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四百十五生目 潜入

 ひときわ地味な男がそこにいた。

 他の面々……それこそ側仕えなんかも含めても地味。

 服の生地も質感的にそこまでこだわったようには見えないし本人自身も目立った力強さや華美さは感じない。


 ただ代わりに異質さがある。

 そもそもこの国出身の者なのだろうか……

 向こうもこちらに気づく。


「おや、10位……そう、グレイか」


「アール・キサラギ……どうしてここに?」


「今回呼んだのはお前だろう。お前が呼ぶのだったら参加せざるをえない。そこの者たちは初めてだな……今回の国賓か。どれ」


 アール・キサラギと呼ばれた男性は前へと出てくる。

 わかったこの違和感……背が小さい!

 いや私とくらべたら普通なんだけれどもここの場にいる者たちって男女そろってそこそこ背丈がある。


 なのに彼だけ背が小さめでガタイが華奢。

 紛れていると彼だけ子どもだと思ってしまう。

 そういうわけではなさそうなのはなんとなくにおいでわかるが……


「オレは、王位継承権第13位、カー・グルム・アール・キサラギ……将来、王になる男だ」


「……えっ!?」


「はぁ、もうアール・キサラギ、彼らが本気にしてしまうじゃないか。そういうノリは裏だけにしてくれるかい」


「全く、全然信じていないなお前は!」


 思わず私は驚いたがアール・グレイは軽くいなした。

 周囲も軽く笑っていてどうやらいつものことらしい。

 唯一不満そうに肩をすくめるのはキサラギのみ。


 改めて順に軽く名前紹介だけ行われる。

 正式な挨拶はやっぱりこの後に……ということらしい。

 式典が始まるのは王が来てからだ。


 ひととおり聞いたあと私達は別の方向へと案内される。

 かわりにウッダ君や他の面々……つまりアール・グレイの側近たちが合流したようだ。

 ……念話そのものは繋いだままなのでさらに連絡が入る。


『ほんとすみません、ワタクシの腐れ縁というか、ラディッシュノヴァとのつながりが多いやつなんです、アイツは……』


『かなり仲は良さそうでしたね!』


『なんだか他のかたと雰囲気が全く違いましたね』


『キサラギは、謎の多いやつなんです。本来、王位継承権は12番目まで突如13番目に浮上したのが彼でした。母親は既に亡くなっており、父親は支配貴族(プラドマナ)ですがいわゆる土地なしで、いきなり息子がいることが明かされた相手だったのです』


 なんというかドロドロしていそうだなあ……

 ただどんどんとアール・グレイの声色が悩み混じりになっていく。


『隠して育てていたらしく、まあこういう界隈では安全確保のためになくはないのですが……本人の言動や、略歴が調べられる範囲でも謎だらけなのです。まず、元々どこに住んでいたかは、親貴族の付近とされているのですが、探りを入れていてもどうも痕跡がないのです。さらに、土地なしかつラディッシュノヴァなのにメキメキと頭角を表しだしたんです』


 なるほどただのハッタリではないと。


『どこからどうやって見つけ出してきたかわからない技術、町おこしどころか国おこしになりそうなくらい盛況な店作り、どうやって作ったかわからないコネクションたち……そもそも王都付近に住んでいるはずなのにほぼ同日内で国のアチコチに目撃情報があった日も。利得のないワタクシにもしょっちゅう絡んできたかと思えば、王の大事な式典時に代役しか来なかったりと、とにかく動きが謎なのです。態度もあんな感じで、一貫して王となることを言っているのが……まあこのあたりにしておきましょう。どれだけでも振り回された話ができてしまうので』


『な、なんだか御苦労さまです……』


 アール・グレイにしては珍しく本気で迷惑そうな心が念話から伝わってくる。

 どうやらラディッシュノヴァたちは多く振り回されている間柄らしい。

 良くも悪くも。


 何せ単に迷惑なだけならアール・グレイは切り捨てるはず。

 迷惑な上で彼のことを評価しているし腐れ縁と自称している。

 ああ見えて仲は悪くないのだろう。


 私達は念話であれこれ雑談とやりとをしつつ裏の方へと歩む。

 いわゆる舞台袖だ。

 空席の玉座付近に控えられるように作られてある。


 そこそこ高い位置にある玉座への道はこの部屋にはない。

 おそらく専用ルートを通って高い位置にある玉座までいけるのだろう。

 舞台袖とはいえさすがにそこはさすがに贅を尽くした王宮。


 おちつくようなキャンドルと机に椅子。

 古代遺跡から発掘された品を修復して使っている価値の高いカップに執事さんが長々と説明しつつ高いお茶を入れてくれる。

 飲んでみたらどうやら砂糖などの甘味をたっぷり仕込んであったらしく私はともかくドラーグがびっくりしていた。


 この間にもドラーグは裏で1%の姿が次々と王宮の奥へと潜り込んでいるはずだ。

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