四百生目 防御
地上では相変わらず激戦が繰り広げられていた。
相手は数の利を活かして包囲網をしき徐々に追い詰めてきていた。
数が勝っているときの最強戦術こそ数で押しつぶすことだからだ。
私はなんだかんだと立ち回っている間にゴルガと合流。
カルクックに乗って走り回る鳥車を護りつつ結構ピンチな数相手に逃げ回っていた。
馬止めならぬ鳥止めで範囲を削られ100以上の数で私達を追い回す。
さらにタイミングが悪いことにここで空の砲弾充填が終わったらしい。
当たり前だがなるべく木のないところに誘われている。
号令らしき吹奏楽器の音が鳴り響き……
全員が撤退していく。
「離れろ! 巻き込まれるぞ!」
「くっ、鳥車を避難させないと……!」
「時間も手数も足りない!」
そうこうしている間に空から轟音。
初撃に比べれば少ないが砲弾だ!
「こうなったらある程度撃ち落として……」
「鳥車、そこで止まれ! うおおおおっ!!」
ゴルガはカルクックから飛び出して鳥車と飛空艇の間に立つ。
そして背負っていた四角い鉄板を取り出して……
前方に掲げると光と共に動く。
ギミックが鉄板の裏から鉄板を次々出して……
最後には厳つい大盾として展開された。
かなり頑丈そうだがさらに光が展開されていく。
光は盾の形に広がり小規模な結界と化していく。
まさしく仲間を守るための大防御だ。
「ゴルガ!」
砲弾は全て鳥車に降り注ぐわけではない。
予測しての偏差撃ちなのもあり多くは逸れる。
しかし鳥車をえぐるものや鳥車付近を落ちるものは全てゴルガが受け持つ。
私はその背後に回っていたためここからなら無傷で狙える。
ただそれよりもゴルガがしっかり受け止める方が早い。
既に何発かゴルガの防御に当たっている。
「ぐあううっ!」
悲鳴に近い声がゴルガから漏れる。
当たり前だが大砲はニンゲンに向けられるものとして作られていない。
防御を貫いてゴルガ自身にもダメージが行っているだろう。
そのさまは自身の命をかけて護る警備ギルドとしての姿があった。
こう……そこまでやってもらわなくても動き回りながらなんとか迎撃すればという発想になるのは間違いなく私が冒険者なのだらうね。
当たるたびに盾の一部が剥がれていく。
おそらくは衝撃を受けて盾全体が壊れかけると1部にだけ集中させて捨てる力がある魔法の盾なのかな。
私もそちらばかり見ているわけではない。
いい位置に来たやつは確実に弾丸放って撃ち落とす。
ちゃんと威力を込めた弾丸ならば砲弾が爆発してくれる。
単なる鉄球飛ばしてきたら砕けるだけで危なかったかも。
当たり前だが砕ければたくさんの弾丸としてこちらに降り注ぐことになるからだ。
当然連射もできない。
なんとかしのぎきったらしくゴルガが大盾の結界をしまいこみ。
……その場でかがみこむ。
「ぐっ……」
「ゴルガ! 傷を!」
「っはぁ、次が、来るぞ!」
ゴルガが指摘した通り煙の中から勝ち鬨が聞こえてくる。
つまり敵の叫び声。
突っ込んでくるつもりだ。
ゴルガはこちらが回復にまわるのを止めさせようとしたが今は手数が落ちるのはとても困る。
そもそもゴルガの生命力は次の戦闘に耐えられない。
ゴルガの意識が朦朧としているのを良いことにイバラを忍ばせ持ち上げ。
そのまま元々ゴルガが乗っていたカルクックに乗せた。
「ん……?」
「まだ倒れてもらっては困ります!」
カルクックに並走してもらって光魔法"ヒーリング"を"二重魔法"でかける。
ゴルガの生命力くらいならすぐに治せるはずだ。
「なあ、今の……?」
「いきなり乗ったし、この子の腕からなにか伸びてたような……?」
カルクックたちは顔を見合わせ噂話をするが今はつとめてスルー。
ゴルガは出血がそこそこあるが今はこの全力"ヒーリング"でごまかすしかない。
ただだいぶ気分は持ち直したらしくガバリと起き上がる。
「なっ!? いつの間にカルクックの上へ!? それに、傷が全快している!?」
「いえ、傷は治ってませんし出血した分は戻ってません、それにすぐ敵がきます!」
「お、おう……?」
肝心なところはあえて答えずにゴルガの考えを中断させる。
実際大量の敵がまた四方八方からせまってきた。
多くは雑兵だから鳥車やカルクックで轢こうとすれば離れる。
ただ逆に言えばつかず離れずそして砲撃とこちらの疲労を一方的に迫れるという立場だった。
そして私は意外なことに苦労させられていた。
「うっ、当たらない」
カルクックに乗りながら射撃というのをナメていた。
射撃が逸れまくるのだ。