三百九十七生目 脅迫
ゴルガは置いてきてしまったが現場に到着。
既に現場では大量の気配に殺気。
木々の間に鳥車が止まっていてかわりにたくさんのニンゲンたちが襲っている。
反応があるだけで味方より10倍近く敵が多くないか?
とんでもない囲みだ。
「みんな!」
「なんだ!?」
「くっ、新手!?」
「どっちの、やつだ!?」
「警備ギルドです!」
警備ギルド員や兵がカルクックたちを操り組んでいた。
こっちのほうがカルクックは多いが人数不利は覆らない。
色々とためらっている場合じゃないか。
私は銃ビーストセージを構えつつ魔法を唱える。
「助けてくれ、鳥車の車輪がハマってうごけない!」
「相手はひとりしか増えてない! 押し切るぞ!」
「さっきの王命に反するって一体……」
「気にするなどうせハッタリだ」
指示しているヤツの指揮は高いものの雑兵たちは確かに少し悩みながら戦っているフシが垣間見える。
いくらかはカルトス団だろうとはいえここに住むものならばその思想に影響を受けているだろうからか。
鳥車の方に視界を飛ばせば車輪が石か地形かに挟まっている。
カルクックたちが引っ張っているが動かない。
その間にも敵が迫り遊撃しているカルクック警備ギルド員が蹴り込み距離を取らせる。
私を敵と認識した雑兵たちは動き回るカルクック警備ギルド員より私に目を向ける。
「まずはコイツから片付けるぞ!」
「銃らしきものを持っている、距離を詰めろ!」
「新人のチビっぽいな! 楽勝!」
"無敵""峰打ち"を込めつつ場の魔力範囲を読みつつ……
こちらに飛び込んで来たのは3名。
「「オラァッ!」」
ガンナー職武技。
[爆散華 武技。大量の弾丸を発生させ爆発するように近距離前方に飛ばす]
銃口前に丸い光が発生しそれが独特の甲高い音を立てながらつぼみのように膨らむ。
そして目の前までせまった3人相手に花開く。
爆散という形で。
イバラトゲの弾丸に似た光が細かく量産され……
広い前方範囲に対して当たる。
面制圧型の攻撃だ。
とりあえずガンナーレベルは5にしてある。
便利なスキルも覚えたし試しうちさせてもらおう。
光は目の前の敵を蜂の巣にする。
正直私の能力値だと雑兵たちなら武技1発で倒せるようだ。
飛びかかる寸前で仰向けに倒れ込み気絶。
その違和感に全員が気づきこちらを見る。
戦場がほんの一瞬静まった。
今がチャンス!
光神術"サウンドウェーブ"の調整値を迫力のものにして……
"無敵"と私のレベル圧を殺気に乗せる。
普段は抑えないと無駄に威圧と化すこの力の気配を……!
「王命に反するものは全員処刑となる!! 即刻立ち去れ!!」
「「ッ!?」」
音圧を乗せて全力の威嚇。
ビリビリとまさしく震えるほどのもののはずだ。
その証拠で明らかに動きが怯んでいる。
私は手近なやつに銃口を向けて連射。
その音と共に場の空気も動き出した。
「っ! 今のうちに鳥車を脱出させるぞ!」
「くっ、怯むな! 威圧能力持ちだ、数で押せ!」
「うあ、ああ……!」
「ど、どうしたら……!」
激しい爆音と共に連射を行い数を減らしていく。
こっそりイバラを通して補充しているからあるはずの弾丸補充行動がなくてかなり驚いているのがこの班のリーダーらしき相手からも見える。
カルクックに乗ったやつだ。
普通にのこり25人以上を倒すのには苦労する。
向こうも強さはまちまちでこちらの射撃に対して離れて回避するものもいるし……
味方が入り乱れてて範囲魔法の無効化指定がしにくい。
ならばまずは。
"獣の賢者"を使い場の魔力を把握し操作。
鳥車の下側を念力のようにつかみ……
一気に持ち上げる!
「なんだ!?」
「ぎゃっ!?」
「浮いたあ!?」
細かい調整はまだまだ苦手だが力押しなら可能。
一瞬だけ浮かせハマっていた車輪が浮き……
着地するとまともに動き出す。
「っと! やっと抜けれたのか!」
「え? 僕たちが抜いた……?」
「何か変な気が……」
カルクックたちは困惑しているけれど御者が勘違いしてくれたのでそのまま進めよう。
カルクックたちの言葉は周りに伝わらないし。
「鳥車は逃げて、護衛のカルクックたちも共に! 私は別の鳥車に向かう!」
「わかった! いくぞ!」
鳥車たちが脱出をしようとすれば当然真っ先に班リーダーが向かう。
カルクックに乗っていて機動力も良いが……
「行かせん!」
「させない!」
狙ってカルクックの足を連射。
何発かあたり勢いがついていたこともあり勢い余って倒れる。
……そういえばドラーグがいないんだけれどどこへ?




