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百四十六生目 作戦

「互いに1000近いほどの軍勢ですか……」

「そんなにいたんだネー! まあ弱い奴らがほとんどだけどサー」

「弱くても数です。まともにぶつかれば勝ち目はまったくありません」


 アヅキが驚き妖精たちが意見をのべる。

 私もほぼ同意見だ。

 まともにやりあう気はない。


「どこかに誘導して……いやでも誘導する方法がわかんないなぁ」

「互いの親玉が負傷しているから巣を離れる事はなかなかないだろうな。移動するにしても親玉と一緒だろう」

「あ、それならローズ様の魔法で親玉だけ別の場所に飛ばせないですか?」


 ドラーグの意見にそれは無理だと私は否定する。


「私の空魔法の多くは相手の承諾がいるし、承諾なしで飛ばす魔法も近場のみだから厳しいね」

「そうですか……」

「こちらの仲間は池にいるものたちを含めても、到底数は負けていますし、個々の強さでは我々以外は凡が多い。まともにぶつけてもこちらが痛手を負うだけでしょう」


 うーん。

 こんな調子で何分も話し合うがまともな話は出てこなかった。

 まあそれは私を含めてだが。


 はっきり言って絶望的だ。

 何せこれからやるのはこれ以上戦火を広げないために喰い止める戦い。

 互いに傷をなるべく負わずに済ますのはどう考えても困難。


 こういう時は……


「……あ、そうだ、彼を連れてこよう」

「彼とは?」

「森の迷宮から出る前に仲間になったあの熊だよ」

「ああ! でもその熊が何の役に立つのでしょう?」

「私の予想通りなら、おそらく大丈夫」


 というわけで早速空魔法"ファストトラベル"!





 ワープしてやってきました。

 迷宮の外。

 更にそこから離れた場所にある池。


 一瞬にしてこの距離の移動が実現できて楽じゃないわけがない。

 ワープしてきたことに近くにいた仲間たちが気づいたようだ。


「あ、お姉ちゃん!」

「あら帰ってきたのね」

「お帰りなさいませ」

「ただいまー」


 ハックにユウレンとカムラさんか。

 なぜかユウレンとカムラさんは机を囲んでティータイムしている。

 午後3時はとっくに過ぎていて夜なんだけれど。


「宜しければローズさんもどうぞ」

「あ、いただきます」

「あれ? 妹帰ってきていたのか!」


 なんだか流れで私もお茶をいただくことにした。

 ちなみに私は地面にシートを引いて皿に汲まれたお茶をもらう。

 持てないし机の上のものもらうの大変だからね。


「ってそういえばこの一式どうしたの?」

「机とかお茶のことかしら?」

「それなら(わたくし)めがあの屋敷から出る際にとユウレン様のリュックに詰めさせてもらいました」


 外用に机や椅子は組み立てれるんですよとカムラさん。

 ユウレン屋敷から脱出する時ちゃっかりそんなことをしていたのか……

 ユウレンのリュックは魔法で見た目よりも遥かに多くのものが入るから、バラして口にさえ入ればたしかに持ち運べる。


 あ、このお茶おいしい。

 執事の格好が似合うだけあるなカムラさん。

 ゾンビだけれども。


 そんなことを考えつつも近くに居たみんなにこれまでの経緯を話した。


「――そんなわけで熊を迎えに来たんだ」

「な、なんだか大事になっているんだね」

「しばらく調査に時間がかかっているだけかと思いきや、また面倒事に巻き込まれたのね……」

「よーし、いざって時は頑張るぞー!」


 各々がコメントしていたがまあ『なにトラブルに巻き込まれているんだこいつ』って反応になるよね。

 今度は逆に私がいない間の池の様子を聞かせて貰った。


「こっちは順調に情報が集まったよー!」

「情報を元にここらへんの地図を更新したのよ。見て」


 ユウレンが広げた地図には前には無かった委細な情報が書き加えられていた。

 冒険者たちが自ら細かく地図を作るかのように細かくデータが書き加えられている。

 おかげで周辺の地理には困らなさそうだ。


「それとな、友達が出来たぞ!」

「友達?」

「妹がいない間にやっぱり何度も戦いはあったんだけれどな! 妹を真似してたくさん友達作ったぞ!」


 そういえばインカやハックは自前で"峰打ち"を持っていたんだっけ。

 それで追い詰めつつ……あれ、インカやハックは"無敵"は持っているが回復魔法はない。

 どうしたのだろう。


「ああ、"無敵"と"ヒーリング"の組み合わせを受けたものは相手にも対話可能になる仕組みね。

 あの熊が一緒に戦っていたみたいだからそのせいじゃないかしら」


 疑問を察したのかユウレンがそう答えた。

 "無敵"と回復の組み合わせは確かに熊も受けている。

 熊を通して仲間を増やしていったのなら納得だ。


「ああ、なるほど……」

「ちなみに友達たちはここにはいなくって、呼んだら来てくれるってさ!」


 まあ辺り一帯の魔物たちが集まったら地獄絵図になってしまうだろうからね。


「む? さっき俺のことを呼んだのか? っとお前さん帰ってきていたのか」


 噂をすればなんとやら。

 熊もこちらに気づいて近くにやってきた。

 

 ……そういえば熊もそろそろ名前つけるべきか。


「うん、ただいま。ねえ突然だけれど、ジャグナーって名前で呼んでいい?」

「じゃぐなぁ? よくわからんが、お前さんがそう呼びたいならそれで良いんじゃないか?」

「うんわかった。私はローズって呼んで」


 まあ魔物に個体名文化はないから仕方ないね。

 ジャグナーに事情を説明し一緒に来てもらえないか話した。


「――って感じなんだけれど、どうかな?」

「おお、戦場か! だったらすぐいくぞ!」

「あ、ちょっと待って! お茶飲ませて!」


 なんとか慌ててお茶を飲み切った。

 そうして空魔法の準備。


「カムラさん、お茶ありがとうございました!」

「いえいえ、ユウレン様の友人ならいつでも歓迎です」

「カムラの入れるお茶はどこでも1級ものだもの、美味しいに決まってるじゃない」


 なぜかユウレンが誇らしげだ。

 ジャグナーの手を私に触れさせて"ファストトラベル"を唱えた。

 再び迷宮へワープ!





 洞窟付近へ戻り妖精たちにもジャグナーを紹介した。

 ちょっと驚いていたがすぐに馴染むだろう。


「さて、ここからもう一回対策会議しよう」


 私の音頭取りにより再開された対策会議。

 これまでの情報をジャグナーに渡した。


「――というのがここまでの状況で、完全に手間取っているの」

「ふむ、確かにまあまともにぶつかれば多くの血を見てなんの利も得られそうにないな」

「そうなんだよねぇ……」


 勝利条件は相手の全滅ではない。

 両陣営の群れを抑え戦いを止めさせる事だ。

 そのことが余計に難易度を上げている。


 ジャグナーは少し考えてからさらに言葉を紡いだ。


「……そうだ、だったらこうしたらどうだ?」


 そこで提案された内容は価値があった。

 難しいかもしれないがやれるだけやってみよう、そう思える内容だった。

 さてやってみよう。

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