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四百四十五生目 洛墜

 白き竜の姿も記憶の中だと普通に『完璧』に見える。

 おそらくこれはドラーグの記憶だから。

 さっきドラーグに効き目が薄いとか言っていたしニンゲンの魂を持つものにだけやたら反応していた。


 ニンゲン特化の認識攻撃かな。

 白き竜が構えて魔法を発動するような姿勢。

 それと共にこの世界にある端らしき場所から突如なにかが出てきた。

 あれは……


「うおっ!?」


『な!?』


『王様だ……』


 あの王様が引っ張り出されてきた。

 そう。あの王様。

 どこかのしおしおおじいさんではなく全てを見下すような存在感のある王。


 しかし。

 その王は立ち上がろうとしてそのまますぐ跪いた。

 白き竜に向かって。


「白き竜よ!! この国を真に憂い立つ神よ!」


「ええっ!? お、王様……!?」


「ちょうどよく外に来ていたのでな。呼び寄せた。王よ、コイツは賊だ」


「はっ、はっ!?」


 王がドラーグの方を慌てて見る。

 信じられないものを見るかのようだ。

 あの威厳しかなかった王はどこへ。


「余は少し忙しい。余の力に関して少し解説してやれ」


「ハッ! それと、私がここに来た理由なのですが……」


「その話含めて後でする。今はまずこちらの賊に教えてやれ。余の力で、この国がどうなったのか」


「ハッ!」


『王が……白き竜に顎で使われている?』


『なんなんだこの悪夢のような記憶は』


 ラーガ王子からしたらまさしく悪夢だろう。

 王家のトップがわけのわからない相手に媚びへつらっているのだから。

 王はドラーグの方に向き直りすくっと身体を起こす。


 うんまあ……賊相手だしね。


「貴様が何者か、どうやって入ったか興味はない。儂は儂の仕事をするまで。黒き蜥蜴よ」


「あ、は、はい」


「言葉は通じるようだな。では、聞かせてやろう。彼の御方こそ、儂に力を授けてくださった……いや、歴代王全てに授けてくださったのだ」


「力……さっきの言うところの、権威ですか」


「左様。別に人同士のくだらん認証や冠の話ではない。国中に散らばる神々への畏怖、信仰。そういった直接的な力を白き竜が集めて束ね、儂ら王に授けてくださる。そのおかげで、国は栄え儂らは懐が肥える」


「あっ! それってこの国中の神々の力を奪っているんじゃあ!」


「人聞きの悪いことを。無能や地位の低いものどもから徴収し利用しつくすのは君臨者の役割よ」


 王は一切悪びれる様子などがない。

 これは私でも気分が悪くなってくるな……

 彼らを知っているからなおさら。


「そんな……」


「それに……この国は、200年弱程前まで、たくさんの国に分かれていたのは知っているか?」


「少し、聞きました」


「そのころはまだ、白き竜はこの国に降臨されておられなかった。世は混乱し、常に隣国同士は戦争か裏切りの脅威にさらされていた。白き竜は相応しき依代がなければ、現世にとどまることがない。たまたま、この地に相応しき依代がいて、降臨し、魂と肉体が合わさって神の精神が覚醒し、当時の王と契約を交わしたという……」


 それは歴史の闇。

 人の世にはけして出ない人が支配される話。


「……えっ!? ニンゲンなんですか!?」


「身体はな。ただ余は身体と共になったときに、同一の存在となっている。どこまでが神で、どこまでが人かなど意味はなく、揃った今、白き竜として現世にあるというだけだ」


「なるほど……」


「白き竜のお方は凄まじい力を授けた。それは相手の暴力的な力を高めるものではない。相手を導き、支配し、信仰し、崇めさせる力。ソレまでは争い滅亡と統合そして離反を繰り返していたこの大地を、1つの国としてまでまとめ上げた。その初代王こそ、儂の祖先であり、白き竜と初めて会い、聖なる言葉と力を授かった者だ」


『まさか……王は、この国は、あの白き竜というものから力を借りた、まがい物……!? 俺は、王家は……王は!』


 ラーガ王子から苦悶の声が聴こえてくる。

 それはそうか……自分が信じているものが歪んでいくカタチになるものね。


「この地位は、国は誰にも渡すわけにはいかんのよ。愚かな民たちは資材とした人間たちを全てのはけ口にしている。この国は、儂ら王家が全て得る! 子などより効率よく儂らが力を集めるための踏み台、効率よく殺し、力を奪う。さっきは危なかったが、どうにか押し倒せた……! 絶対に、絶対に誰にも揺るがせはしない!」


「ひえっ」

『うわぁ』

『お、王……!?』

『チッ、ここまで王が堕ちていたか』


 特殊な状況と特殊な事柄起こった後。

 さらに本来なら漏れるはずのない場所ということが王のリミッターを外したらしい。

 その目は血走って歪み口は牙をむき出しにしてつばをとばしていた。

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