四百二十七生目 逆雷
飛び出てきた私は……全身を凄まじいオーラで覆っていた。
雷撃が走り毛が全身逆だって雷撃がエネルギーとなり空気の色すら変わる。
バチバチと音をたて静電気が輝く。
「な、なんなんだこの音!?」
「ほう」
ラーガがニヤリとするのはともかくもうすぐにマーワルにもバレる。
だからここですぐに決める。
散々"チャージボルト"でためたこの雷撃……ここで放つ。
[エレキファング 雷撃の口を放つ]
私が手を上下に合わせて口のように開く。
そこから大きく形作るように雷撃の口ができる。
それはインカのような父のような獰猛な顔。
射出され空を舞うと牙を剥き鋼の壁たちをなぶる。
さらに空のあちこちに飛び回り壁や床が強すぎる雷撃を帯びていく。
最後に口はマーワルを飲み込みに行く。
「な、ぐ……まだこのような力でも! ストック!」
マーワルは背中に向けて壁という名の杖を牙で受ける。
大量のエネルギーが光に変換されていきかなり無理矢理吸い取っている。
マーワルが苦しそうにうめいているあたりやはり完全に吸える限度というのはあるらしい。
「はぁ、はぁっ、これでは、わたくしは倒せませんよっ! リリース!」
強烈な雷撃の顔が今度は私に向かって放たれる。
普通なら決まるほどのカウンター。
しかし今回は……
「うん。それで倒せるとは思っていないよ」
「なっ!?」
私はただ盾ゼロエネミーを無造作に掲げる。
それだけで途端に雷撃は盾ゼロエネミーへと飲まれて。
消えた。
「音が消えた……? 一体どうなって」
そして盾ゼロエネミーにより私へのエネルギー充填完了。
ゼロエネミーは土と電気の力は吸い取る……
いままで気にされてはなかっただろうからなあ。
そしてここでやるのは1番シンプルな電気。
「"エレクトロトラップ"、そして"ショック"!」
盾ゼロエネミーをあえて遠方に投げる。
彼は独立して動けるから簡単にマーワルの背後を取って落ちた。
そこを媒介にして私の魔法"エレクトロトラップ"が発動する。
盾ゼロエネミーの真上に電気魔法エネルギーの塊が1つ浮かんだ。
これだけではどうしようもないものが。
しかし……
「な、何が起きているのだ!? どちらをから来る?」
マーワルが錯乱しているがそもそもそういう仕掛けでもない。
この試合場全体は今や電気魔力で満たされ電気のフィールドといってもおかしくない。
これだけならば何の害もないが……
私が単にちょっと前方に雷撃を魔法で放てば。
鉄壁たちは蓄えていた雷撃を次々と奥へと届け。
ちょっとした刺激で何もかもが崩れるように。
本来単体では意味がない電気魔法エネルギー基点まで伸びて。
「魔法! あちらか、ストック!」
マーワルは鉄壁たちに背を瞬時に向けたが。
鉄壁たちや電気基点全てからあらゆる雷撃が繋がって。
マーワルのいる一帯全てが電撃の嵐に見舞われ。
空にまで電気が飛来したかのように見えた。
それはまるで逆雷……
ストックなどできはしない。
きっかけは魔法でも結果的には電気エネルギーそのものの襲撃なのだから。
「がはっ……!?」
本人は受けきったと思ったはずなのに……
そもそも場を制したと思ってすらいたはずなのに。
こんなふうにひっくり返されるとは思っていなかっただろう。
口から煙を吐きその場で倒れ伏してピクピクと動くだけになってしまった。
(とはいうけれどよ、お前がした脳内計算とんでもないぞ。スキルで魔法の深淵を理解していてなおかつ科学的にこの世界の部分とすりあわせて成立させるとか、めんどくさすぎてよくやったな……)
まあ"峰打ち"はもちろんオンで。
確かに地球では逆雷の再現はほぼ困難だけれど色々考えた結果できるってなっちゃったし。
それに……
「ハッハッハッ! 見事! ココまでされたら何も言うことはないな。勝者、ローズオーラ!」
ふう……ラーガ審判の気難しさを突破するにはこのぐらいしないとね。
真っ先にやらなくてはいけないのは戦闘エリア外にある電気魔法基点をストックして潰さなくてはならなかった。
まあ間に合わなかったりそもそも外だから本来はダメだったり。
ちゃんと詰ませてもらった。
周囲の鋼たちが空中に霧散していく。
魔力構成の結びつきが弱まり消えていくのだろう。
術者が倒れたから仕方ないね。
運ばれていくのを背後に見ながらふたたび控室へと戻っていくことにした。
『凄いですね今のは! ローズオーラさんの全力、初めて見た気がします!』
『……え? いや、今のは環境利用をしてひたすら時間稼ぎしただけだよ。そういう意味では全力だったけれど』
『……へ?』
念話でアール・グレイと話しつつ尾を揺らしながら……
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