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四百三十五生目 証明

 私からしたら3体と私は無実と言い切れる。

 ただラーガ王子が指摘したように第三者からみたら怪しすぎる一行だ!

 ……まてよ。


 そうだ。

 フレイ王女が死ぬことで大きく変わったことって……


「あとは、このくだらん騒ぎのせいで試合が流れたのが1番大きい。オレたちの戦いを暗殺のミスディレクションに利用するとは、腹が立つ」


「……そういえば、あの3人の確保こそ、フレイ王女の死で大きく変わったことではないですか?」


「なるほど? 国賓とトラッシュノヴァを捕えて得られる利益か……オレにはさっぱりわからんな」


 わずかにラーガ王子の顔の彫りが深くなるがシラを切り通す。

 こちらも証拠も何もないからなあ……

 抹殺はしようとしたの王子ではあるんだけれど。


「誰が指示をしたのかという記録はありますか?」


「ああ、確か王の側近たちだ。王の名において、捕らえることを命じたらしい」


「……」


 ラーガ王子は目を閉じ思案顔に入る。

 うーん……まあそれを命じる気持ちはわからなくもないけれど。


「わかりました」


「1つ、ここでローズオーラが蘇生をしなかった、できなかった場合の想定を考えよう。あの、体内から毒物を吐き出させるのは、王宮の聖職者たちも出来るのか?」


「いや、聞いたことがないな」


「アレは私のアレンジですね。元々、死因を追い出してその隙間に魂を誘導するという思想の元、工夫しました」


 生き返った後生命力の回復具合や衰弱度合いが段違いに違う……という机上では成立した論理に置いて組み込んだ。

結果がわかるのはこの後だろう。


「つまり、死因が呪毒だとは判明しない可能性が高かったのか」


「さすがに本物の検査班は暗器により注入された毒というところまではたどり着けるだろう。毒の種類を調べるには死体解剖が必要で、蘇生させるのに死体解剖を許すはずもないが……」


 ラーガ王子は仮想敵だが変なところで嘘をつくタイプじゃない。

 つまり本来想定されたルートは毒死ということだけわかるということ。


「……もしかして、私の白証明がかなり不可能になる?」


「というより、さっさと断罪されてもおかしくない。状況証拠が揃いすぎているからな。王族としては、外国人やトラッシュノヴァを処刑するのに、あっている、合っていないのはこだわらず躊躇いなどはしない。海外から何か言われるだろうが、反論と反撃の準備はいつでも出来ている」


 妙な説得力がこわい……!

 そうなったら私暴れるからな!

 国際的に訴えるからな!


「とすると、10番のアール・グレイや辺境伯、国賓を処刑にしたい? メリットやデメリット以前に、ここでやる意味がわからない。しかもフレイ王女を殺すことで。遠回り、曖昧、計画が運だらけ。殺すならもっと場所がある、だよなあ1番のラーガ王子」


「なぜオレに話を振る……」


「フフッ、まあいい。つまるところ、もっと物事は単純に考えた方が良さそうだ、ということだ」


 殺すタイミング……

 だったらそろそろあの話を切るべきか。


「実は……辺境伯やアール・グレイさんたちは何度も襲撃にあっています」


「へぇ」


「ほぅ、そうなってくると少し話が変わるな」


 どちらも驚きのにおいがした?

 本心を隠したからではなく隠した上で隠しきれなかったのがラーガ王子のようだ。

 つまり今の情報は彼にとってもかなりの衝撃的発言。


 さっきの「襲撃」そのものはラーガ王子も周知の事実。

 だとすれば「何度も」のほうか。

 つまりラーガ王子が指示したのは飛空艇の時のみ……か。


「なるほど、何度も殺害を試みて失敗しているようなやつらが、今更フレイ王女を殺す理由も間接的にグレイたちを殺そうとするのも全く一致していないな……つまり、グレイたちを殺そうとする意図はあまり強くは見えないな」


「だとしたら……そうか、そうか……! オレをハメるために……! なるほど……フハハハ……」


「……なんだ?」


 突如ラーガ王子が抑えるように笑い出す。

 正直めちゃくちゃ怖い。

 ラーガ王子からは笑いの声と共に怒りのにおいが立ち込める……


「何、どうやらもっと単純に考えれば良いと言うのは本当だったらしいというだけだ。今回の指示者は、オレとフレイ王女の派閥を狙っている、ということに気づいたのだ」


「ラーガ王子とフレイ王女の……派閥? 個人ではなくて?」


「こういう場で起こったのだ。そもそも派閥攻撃と見たほうが自然なのだ」


 ちょっとそういうのには疎いからなあ……

 派閥抗争と見た場合フレイ王女はわかるけれどラーガ王子まで含まれるのはなぜだろうか。


「ふむ? ということは、まずフレイ王女は、やはり殺害される程度に基盤が弱いと見せるのが目的で、ラーガ王子の派閥は間違った犯人の断罪による罪を問われると言ったところか?」


「そしておそらくは、オレに擦り付けるつもりだ。犯人役をな」


 ラーガ王子の顔はフラットながら目の奥に強い殺意があった。

 この犯人への……殺意だ。

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