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四百二十八生目 炎鳥

 次の相手が最後……らしい。

 実は小一時間くらい待たされた。

 本来は次は王都2位が相手……だったのだけれど。


「残念ながら、2位の方は棄権なさいました。かなり説得はされたようなのですが……」


「そうなんですか」


 騎士さんのひとりに報告を受ける。

 なんでも2位さんはあのアール・キサラギの騎士らしいのだが……

 直前の戦闘2つをみて首を横に振ったらしい。


 さらにダメ押しでキサラギも騎士の肩を持ち破談。

 次の用意もかかるので結果的にこの時間になったと。

 こちらとしては願ったり叶ったり。


 危険な橋を渡らずに時間が稼げる。

 これのおかげでドラーグの調査はだいぶ進んだ。

 まず言えるのは大河王国が国際的な基準に照らし合わせれば真っ黒だということ。


 最悪な環境だしなんでこれで大暴動とクーデターと一揆とテロが起きていないかが不思議。

 思ったよりも強権を発動した形跡がない。

 普通こういう国はトップがこれでもかと権利で下々全てを押さえつける感じなのだが……


 そして肝心なことは。


『ついに、ついに来ましたよ! 見張りすらいないエリアです!』


『やった! 多分そろそろだね』


 ドラーグがやっとこさ奥地への道を見つけたらしい。

 まだ見つけたばかりでここからだが……

 思ったよりも順調だ。


 私は私のやることのために最後の試合へ挑む……








「ここまで少しは楽しめたか?」


 ……ラーガ王子が試合場である下に降りている。

 不穏なものを感じつつ私はラーガ王子に向かい合う。


「ええ、まあ、大変でした分、考えることは多かったので」


「フハッ、そう不満そうに言うな。今までの事でかなりわかっている。お前の実力はココにいる誰よりも桁違いだと。それで縛りを増やし戦っても充足感を得られるかは別だからな」


 ラーガ王子はゆっくりと歩みながらそう離す。

 彼の格好は先程とは大きく変わっていない。

 ……1つ以外。


 ラーガ王子の手には巨大な槍があった。

 あからかさまに豪華な装飾がされており感じる雰囲気も段違いに強い。

 ……国宝クラスというやつか。


「もしかして、1位の相手というのは……」


「全力で相手しよう。人間の底力というものを見せつけるためにも、アイツの招いた相手に泥をつけるという意味でも、な」


 やっぱりラーガ王子なのか!

 というか王子なのに武闘が強いの!?

 政治をしようよ!


 

 ラーガ王子がちらりと見た方には不機嫌な顔で高台に座るキサラギ。

 小ささと不機嫌顔のせいでより幼く見える。

 キサラギの赤黒い目はこちらを見据えつつも不思議に細められている。


 その黒髪は短いながらも濡鴉のように光沢があり髪質だけなら貴族階級としてもトップクラスかもしれないなと思える。


「全く、なんでオレが……」


「臣下の責をとらせ、審判についてもらった。正直1番時間がかかったかもしれないのは、アイツを説き伏せることだったな」


 代わりの審判役をさせるためにそんな時間をかけたのか……

 色々突っ込みたいが。

 彼は前情報が少なくどうジャッジに影響するかがわからない。


『ラーガ王子、ですか……実は彼が朱雀の槍を持って戦う姿はほとんど無いのです。王者としての槍振るいを極めているため、朱雀の槍がなくともかなり強いのです。魔法と入り乱れた槍さばきはもはや現実のものとも思えないとか。ただ、鮮烈な槍さばきや魔法に隠されていますが、1番は高いジャンプから放たれる槍投げですね。落雷とも言われている技で、その高いジャンプ力も含めて突破は困難です』


 落雷って……私がさっきやった逆雷がへんならあてつけになっていないよね?

 まあ不安がっても仕方ない。

 剣ゼロエネミーを私も手に持つ。


「仕方ない、とにかく試合を進めよう。両者構え」


 私達は離す距離から離れ規定の線まで下がる。

 ラーガ王子は険しい顔をしながら槍をゆっくりと回す。

 それは舞踏でも踊る直前かのように。


「では……始め」


「耐えてみせよ! ハハハッ!」


 なんだ!?

 いきなり炎が槍から放たれラーガ王子ごと周囲を包む。

 (エフェクト)が赤々しく強まる。


 1番最初……それが私の1番マズイ瞬間。

 強化魔法は最速でも数秒はかかる!

 炎のまま空に跳び上がり天井付近まで上がる。


 そこから炎が巨大な鳥の姿を取る。

 叫ぶようなくちばしの開きから猛禽類の叫びが響く。

 エネルギーがほとばしり音が鳴り響いているんだ。


 朱雀の槍が放たれると共に炎の鳥も同時に急降下してくる。

 範囲が広い……!

 しかもかなり早い。


 本当に強い。

 だからこそラーガは放ってきた。

 ならば私は真正面から挑むしか無い。

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