四百三十六生目 王家
「派閥争いの図式で考え直してみたら、フレイの一派が最も警戒する相手は……このオレ。そしてオレが警戒するのも、フレイだ。真実などどうでもよく、この2大派閥の大揉めとすればかなりうまい味を得るやつが、黒幕だ」
ラーガ王子は確定したと言わんばかりにつよく打ち出す。
キサラギも何か察してはいるらしいがラーガ王子からしたら自身が出した飛空艇攻撃すらも悪用され尽くした行動に怒っているのだろう。
逆に言えばそこらへんも知っている相手が犯人……
ん?
あれ……飛空艇の持ち主知ってわかっているのってほんの極一部。
こちらを除いたらいるのは王都の者のトップクラスだけじゃあ。
「だが、そこに何か繋がる推理はあるのか?」
「言わなかったがな、暗殺者には心当たりがある。というより、通常言うことは出来ぬ。ここまでたどり着いた故に褒美として話そう……王家には、確かに暗部組織があると」
「……なるほど、王家の飼う暗殺者か。ホームで彼らが使われたとしたら、あまりにも楽だろうな」
ちょっと今ドラーグのほうが気になることになっているけれどこっちもかなり気になる部分に入っている。
うーん……これもしかしたら困ったことになったかもしれない。
「毒ももしかして?」
「一応、王家もしっかりと研究機関がある。オレのところでも毒を含む広い研究をしているが……呪毒は知らんな」
「比較的どうとでも刺せるようになりますね、派閥を。そしてそんな事ができるのは……王家ですか」
ざっくり色々考えてみたけれどやっぱり今回の犯行は王都というかもっと踏み込んで王家で良い気がする。
カルトスと組んで外でアール・グレイ迫害をしているけれどそれは私達が王家を害する可能性が高いから。
そして2大派閥を攻め立てて王を継がせる気がないのも王家だとしたら……
その他細かい点も含めてやっぱりあの王様怖い気がするんだよなあ。
私達を殺そうとする動きとは完全に別で動かせてかつとりあえず私達に罪をなすりつけられる。
そのあと間違った処罰に関してラーガ王子を処罰すれば良い。
そのような権利の振る舞い方が出来るのは王家しかない。
さっきドラーグたちを捕らえるように指示したのも王家らしいからね。
「ほう、大きく出たな。王族批判とはな」
「だが、あの王に突きつける程度の話はあるのだろう?」
「さっき、フレイ王女を弑することで私の連れやアール・グレイさんたちを排除する計画が遠回しすぎてありえないという話が出ましたけれど、むしろ散々襲撃が失敗した後でホームグラウンド内で確実に処理するには、これ以上ないくらいストレートなやり方なんですよ」
「……なるほど、運任せではなく、全て自身の手の内で行えるならば別、か」
「……! 待て、王宮の暗殺者を使ったからと言って、別に王家とは限るまい。ここに繋がりを持つものは多い上暗部への依頼もそれとなく外部からもできるはず。それに今の言い回しではまるで、これまでグレイたちやファーエン辺境伯を襲っていた犯人が王家だと言っているようなものではないか」
「それに関しては私からは何とも。証人は、すぐそこにいますからね」
もうここまで来たら出せる札出すしかない。
ドラーグの方もちょっと大変な事になりそうだし。
アール・グレイが連れてこられる間に話がもう少し進む。
「元々、暗殺の動きがあるのはこちらで把握していた。今回のパーティーに顔を出した最大の理由は暗殺警戒で、オレやオレの側近たちが見張っていた。オレは詳しくは言えないが、能力として誰かが誰かを殺そうとする動きに聡くてなってな。オレの範囲内で動きを見せれば速攻で止められたのだが……」
「……なるほど、だから嫌がったのか審判をやるのを」
「今は嘘のように霧散しているが、あの時はプンプン漂っていたからな、死のかおりが……」
「連れてきました!」
キサラギの思わせぶりな部分だった話はよくわかった。
そもそも独自で情報を掴んで警戒していたのか。
ちなみに死のにおいどうこうは私にはわからない。
連れてこられたアール・グレイは貴族に有るまじき後手縛りをされている。
早くみんなを解放してあげたいが……
状況もあまり良くわかっていなさそうでつらい。
「お前が連れてこられた理由は1つ。お前らファーエン家をくりかえし襲撃した犯人に心当たりがあると?」
『これって一体?』
アール・グレイから念話が飛んできた。
念話を返す。
『今、王家を追求できそうな流れになっています』
『……! わかりました』
「……御無礼を承知で発言の許可をいただきたい」
「許可する」
「感謝します。確固たる物証があるわけでは、ありません。しかし、多角的な視点で解析した結果、王都に連なるもの、またその雇った武力への依頼で行われていると判断しています」
辺りの空気が一気に冷え込んでいくのを肌で感じた。