三百九十五生目 飛空
出発し進む。
割と何日かは何も起こらない。
正確には細かく戦いはあったものの普通に警備兵で蹴散らすもの。
正直私は敵になりうる相手を先に見つけるぐらいしかない。
暇である……
とんでもなく暇。
何もやることがない。
「いや、あんな先の先に寝ている魔物、どう見つけたんだよ」
「こればっかりは慣れですね」
「慣れでどうにかなるのかよ」
今は警備ギルド鳥車内で休んでいる。
ゴルガや何人かのニンゲンたちがいる。
私達はこの中で揺られながら移動中だ。
あちらの豪華鳥車と違いこちらはあくまで詰める場所。
休憩とはいえときおり飛び出して魔物を追い立てなくてはならないし人数的に狭くてよくない。
私が我慢できなくなって生活魔法で清めだすまでは臭くもあった。
別にみんな生活魔法を使うような事態だと思っていなかったらしい。
慣れと種族差はこわいものだ。
結構順調に来られているから近い日にちで王都につくのかな。
野宿そのものは1度しかないようにスケジュールを組めている。
ここからはどんどん町や宿泊街が増えていく。
食糧の問題もない。
大きな事件は期待していないが1番動いたのが稽古なので単純に手持ちぶさた。
このまま王都に――
「――ん!?」
「なんだ? どうした」
「地上から大量に何かが……同士に空に大きな何かが。あれは……?」
「何!?」
「ドラゴンか!?」
「おい、少し止まってくれ!」
「もう止めた!」
鳥車が止まった同時に全員で車内から飛び降りる。
しばらくはシン……としているようにニンゲンたちには聞こえただろう。
キョロキョロと見渡すみんなと違い私と……
「な、なんなんですか、この音!」
「ドラーグも気づいたよね」
遅れて少し後ろからやってきたドラーグと同じ方向。
しかしやがてその音をニンゲンたちも聞きつけた。
「……な、んだ?」
「音……まわっている?」
「何かとてつもなく重いものが……」
「おい、見ろ、あれだ!」
ゴルガが叫んだ先。
それは木々の向こうに見える空。
重々しい音を立てながら空から見えるもの。
それは竜ではなかった。
地上空見てもはっきり見える空飛ぶ飛行物体。
……船が空を飛んでいた。
「飛空艇だと!?」
「おおー、珍しい。どこの支配貴族さんのものかな……」
「なあ、こんなところのこんな方角、飛んでくるものなのか?」
「俺もわからん、初めて見たぞ」
飛空艇!?
まさか本物を下から見られるとは。
大量のプロペラが船体にとりつけられ重々しくゆっくりと回っている。
あの重々しい船が楽に飛べたら航空力学をバカにしすぎだが確かエンジンではなく希少な魔法鉱石をコアにして船全体に対して浮く力を付与している。
個人が浮くような魔法があるけれどそれの全体かつ維持版。
……というのを書籍では知っている。
そもそも空路って危険で乱れた気流も大量の大型魔物たちが入り乱れた区域。
なんで空に浮かべるものが大型で明らかにパフォーマンスが悪そうな形なのかといえば耐久のためだ。
結界をはり武装を積み全方位に攻め入りながら空に突撃しそれでも懐に入り込むやつは直接船上で戦う。
そういうものだと聞いている。
……まあ逆に言えば一切合切公共の乗り物ではなく国家やすごい財産を持つ者が個人所有しているもの。
王都から出る方角でも王都に近づく方角でもない。
山をこえて国外に行くにしてもおかしい。
まあ……そもそも本物を見たのは初めてなんだけれど。
ぶっちゃけ贅沢品なのだ。
多少の時間短縮のために湯水のように資金と資材を溶かす。
飛行維持だけでも大変なんだとか。
こんなに低空飛行していてはせっかくの空飛ぶ機能が活かせないし騒音がすごい。
それに陸から近づく気配も気になる……
「なあ、様子がおかしくないか?」
「あれ? 上空で止まりましたね」
「みんな、なんというか……殺気を感じない?」
「……なんで砲門が開いたんだ?」
これ……だめなやつじゃないかな。
砲門がひらきさらには船底側の穴も開く。
私は飛空艇を詳しくは知らないが……
殺気を感じて毛がピリピリする。
「な、なんであの船は機雷投下準備を……?」
聞こえてきた声はおそらくこの中で1番知っていた誰かの声。
しかしそれで全員の体に電撃が走る感覚。
「攻撃だー!!」
「わからないが全力で離れろ!」
「くそっ、ここまでやるか……!」
ゴルガと共に鳥車の方へと走り戻る。
ドラーグは知らせに戻っていった。
「ゴルガさん、これってもしかして……!」
「十中八九、政敵さんだよ!」
……最悪中の最悪を引き当ててしまった。




