三百九十九生目 侵入
班リーダーを気絶させた。
あたりのニンゲンたちは戦意喪失。
問題はない。
1番の問題はまだ1つの鳥車しかなんとかなっていない。
他の鳥車がどうなったかがまだ不明。
少なくともまだ数分だから一瞬で何かが変わるとしたら空襲直撃のみ。
私は走って次の場所へと向かう。
だいたいの位置はわかっているんだけれど……
それにドラーグは本当にどこ?
ドラーグに念話しよう。
"以心伝心"を使って……
『ドラーグ、ドラーグ? どこへ行ったの?』
『あ、ローズ様! ちょうどよかった!』
ドラーグに念話が繋がった。
いきなり空爆を食らったことを危惧したが念話を聞くにそうでもなさそう。
『一体、どうしたの?』
『僕、攻撃が始まったあたりで魔法を使い今出せる体全てを呼んで来ました。ドサクサに紛れて戦線離脱し、そのまま1%の姿に化け全体像を把握するためこの地域一体に散らばりました。100体近くいるので現状把握は簡単でしたよ。今そちらに見聞きしたデータを送りますね』
『ありがとう、助かる!』
ドラーグはちゃんと考えて動いてくれていたようだ。
それにうれしくなりつつこの戦場全域でドラーグが見聞きしたデータを私の脳内のマップと情報をつなぐ。
……良し! これで現在の状況がわかる。
とりあえず鳥車は2から5まで無事。
遠くまで行ってしまったやつはなくあくまで木々の間を駆け抜けている。
今現在も移動中で私が合流するのも苦労しそう。
ただ徐々に周囲の雑兵たちが障害物を置いて剣をかかげどんどん追い詰めようとしている。
ヤバい鳥車から先に行こう。
『ドラーグ、今はとりあえず観測を続けて。そして、タイミングを作るから時が来たら空の飛空艇を100%の姿で迎え撃ってほしい』
『ええっ!? あんな大きな機械、落とせるかどうか……?』
『大丈夫、派手にやってもらいたいだけで、お膳立てはこっちがする』
剣ゼロエネミーが無事船内に潜入できたようだ。
剣ゼロエネミーと私は繋がっている。
また剣ゼロエネミー自身がある程度判断して動いてくれるのだがここまで遠くで戦わせることはなかった。
なので今私自身が驚いている。
『凄い、これがゼロエネミーの世界……』
前々から出来はしたもののそんなにやらないしやるたびにグレードアップしていて感動してしまう。
ゼロエネミーは瞳のような宝石を中心に据えている。
まるでその目を中心に周囲の情報がはっきりと理解できていた。
視界ではなく行動力などのエネルギーや魔力の動きそのものを感知している?
わかるのは壁などを無視して生物の反応がわかるのと360度の円形構成されていて遠くまで見えるわけではないこと。
色合いが変わっていてカベなどは色合いが薄く均一なのに生物は力強い色合いに見える。
多分光を使おうとすれば瞬くように見えるだろう。
剣ゼロエネミーがいつでも戦えるようにその刃を剥き出しに浮遊する。
周囲にはまだ気づいていない兵士たちが近くだけで4名もいる。
気づいてはいたが大所帯確定だ。
上側もたくさんの兵士が行き交う気配。
剣ゼロエネミーが負けるとは思えないが道具単体だと封じる手はたくさんある。
大立ち回りは後だ。
『はぁー、こんなことやって意味があるんだろうか?』
剣ゼロエネミーを通して声が聴こえる。
兵士たちの会話か。
なんだか膜1枚通しているかのような不思議な声エフェクトのかかり方。
『奴らは領地転覆を狙う国敵、そういわれたのだから、戦う。それだけだ』
『といってもよ、さっきのあいつらがした宣言、王命だと言うのも含めて考えれば、私だって明らかに建前というのはわかる』
『わかったからどうなんだって奴だよ。お前、向こうにつくのか?』
『まさか! それにこっちが正義だってのは思ってる、ただ、双方なんらかの思惑でやりあってるよなあって。そういう話には、誰だって興味があるだろう?』
『まあな。無駄口たたいてないで、次の投下準備を終えるか……』
話している間にもゼロエネミーには安全な位置まで移動して次の部屋につながる通気口まで移動してもらった。
さらに……
『わっ!? このロープ切れてるじゃあないか、あぶねー!』
『また欠陥品か……こっちが扱ってんのは爆弾だぞ。爆弾したらこの船の下腹部が吹き飛ぶってのによ』
ちょっと通りがかりにロープを切ってもらった。
重い荷物を運ぶロープも剣ゼロエネミーに任せればあっさりカット。
時間稼ぎして進んでいく。
通気口を通り排気管を移動して多くの情報を集める。
どこがウィークポイントになりどこを攻撃すれば効率よく落とせるか。
そしてどこをやれば効率よくパニックになれるか。
いくつかの通気口を渡って把握し……
ついには実行の時が来た。




