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四百四十三生目 終了

 白き竜に向かう前にとりあえずフカの動きは封じさせてもらった。

 さっきまでドラーグたちを封じていた本物だ。

 暗殺が出来るとはいえ能力が封じられれば出来ることが狭まるしなにより。


「では……こちらへどうぞ。白き竜の面会には必ず立ち会ってもらいます」


「アサイ……」


 フカの拘束にアサイが同意して逆に見張りつつ歩き出したという点だ。

 "観察"したところアサイは明らかに非戦闘向き。

 かといって困惑の術に優れているわけではない。


 あの時ひいていたハープの音色は見事だった。

 多分彼女の本質は側仕え兼音楽家だ。

 もちろんもしもの時は全員動けるようにはしているものの……


 逆にこっちが圧倒的に戦闘集団すぎてアサイが震えているのもわかってしまった。

 死も生も簡単にできるフカすら何もできなかった相手たちという印象が多分アサイの中に根付いたんだろう。


 まあそもそも真後ろにガチャガチャ言っているでっかいゴーレムことノーツがいるし……


「女、急ぎだ」


「は、はい!」


 全員でドラーグを通して見た長いながい上がり坂を登っていく。

 横を流れ落ちる水流たちはいまだ濁ってはいるものの1番大変だった時期は脱したらしい。

 ……それにしてもここから外への連絡手段が封じられているようだ。


 私はドラーグに対して念話をかけていた。

 それはドラーグ全体のことで……

 ドラーグ1%の姿がこの中に入ろうとドラーグ同士魂が同一なため問題なく交信できていたわけか。


 ただそれすらも塞ぐ術なら心当たりがある。

 神力を使い自身の神域に引きずり込み世界から隔離してしまうこと。

 これならいくら魂同士が同一でつながりあっていてもそもそも世界が違うので交信ができないだろう。


 だからこそ急がないと。

 どんな不利なことを持ちかけられているかがわからない。

 





 階段は例外なく長いが私だけ先に行くのも危険が伴うし全員で駆け抜ける。

 身体的なレベルが低いであろうアサイが1番つらそうだがもう少しのはず。


「そ、そろそろ……お見えになるはず……あら?」


「な、なんだあれは?」


 1番上までたどり着きあるはずの玉座。

 しかしそこは……空間がねじまがったかのように見える何かがあった。

 結界に覆われて中の様子が一切わからない。

 光が湾曲してこうみえるのだろう。


「白き竜!」


「なんだ? 竜だなんだと話が出たと思ったら、わけのわからん結界と来たか」


「うっ!?」


 アサイが触ると弾かれる。

 痛みはないようだが中には入れなさそうだ。


「多分……もうじき結界がとかれます。その時いつでも対峙できるようにしていてください。直接戦闘になるか、対話になるかはその時その時です」


「そもそも、白き竜とやらはなんなのだ? 1位のラーガ王子も知りはしないのだろう?」


「白き竜……いや、思い出した。アレは単なる御伽話だと思っていたが……まさか?」


「何か心当たりがあるのか?」


「みんな! 結界が解ける!」


 私の声に全員が身構える。

 結界が徐々にほぐれてゆき……

 一気に砕け散った。


 正確にはこの部分だけ異世界になり隔絶されていた結果世界の境目がうまれていたのだがさすがに説明しにくいからね。

 今彼らはこの世界に戻ってきたのだが……

 全員がまさしく静止した。


 まずドラーグ1%の姿はなぜか地面に転がっている……

 いや右脚が太ももから切断されている!

 あれは痛むから倒れていてもおかしくない。


 そして白き竜はマントをはだけさせ荒い息を剥ぎながら地面に右膝をついている『完璧な』姿だ。

 ……!? こちらは左足だけじゃなくて両腕がない!?

 『完璧』……欠損……ううっ。

 なんなんだ、見てはいけない気がする!


 次に視界を移す。

 そうもうひとりいたのだ。

 それは……え。


 誰?

 ニンゲンが両手を地面につけて絶望に打ちひしがれたような顔をしているしにおいもすごいしわがれた木片みたいだ。

 まるですぐにでも死んでしまいそうだ。


「親父!」


「……お前が……わしのことを……親と呼ぶということは……やはり……」


「……えっ!? 王!?」


「うっ!? リンクが再接続されて情報が流れ込んできたけど、これって……」


 ラーガ王子が駆け寄りアール・グレイが叫んだことであれは王様に確定した……けれど。

 嘘でしょ。

 さっきまであの見下していた圧倒的なパワー感覚を誇っていた王様!?

 まるで威圧感がなくなって骨と皮のおじいちゃんなのに!?


 そしてドラーグはこっちの1%ドラーグと再接続されてどうやら何があったかわかるようになったらしい。

 ただ……何より。

 白き竜の顔だ。


 目がこちら全員を見て顔を青ざめている。『完璧』に。

 ぎょっとして尾が落ち着きなく彷徨うように動き回っている。

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