? この……何!?


「ほう、ホエハリか。マニアックな選択をしたな」


「そうなんですか?」


 場に出たのはホエハリ……私が産まれた時の種族。

 どう考えても趣味だ。

 低コスト魔物で場に出しやすい。


「もう1枚出せます」


「む、機械族?」


「さらに、特殊効果発動します。この魔物が場に出た時、追加で同じ魔物を出します」


「だろうな」


「この2体を融合させてトランスさせます。山札からトランスしたアイアンゴーレムを引き、シャッフルしま……あ、勝手にやってくれるんですね」


 ドラーグが宣言していくだけで場のカードは次々動いていく。

 ミスがないようにつくられているわけか……

 こう……そっちの魔術的なつくりのほうが気になるなあ!


「ここで、アイアンゴーレムに装備をさせます」


「チィッ、引いていたか」


『おおっと! 装備させたのは城壁の大盾! これは強いですよ!』


『攻撃能力を捨て、防御能力を上昇させ、全ての攻撃を装備魔物が受ける。さらに、アイアンゴーレムの特性が発動』


「これで、装備したときに効果が発動する能力で特殊召喚。消費コストをなしで、低コスト魔物1体を山札から指定して呼び出します。出すのはスライムです」


「スライム……? ということは、そのデッキは……フム、確かに扱いやすくはあるだろうが、どうなる……?」


『白き竜たちは何を言っているんだ?』


『先行ドラーグの選んだメイト(デッキ)は初心者用ベースパック、朱の衝撃と呼称されるセット。現在では、研究済みが多く、対処をされがち』


『いや、そういうことでは……いい、勝手にやっててくれ』


 ラーガ王子は今見えないけれど多分頭にシワを寄せまくり頭を抱えているだろう。

 気持ちはわかる。

 場に粘液状の物質に取って付けたような顔が現れた魔物が出る。


「スライムの特殊効果で、スライムを自壊させることで手札を1枚引きコスト1か2の魔物を2体、コストなしで手札から呼び出します」


 場のスライムの絵が粉砕されカードは別の場所に送られる。

 あそこはスタンエリアだったかな。

 さらに場に2体の弱めな魔物が呼び出される。

 合計4体になった。


「最後に残ったカード1枚を、待機エリアにセットします。これでターンを終えます」


『おおー、キレイに回しきりましたね! 遊びのカードがない、美しい回しです』


『次ターンの難易度がやや上昇。APをほぼ消費したのも吉か凶か』


 召喚コストに使うAPは毎ターン増えるけどある程度貯蓄して一気に強いのを呼び出す手もある。

 もちろん次に自分のターンが回ってくるまで耐えなくてはならないが。


「初心者のわりに、なかなか勘所をわかっているな! 褒めて使わそう、だが、次に自分のターンが回ってくると思うな! まずはドローだ!」


 山札から6枚目のカードが白き竜の手元に来る。

 こちらからは見えないがそのカードを見た途端白き竜は笑顔を見せる。

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