四百五生目 疲労
ノーツが飛空艇を狙う。
ノーツの中にはいったクオーツは必死に自身のエネルギーを高めていく。
ローズクオーツこそが最大のエネルギー源だ。
「いきます……まずは、これを!」
ローズクオーツが全力を込めるとノーツの前方にたくさんの物質が光と共に生み出されていく。
空中で浮いてキラキラとピンクな欠片たちは一見ローズクオーツと同じテテフフライトみたいな宝石に見える。
しかしその形状はグニャグニャと揺れ動きまさしく存在が不安定なようだ。
「僅かな間だけ存在する、テテフフライトに似せた物、ワタクシの能力によって生み出されたものです。これを使って!」
きらめいていた宝石たちが銃の方へと寄っていく。
たくさんの宝石が生み出されたはくっついていきどんどんと銃がゴテゴテしく飾られていく。
完全に融合したあと銃と宝石を錬金したらしくまったく違うキュートな見た目となった。
「装填開始」
ノーツが銃を構え直すの先の方に光がどんどんと溜まっていく。
合わせて形成して行きやがて1つの大きな結晶となる。
光も強烈に帯びて複雑な色合いになっていた。
「場所は……このロックオン! ってしている部分ですか?」
「はい。そのまま狙いをつけて」
「こうして……こう!」
ローズクオーツの念じる操作に合わせてクオーツが動く。
上方に照準を合わせるためヒザを折り銃を立てた。
見るからに十分なエネルギーの溜まった銃は今にも爆発しそうなくらい震えている。
しかしそれで照準がズレることはない。
「いっちゃえっ!」
「発射」
低い爆音が響き結晶塊は発射される。
反動で銃が美しく砕けるように壊れ熱エアーを体の関節から出してバランスを取る。
そのかわり結晶塊はこれでもかというエネルギーをこめしっかりと飛び。
そのまま舵へと直撃し爆発した!
「「おわあああ!!」」
「命中」
「外に出て……っと。あれ、大丈夫でしょうか?」
「不時着の確率99.999……%。再度浮上するためには、大規模な改修が必須」
「……一応聞くけれど、残りのわずかな可能性って?」
「製作者ローズオーラと同等のワープ系能力者や飛行系能力者が船ごと安全化させる可能性、小数点以下」
「ああ、じゃあやっぱり気にしなくて良さそうですね」
ふたりは並んで落ちていく飛空艇を見る。
しかも明後日の方向に飛んでいく。
地上部隊はもはやあ然として端から逃げ出している。
派手な爆発と共にドラーグはちゃんといつの間にやら消える。
ドラーグの得意技だ。
巨体で目立つはずなのに誰にも見つからず隠れるというのは私以上。
騒然とした場から全員が抜け出すのにはそこまで時間がかからずにできた。
なんとか町で再集合して緊急的なやりとりをした。
とりあえず何日かかるかわからないがここの領地が制圧隊を向かわせてくれるとのこと。
少なくしとも町の方は厳戒態勢に入り輩が入り込む余地はない。
少なくともいきなり飛空艇は消えない。
派手な音が遠くからも聞こえてきて不時着はしていた。
延焼したり大爆発はしてないのでただただ落ちただけだろう。
私達は討伐より無事護送を最優先。
彼らには構わず進むこととなった。
幸い怪我や車体の痛みは最低限でなんとかなる。
ガラガラとカルクックに引いてもらい進んで行けばふたたび夜が訪れる。
実は総合判断で日程の遅れを取り戻すため町に止まることは避けたのだ。
また夜中に直接アール・グレイと話す機会が訪れる。
今日はまだ早い時間で火に当たりながら遠巻きに本を読んでいた。
「隣失礼します」
「あ、ローズオーラさん。どうぞ」
座らせてもらいひと息つく。
今日の騒動はとんでもなかった。
正直2度はごめんで互いに疲れが見えた。
「……今日、何もできず遠巻きに見ているだけでしたが、それでもあんな相手に狙われていたと思うとまだ身震いしてきます」
「そのことなんですが、あの飛空艇、中も外も徹底的にどこ所属か消されていました。何か心当たりは?」
「どうして中の様子も……! と聞くのはやめておきましょう。なんだか、あそこの流れは偶然ではないと脳内で警鐘があると同時に、聞いてはいけない気がするので……そうですね。一応、断定はできない範囲ですがたった1つの領地だけ、購入お披露目がなかったのに、まるで飛空艇でも作っていたかのような資材と人材の動きがあったには、あったんです。王都経由でしたので、みんなそこまで深くは掘りませんでしたが」
アール・グレイは本を閉じて疲れたように顔を手で覆ったあとそのまま拭った。
どうやら今の話で疲労が天井を叩いたらしい。




