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四百九生目 王宮

 買い物は間違いなく世界屈指のブランド品たちが集まっていた。

 正直高いけれどその価値はある。

 雰囲気作りも最高で観光地としてはお手本になるほど。


 バットな点はやはりきらびやかすぎるということか。

 困ったら金や銀や宝石を埋める。

 純金のコップは重いし悪趣味。


 やはり技術段階が高くなっていても中身が追いついていない。

 簡単に言うと中のニンゲンたちが変化に追いついていないのだ。

 これだけ豪華なのにみんなの生活様式は他の場所と大して変わらない。


 みんな立場どおりに動き下々のものはまともな環境にいない。

 むしろ厳格にすらなっている。

 ここでは資材(デマジー)層は存在がまともに認められずたくさん働いているのに全員からその存在を意図的に意識外へおかれている。


 まるで見えない精霊さんが何か仕事をしていてくれたかのように。

 何がここまでさせるのだろうか……

 それととにかくあちこちにドラゴンのレリーフ……つまり彫り込みや像が置かれている。


 5大竜をモチーフにしたものだけではなく5大竜に付き従うと言われている神使竜もよくいる。

 神使竜はマイナーどころも多いのに結構把握されているようだ。

 むしろこれらすらもこちらのほうがより栄えているとする華美な見栄からくるものか。


 さらにあれこれ巡った後にわかったことだがやはり不自然なほどに神殿が見当たらない。

 都なのだから神社やら寺やら教会やら神殿はほぼある。

 街全体に宗教的な意味合いのものがあるのに不自然極まりない。


 最後に……これが1番私の心を打ったのだが。

 あれこれ買い物しつつ街の中央や中央通りをそれていって。

 住宅街なんかも抜けていき。


 職人街になってくるといきなり雰囲気が落ちる(・・・)

 もちろん裏手の職人通りがきらびやかである必要はない。

 同時にここまで汚いのはおかしい。


 他の場所では職人通りとそこかららの下町はあくまで繁華街からの流れで繋がっている。

 ただいきなりうっかりスラムに迷い込んだのかと思うくらい雰囲気と治安が悪くなる。

 さらに下町……という名の旧市街というところがひどかった。


「な、なんですかここ……アノニマルースのスラムよりずっとひどいですよ」


「廃材置き場……?」


「家が……ほとんど壊れている」


 ドラーグやローズクオーツが引くぐらいグチャグチャだった。

 ほとんど壊したり壊れたりした家屋の廃材たちの上にその廃材から建てた雨風をしのげるかもしれない程度の家。

 むしろ突風が吹いたら全部壊れそう。


 ここに住んでいる者たちはみんなボロ雑巾を合わせたような格好をしていた。

 明らかにお金という概念がなさそう。

 おかしい……ここ王都だよね。


 ちらりと視線を向ければちゃんと王宮がはるか遠くに見える。

 しかし職人街や旧市街に入るさいに確かに僅かな違和感があった。

 今ならわかる。


 区切りだ。

 一面が壁や建物それに門でぐるりと区切られごく自然に繁華街から見えなくされている。

 このいびつさは大河王国そのものを表しているようで。


 3名とも気分はよくないけれど目をそらせばこの国のやり方を黙認したかのようで。

 ただ黙々とその場を見回すように歩いた。

 夕陽だけがこの場を彩り知らしめてくれる。


 これがまかり通っているのが大河王国の現状なのだと。

 この光景を忘れてはならない。


 それはそれとして治安はとても悪く何度か襲われたので適当に跳ね返しておいた。









 日が沈みかける頃。

 私達は買い物観光を終えて王宮前エリア門に来ていた。


「ここからが本番ですね!」


「ゴーレムとして生まれてから、多分最大に緊張しています……」


「常にモニタリング中。安心して続行を」


「じゃあ、やろうか」


 私も緊張していないわけではない。

 ただ経験則として緊張していると言うと緊張していることが頭の中で渦巻き出す。

 渦は思考を占拠してしまう。


 なのでここは気楽に一声だけ言って進むのだ。

 簡単に正面は通してもらえた。

 指輪を渡して入ってと言われていたね。


 ファーエン家の家紋が裏に刻まれた指輪だとは思わなかった。

 現在ファーエン家は王宮に招かれている。

 つまりは私達も招かれているという扱いになるそうだ。


 ちなみに徒歩で行こうとしたら止められた。

 1時間歩き倒しになりたくなければお世話になったほうがいいらしい。

 1も2もなくサービスを受けた。


 王宮内移動用鳥車というものに当たり前だけれど初めて乗る……

 果たして内部移動するためにこんな豪華絢爛で派手な装飾をする必要があるのか。

 それを悩みながら10分程度でやっと庭を抜けた。

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