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四百四十二生目 暗殺

「どうしてこうなったんだろ……」


 私達はひたすら王宮の隠された道を駆ける。

 ……7名で。


「そりゃあ、あれだけ『自分たちは原因を探りに行こう!』みたいな目をすればわかりますよ」


「フハッハ、100の確率でロクでもないものにぶち当たるんだろう? 王族の行方も気になる、10番のグレイも行く、ならばオレが行くほかあるまい」


「どのような経緯、どのような発生とはいえ、明らかに人工的な作為を感じた。王族が不利になってからああなるのは、いかにも準備が良すぎる。オレが未来の王になる不安分子は全て摘まねばなるまい。それが、たとえ現王が関わろうとも」


 王位継承持ち(アール)の3人だ。

 10位グレイに13位キサラギそれと1位ラーガ王子も。


 やっぱり王子は根の性質があまりにも政治に向いていないと思うんだよね……

 絶対どさくさに紛れて個人でこんなところに飛び出すタイプが王はやらないでしょ。

 騎士たち全員置いてきてこんなに爽やかな顔して槍担いでいる王はもう現場派すぎるよ。


 キサラギはひとりで来たもののどうやらひとりで来たのはわざとらしい。

 側近たちはわざと背後に残し退路ルートの確保だけはしたのだとか。

 そして大事なのはアール・グレイといることだそうだけれど……


 キサラギも何かまだ隠していることが多そうだ。


「それにしても、王宮にこんな奥深く場所があるだなんて聞いたことが無いのだが?」


「オレもしらんキサラギ。ここは自然にあると思わねばないと思わされる仕組みが組み込まれていた。おそらく、王族でもごく一部しか知らない。先程の騒動で少々術式が緩んでいて助かったな」


「あの扉、いかにもな感じがしますね……強烈な水圧で破壊された跡があります」


 実際のところは迷いなく白き竜のところに直進しているためあの壊れた扉で間違いない。

 アール・グレイの言葉に同意しつつ飛び込む。

 ……扉を通り過ぎた後ろで破砕音が響く。


「廊下が広く通行が可能。破壊せず移動中」


「もうつっこまんぞ……王宮が……」


「いいぞ、派手にやるならどんどん派手にやれ!」


「お前はどちらの味方だ!」


 ラーガ王子とキサラギのコントの元はたった今扉の上部をぶち抜いたノーツのこと。

 普段とは違い常識も倫理も無視しているためやりたい放題に見える。

 まあどうせ全面改築がいるからこの部分……


 足元は浸かるほどにビチャビチャでヒール靴に入り込んで不快。

 もう脱いで良いかなこれ……


 ……!?

 この先……ドラーグがたどり着いた滝の部屋前に何かいる!


「止まって!」


 全員私の号令に合わせて停止し身構える。

 すると……

 壊れた扉の向こうからひとりが手を上げて来た。


「う……嘘……なんでこんなに人が……王子も……」


 おそらくこの場を直しに来ていたのだろう。

 彼女の手元には水をはけさせるための術式が見える箒があって下に落とした。

 水が箒から反発するように離れていく。


「女、王宮では見ない顔だな? 何をしている」


「多分、ここの掃除だとは思うけれど……」


 私は不意に上へ視界を移す。

 ――暗殺者の能力でひそむもうひとり。

 殺意すらも限界まで潜めた大きく見開いた瞳とあった。

 天井にスキルで貼り付いていたのだ。


「スッ!」「フッ」


 目にも止まらぬ早さの暗器投げ。

 針のようなものだろう。

 私は気にせず跳ぶ。


 針が私に当たって。

 私の周囲がいきなり砕け散った。


「っ!?」


 相手は息を呑む時間しか無かった。

 "クラッシュガード"による1撃の無効化。

 まだ残っていた。


 もっとも素早いつかみを選択。

 胸ぐらを持って……

 重力に任せつつ回る。


 つまり下へぶん投げた。


「キャッ!?」


「ハッ!?」

「敵!?」

「ええっ!?」


「よいしょっと」


 確かフカだ。

 彼女は明らかに暗殺の手慣れだったし気配は複数あるのにフカだけいないのはおかしいと思った。

 "鷹目"で常時広い範囲見張っていたおかげで気づけた。


 私の額目はだいたい"鷹目"や"千里眼"それに"見透す眼"でみることに集中させている。

 別に目を割り当てなくても使えるが目という器官を使って見るという感覚こそがもっとも負荷なく自然に扱える。

 今もこうして自然に見つけその後に首を向けて全員の注意を集めれた。


「殺すっ! どけっ! この場を踏み荒らすやつは全員私が!」


「落ち着いてフカ! あの方の側仕えはだいたい戦闘向きじゃない! 全員でかかっても王子ひとり倒せっこない! 白き竜のお方が決めることよ!」


 白き竜……完璧なる存在か。

 落ちついてきたことで少し気になることができてきた。

 それもこれも進んでからだ。

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