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百四十八生目 燃戦

 舞台は揃った。

 私は空間にあいた穴から威風堂々と言った感じで出て来る。

 緊張はしているが珍しく頭の中はスッキリとしている。


 やるべきことが決まりそのお膳立てに乗るだけだと考えれば少しは冷静になれた。

 私が1歩踏むごとに周囲にいる私の群れやスケルトンたちがサッと引いていく。

 それを繰り返してついに騒動の中央にたどり着けば左右には魔物たちが場を開き私を挟んで赤蛇と黒蜘蛛が対峙する形でいた。


 大量のスケルトンたちをどうしているかというと……

 実は6体ほどしか動かす指示を出していない。

 6体のスケルトンに特別な魔法技術文字を刻んでリーダー格にして、周囲99体を同じ動きにさせるようにした。


 処理軽減だ! 舞台演出の1つだからこれでいいの!

 じゃないと1歩ずつ合わせて引くというもはや過剰な程の演出は出来ないの!

 とまあ種が分かればつまらない話なのだが。


 ちゃんと効果があったようで演じているみんなの他に蛇や蜘蛛の魔物たちも後退している。

 やはり何度見ても山ほどいるからそれがサァッと引く光景はなかなか見もの。

 さて最近は当然のようにやっている光神術"サウンドウェーブ"を2方向に向けて声として発する。


「私が今日呼び出した者だ! 要件は伝えてある通り『この一帯の支配者を決めるための対決』だ!

 私は順にトップの2頭と対決しても勝てると自負している! だから勝負を申し込んだ!」


 ウソである。

 ジャグナーたちと考えたセリフを、つらつら話しているだけだ。

 勝てる保証はないが負けないように最善は尽くす。


「さあ」

「先に挑む勇士はどちらか!」「機を見極め待ち構える賢者はどちらか!」


 同時に別の言葉を言い放った。

 術であり声帯使っているわけではないから出来る芸当だ。

 とは言っても蛇には前者で蜘蛛には後者を言った。

 彼らは互いには言葉がわかっていないからこういう手には引っかかりやすいはず。


 一応保険で妖精たちのメッセージにも先攻後攻を考えさせる言葉を含ませていた。

 ニンゲン相手なら多分引っ掛けるのは難しいが……


「ああ、俺が先だ!」

「分かった」


 赤蛇が周りの蛇たちに指示を出して下がらせ赤蛇は前へ出てきた。

 蜘蛛側は私が黒蜘蛛言葉を喋ること含め警戒心まるだしのまま静観。

 いい感じだ。


 私の正面までに来るとその巨体でとぐろを巻いて見下ろしてくる。

 龍かなにかかなってほどに大きいんだもの。

 私はごく小さな魔物だと実感出来た。


「あのメッセージの話は本当何だろうな!」

「うん、確かに私が勝った場合もそちらの配下が暴れない限り手を出さないし蜘蛛にも出させない。余計な被害を出さないための1対1の勝負だ」

「そして俺が勝てば俺が言う事を1つ聞くと。お前程度が俺に勝てるわけがないが……確かに配下の血を流させない戦いは賛成だ。何でお前が俺らの言葉を話せるか知らないが……」


 補助魔法は既にかけてあるのにそれでも感じるレベルの差に体格差。

 だがこちらはいくつかアドバンテージがあるから大丈夫……なはずだ!


「一瞬で決めて蜘蛛野郎も直接落とす!」


 赤蛇が動き出すのを試合開始の合図にする。

 素直に頭上からの直線的な噛みつき!

 身体をバネのようにした一撃は確かに早かった。


 しかし丸呑みしようだなんて動きは予想済み。

 私は"空蝉の術"で避ける。

 背後でめくられた地面が赤蛇の突進で破壊される音が聞こえた。


 今私の中には4種類の魔力を予め混ぜておいたものがある。

 さあ始めようか。

 この魔力を体中隅々までに行き渡らせて……


 "進化"。


 膨大な4種混合魔力が細胞の1つ1つ、更には遺伝子にすら変化と活性を促す。

 血が煮えるように熱く心臓が跳ね上がる。


「はああぁッ!!」


 急激に高まる気配に目の前の赤蛇すらも思わず怯んだ。


 私の身体はまず一回り大きくなった。

 さらには体中の毛皮が変化していく。


 それはまるで鋼のように。

 大地を纏う鎧のように。

 トゲや毛が硬質化し身を包む。


 進化が終わり大地に降り立つと共に響く重低音。

 金属が触れ合うような頑強な音と共に私は身体を動かす。

 これが私の新しい進化だ。


[グラハリー 全身甲冑は用途に合わせ出したり引っ込められる。にぶい金の鎧はあらゆる衝撃から中身を守る]


 変化してピンと立った耳にすら沿うように生えるにぶい金色の鎧。

 これは針が大きく変化したものだ。

 私の全身はこの『変化したトゲ』に覆われている。


「それが本当の力……!?」

「試してみる?」


 さあ、ここからはドライの出番だ。

 交代!


(交代!)


 さあここからは"私"のショータイムだ!

 新しい姿のお披露目と共に感じるのはやはり全身を完全に覆うと重いって事だ。

 引っ込めれば軽くなる。

 理屈は知らない。


 尾の先までキレイにコーティングされているが全力でちゃんと動ける状態を考えれば立っている時に腹側はいらない。

 4足だから胸はともかく腹から下はそこまで必要ではないな。

 頭は三つ目を埋めるかのようにきっちり覆っておき覗き穴は作る。


 フルパワーで動けて重さを感じず疲れない割合……およそ7割を甲冑で覆った。

 フルフェイスヘルメットにしたりするのはあとだ。

 地を蹴って軽く走り調子を確かめる。


 ……うん、いい感じだ。

 とりあえずこの赤蛇とは短期決戦しよう。

 次があるからね。


 "音波術(サウンドウェーブ)"を使ってニンゲンなら気を失うほどの爆音を集中させ頭あたりに浴びせる!

 しかし何かを察したかのようにくねくねと避けられてしまった。

 やはり強者はなかなか直感が鋭い。


 赤蛇は警戒はしたが大差はないと踏んで再び噛み付きを仕掛ける。

 ……硬化8割。

 その牙が"私"を捉えた。


 ガギィン!!

 まるで金属のように硬いものに衝突した音。

 それと同時に宙に舞うのは赤蛇の牙。


 悲鳴を上げながら赤蛇が大きく仰け反れば口内は刺し傷だらけ。

 もちろんやったのは"私"だ。

 "空蝉の術"のカウンター能力を活かして火力を上げ、さらに甲冑を複雑なギザギザなトゲだらけにした。


 ギザギザになっている甲冑をうまく当ててやれば相手の牙がはまる。

 そこを捻ってやれば折れる寸法だ。

 もちろんこの身体だからそこできる小手技だろうけれどね。


「さあ、本気を出せ!」

「くっそおおぉっ!!」


 赤蛇の二つ名の由来技を引き出させる。

 それが"私"の狙いだ。

 赤蛇は全身を震わせると鱗が一部逆立ち粉のようなものが噴出される。


 これが可燃性粉塵か。

 爆発したさいの炎は防げても衝撃は中まで届くだろう。

 つまりこれを使うこと自体は有効な選択肢だ。


 だけどそれを知っているからこそやらせない。

 煙るほどの粉塵が辺りを覆う。

 赤蛇が尾を持ち上げ2つに割れた先をこすり合わせようとする。


 やはりあれが火打ち石!

 十分粉がたまったらしい今が狙い目!

 "率いる者"!


 借りる相手はハック。

 風魔法"ホローウィンド"!

 小さい竜巻が発生して粉を巻き上げていく。


 魔法を連続で唱えまくり複数の小型竜巻が粉を巻き込んでいく。

 赤蛇が対応に一瞬悩んで尾先の火打ち石を鳴らした。


 カンカンッ!

 しかし火花だけで爆発は起こらない。

 それも当然だ、この一瞬で濃度が変わってしまったからだ。


 "私"は風の軌道をある程度操り竜巻たちをとぐろを巻いている蛇の近くへと押しやった。

 噴出した粉はこちら側に来るようにしていたし尾先だけは火の発生源として爆発に耐えるのだろう。

 赤蛇の外側もたぶんそうだ。


 だがとぐろの内側は?

 特に前の傷が治っていない場所は?


「しまっ……」


 気づいた時には遅い。

 "火球魔法(フレイムボール)"!

 竜巻が消えると一気に周囲に粉が散った。


 フレイムボールにより着火。

 赤蛇のとぐろを巻いた中や周囲で大爆発が起きた!

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