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百四十七生目 情報

 翌日昼。

 作戦が実行された。


 私は妖精たちを"以心伝心"を通して五感リンクしていた。

 妖精たちの羽根で空をふわふわ飛ぶ感覚が新しくて面白すぎる。


 それはともかく妖精は意を決したように上空から崖の下を覗く。

 そこには蜘蛛がたくさんわちゃわちゃといた。


「うわあ……! 身体の中に巣を作られるのを想像しちゃったよ!」

「ちょ、ちょっと、嫌なこと考えないでよ!」


 妖精ふたりが漫才しつつ息を整える。

 サッと崖へと降りていった。

 当然蜘蛛たちはその複眼でギョッとこちらを見つめてくる。


「早く繋がって早く繋がって早く繋がって……!」

「ま、まだ!?」

「今やってる!」


 彼らの念話のようなものは意味で情報を発信するために最初にザッピングのような作業がいる。

 完全に通じるまでは攻撃の恐怖にさらされながら必死に思念が届くように調整するしかない。

 蜘蛛たちが壁にはりついて今飛びかかる!


「……通じた!」

「よし!」

「待て! 彼らは敵ではないようだ。穏健派だと話には聞いたことがある。攻撃待機」

「待機」「了解」「了解」「待機」


 蜘蛛たちの声は妖精たちには分かっていないだろうが私は妖精たちを通して聞こえている。

 言語を覚えたからね。

 思念のような妖精たちのスキルは言語を覚えるわけではないからそこは少し差がある。


 ここからは妖精の思念の出番だ。

 今は私は思念が使えない活発な子と繋いでいるから直接は話は聞けないが……伝える内容は既に決まっているからね。


「……何?」


 蜘蛛たちの親玉である黒蜘蛛はそうつぶやきを漏らす。

 妖精が念話なようなものを黒蜘蛛と交信し最後には黒蜘蛛はあからかさまに不機嫌になった。


「……よし、終わった。逃げるよ」

「よし、蜘蛛の巣作られる前にすぐに!!」

「一度捕らえろ! まだ聞くことが……」


 急速離脱と共に黒蜘蛛が指示を出し周囲にうじゃうじゃいた蜘蛛たちが一斉に蜘蛛の糸を吐き出す。

 間一髪その場から抜け出した妖精たちはぐんぐん高度を上げて急いで崖から離れた。

 さすがに追跡まではされなかったのかそれ以上の攻撃は飛んでこなかった。





 同じ調子で洞穴の中の赤蛇の元へ。

 蛇たちの親玉である赤蛇はその巨体でいつでも妖精たちを丸呑みにできそうだった。


「こ、これ以上ここにいたら睨まれているだけで毒が回りそう……!」

「……よし、伝え終わった。行こう」

「ふざけた話を……逃がすな! 捕まえろ!」


 飛び交う蛇たちの身体を活発な子が念話らしきスキルを使える子の身体を引っぱって避けまくる。

 空に浮くアドバンテージである立体駆動を最大限活かして軽やかに避け続ける。

 妖精たちが『トップ以外は弱い』と言っていただけあって妖精たちの強さが伺えた。

 洞穴の出入り口から外へ。

 そのまま空へ逃げればついには蛇たちを振り切る。


『お疲れ様ー』

『こ、これぐらいなんてことないさ!』

『ただもう一度やりたいかと言われれば、イヤですね……』


 妖精たちはどちらかといえば精神的にへばっていた。

 いやまあ、そうだろうね。

 誰だって敵の所へ直接赴くメッセンジャーは嫌がるっていうのは身体リンクを通してイヤと言うほど理解させられた。


『でもまあ、ここからは本当に頼みました』

『死なないでね!』

『うん、ありがとう。ここからは私の出番だね』


 煽りは上々、あとはジャグナーの策通り動くかどうかだ。

 決めるのは私だ。

 しっかり休養をとって備えないと。





 同日夜。

 その日荒野の迷宮では事件が起きようとしていた。

 蛇の大群と蜘蛛の大群が物々しく移動を始めたのだ。


 その両者の目的地は前に戦場となった荒れ果てた大地。

 草の根1本も残らないその土地で再び激突が始まるかに見えた……

 まあ誘導したのは私達なんだけれど。


 両者が現地につくとそこには驚きの光景が広がっていた。

 この荒野にいないはずの魔物たちの群れが待っていたからだ。

 そしてメッセージを受け取った2頭はそれぞれに正しく解釈する。

 メッセージは本物で軍勢にものを言わせようとしたらここが血の惨劇になるということを。


 中央の軍勢は多くが『スケルトン』だ。

 これまで仲間になった魔物の数は池付近のインカとハックの友達たち含め500も届かない。

 なので600ほど水増しした。

 ユウレンが一昼夜で頑張ってくれました。


 本人は使い果たしてくたばり果てている。

 ちなみにさすがにユウレンだけでは一昼夜で600のスケルトンは難しかったので私が"率いる者"を使ってユウレンの魔法を間借りしたりユウレンから教わった魔法技術を使って共にかさ増ししまくった。

 なので実はまともに動くのは半数だったりする。

 本当に指示が『棒立ち』『攻撃』『移動』ぐらいしかできなくて残念なかさ増しが多い。


 ただハリボテでも大群には見せられる。

 さらに実力を見極められるタイプも動けない理由がある。

 カムラさんやジャグナーなど実力者が紛れていている。


 うっかり虎の尾を踏むには手痛すぎる相手だ。

 さらに気づくものは上空にも目を向ける。

 あの風矢の二つ名持ちのタカやアヅキが上空に出張っていることに気付けるはずだ。


 魔力をみなぎらせ魔法発動前にとどめているが空から降らせば地上の軍なんて的撃ちのように蹴散らせる範囲に被害をもたらすものが準備されている。

 いくらなんでもわざわざそれに当たりにいきたいものはおらず結果として緊張を持った静寂が訪れた。


 さあ、私の出番だ。


 ちょっと離れたところにいる私は空魔法を唱える。


[ゲートポータル 円状の穴を2点に作り出し、その2点を空間無視して直接つなぐ]


 空魔法はわざとやってるんじゃないかってくらい便利さと不便さが同居しすぎている。

 これはようは事前に作っておいた2点を移動できる魔法なんだが一度自分がその場所まで赴いて作っておかないとダメ。

 この時点で『ファストトラベルで良いのでは?』ってなる。


 おまけに2つ1セットの穴しか作れない。

 大量に移動させても負荷が増えないのが唯一の利点か。

 まあそれも私のように"無尽蔵の活力"でドンドン行動力が治るようだと意味が薄い。


 ただ今はこれを使う。

 ひとつの特徴としてこれは穴を開いたさいの魔法の光が飛びきり……派手だ。


 私の目の前なにもない空間に穴が開いて魔物たちが犇めいている空間に繋がる。

 穴からは魔法による光が溢れ天の川が湧き出すように輝いていた。

 ユウレンによるとこのような魔力の光を『エフェクト』と呼ぶらしい。


 そんなエフェクトに迎えられるように私は空間に空いた穴をくぐる。

 この時ばかりは胸をはり堂々と顔を上げて3000の魔物たちの前に出る。

 ヒェ……


 いや、ダメだぞ自分。

 ここはジャグナーたちと決めたとおりにしないと。

 普段はやらない力量を誇示するかのように気迫を全開。

 押し負けないように押し勝つように気迫にハッタリを効かせる。


 大丈夫だ、相手の特徴や特性は把握したしこちらも新技を用意してある。

 対して向こうはこちらの情報なし。

 いける、いけなきゃこの3000の魔物たちは血みどろに塗れる。


 そうして私は強く踏み込んだ。

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