四百七生目 魔鉱
王都への入所手続きはほぼほぼ事前に住んでいてゴルガがちょっと話したらあっさり通れた。
まあ明らかにこちらはファーエン家だってアピールしているからね。
鳥車にばっちり記名と家紋がある。
これでハッタリだった時のリスクを考えれば基本的に嘘で使うことはない。
鳥車と共に正面通りを通っていく。
驚くほどに整備された舗道に等間隔で並ぶ街灯。
それに立ち並ぶ建物たちは何らかの会社や店らしく立派な建て構え。
中のニンゲンたちはこちらを見ては手を振って迎えてくれた。
「ファーエン様ー!」
「みなさーん!」
「すごー! ほんものだー!」
「警備ギルドの皆様、この後ジューシーな鶏肉をキマったムーンシャインで流し込むのはいかがですかー!」
「ファーエン様ー! うちの新造武器たちからキッチンナイフまで、今なら領地まとめ買いがお得!」
何かキャッチセールスも聞こえてくるような……
というかムーンシャインって文脈から考えると法的にはかなり怪しいような。
良し。聞かなかったことにして歩こう。
奥に行けば行くほど明らかに貴族街といった風貌になっていく。
みんな庭が広いな……
少し思ったけれど王都だけ金のかけかたが違うというか技術レベルからして違う。
近くの町がとりあえず固めて四角くした家が立ち並ぶとしたらこちらは塗装も美しく繊細な作りが見られ屋根には華やかな像もありちょっとやそっとではない。
そのまま清潔すぎるほど清潔な道を通って王宮にたどり着く。
とはいえ王宮ですら1エリアになっていて屋敷部分までにはまだまだ遠い。
ただここがゴールである。
正面部分に手続き所があり鳥車たちはここでお別れ。
王宮備え付けの騎士たちがかわってくれて引き継ぎを終える。
私達警備ギルドメンバーは王宮エリアまで来てからやっと大きく息をできた。
「「はあぁ〜」」
「終わった、地獄がやっと終わった」
「領主付きの仕事って大変なんだな……」
「いやあ俺はやったことがあるからわかる。後にも先にも1回だけだ、こんなしんどいのは」
「何回も死んだと思ったぜ……」
警備ギルドの仕事としてはここで終わりだ。
報酬は王都の警備ギルドで受け取る。
だが全員疲れ切っていて各々が街中にへと消えていった。
私はドラーグと共に街中を歩む。
さすがに王都というだけあって他の街よりも断然あちこちに目移りする。
こうして歩いているだけでも楽しい。
あれこれと話しつつ私達はノーツやローズクオーツの元へと行った。
王都と言うだけあってノーツの巨体もすんなり入れたし……
ゴーレムたちはゴーレム専用メンテナンス工房へ警備ギルド持ちで預けられることとなっていた。
メンテナンス工房なんて本当になかなか見ない。
これはうまれの制度としてニンゲンたちが奴隷になっても死霊術師がいないこの国では通常ゴーレムが重宝されているというのも大きいだろう。
体格が大きくエネルギーさえあれば疲れないゴーレムは基本的には便利な貨物持ちだ。
現場に行けばそこでは既に作業が行われていた。
多くの様々な型のゴーレムが立ち並びみんなスリープモードでおとはしくメンテナンスを受けている。
主なメンテナンス工程こそ清掃だ。
ゴーレム種の体は残念ながら柔軟とは言えないものがほとんど。
重ねてだいたい無機物か死者なので新陳代謝は実質ない。
何が起こるかといえばどんどんと風化し関節には物がつまっていくのだ。
単純に汚くもなる。
汚くなれば風化が早まる。
そして傷が増えていく……
それらを全てきれいにして埋めてとするにはこういうプロの工房がすごく良い。
もちろんなかなか利用できないし高級だからだいたいは自前でやるけれど……
ここは国家的な繁栄の範囲を無視して明らかに世界最高峰の基準が揃っている。
「うわあ……みてください。アノニマルースで導入を検討して、でもいくらなんでも維持費がおかしくやめた機材がたくさんおかれていますよ。土地の広さは負けていませんが、たくさんの人数、たくさんの清掃道具、たくさんの魔道具、どれをとっても狂気じみていますよ」
「そんなにすごいんだ……」
ドラーグが道すがら説明してくれるが簡単に言うと『金は腐らないから全面的に使ってしまえばいいじゃない』を地でやっているらしい。
正確には金だけではない。
……金より高いものもバンバン使っている。
魔銀、魔銅あたりは当然として。
金剛鉄や魔金はやりすぎじゃないかな。
成金趣味の部屋と化している。
合金化銀あたりを使ってもパフォーマンスが落ちないところは多数あるらしい。
私が見てもあんまりわからないけど。




