三百九十生目 護衛
王都へ行く準備をして翌日。
日がのぼる直前に出発するということで警備ギルドも集合。
物々しい雰囲気に包まれ門の外に集まっていた。
馬車ならぬ鳥車が豪華なものたちが揃い現場はまだ日が指していないがたくさんの光が焚かれ剣呑な雰囲気を醸し出す。
鎧と武器が光を照り返す……
「って、護衛ってローズオーラさんたちなの!?」
「し、静かにね。私たちの繋がりはあんまり公表していないんだし……」
「ううーん、空の鳥車をたくさん運ぶ事になりそうですね……まあそれも、金竜の賑わいには必要ですからね」
「ええと、金竜の賑わいとは?」
「えーっと……近い言い方だと、それに相応しいだけの身なりや華やかさを身につけるということですかね」
それならなんとなくわかる。
辺境伯の一族ともあろうものが正式な催しに対してあまりに見劣りするような様相ならばこの土地ごと低く見られるようなものだ。
それは避けたいだろう。
私達を守らずに済む分そちらに力を注げる。
しかしそういう催しが頻出すればどんどんと地方の力は削れてしまう。
ジレンマだけど今回ができうる限り最後だと思えば……
「今回は大掛かりになりそうですね」
「やはり国賓を招く形式になりますからね。ワタクシたちも気合を入れていかねば、目的を探られかねません」
それもそうか。
……あらためて私は動けるのだろうか?
そうでなければ私以外に動くことをお願いしないと。
特にドラーグはこういう時に役立つ。
今はすごく目立つが……
その時になれば真価を発揮するだろう。
背後から気配を感じると思ったらローズクオーツが飛んできた。
足はない足音がないんだけど速度的には歩行ぐらいだ。
「ローズオーラ様、向こうで警備ギルドの方が探してましたよ」
「あ、わかった! すぐいく!」
「ローズオーラさんが警備にあたるなら翠竜の護りを得たも同然です。ここを乗り切りましょう!」
なんなんだろうか……
こう……全体的に5大竜の扱いが他国とズレている気がする。
やはりここらへんはこの国にいる神が携わっているのかな。
挨拶を交わしつつローズクオーツに引き連れられ警備ギルドたちの元へ向かう。
そこには見覚えのある大きな背姿が2つ。
「おう、やっときたか」
「おはようございます」
「ローズ様ー! 最後の打ち合わせをしますよ! ローズクオーツさん、呼びに行ってくれてありがとう」
「キャッ! そんな、ただ言われたままをこなしただけです……!」
ローズクオーツは頬に手をあて恥ずかしがるように喜んでいる。
……私以外だとちょっと反応が違うあたりまだまだローズクオーツの個性はある。
「なんというか……独特なゴーレムだな……ゴーレムってもっとこう……」
遠くから足音が聴こえる。
そちらの方に目がいけばノーツが歩いて隊列確認していた。
今回は本体も参戦だ。
「通常配備の配置を理解。ご協力を感謝」
「いいってことよー!」
どうやら向こうの方でもチェックしていたみたいだ。
「……そう。まああんな感じだよな。少しやっぱ違うが」
「個性的でいいですよねー」
「うーん……まあわざわざツッコむほどのことでもないか。こっちも始めるぞ」
ゴルガたちと共に編成を決める。
私達はそれぞれ別の場所だ。
ゴルガはドラーグと共に前方側。
私は中央らへんを守る。
ローズクオーツとノーツは後尾のほうだ。
鳥車は5車両ありすべて豪華な仕様となっている。
「ここまでが基本事項だ。何か質問は?」
「確か空の車両があるとのことでしたが、それはどれですか?」
「防犯上の理由で公開されない。いちいちそっちばかり気にしていたら、敵にバレバレだからな。資材、空、人のどれであっても、領の貴重な資産である豪華な鳥車と訓練されたカルクックたちがいる。全てを命に代えても護りぬけ」
「実際のところ、どのような危険の想定が多いですかー? 盗賊ですか?」
「いや、さすがにひと目見てブラドマナクラスの隊を襲うバカ盗賊はいない。いたとしても九死に一生を得ようとする雑魚だけだ。たまたま出くわした魔物や、ないとは思うが政敵の刺客が主な想定する相手だろう。あとは内部だな……」
「内部……もしかして、運ぶヒトのほうですか」
「領主の息子はまあ良い人と聞いているが、他の面々が不明だ。とんでもないわがままなやつもいるかもしれない。そういうやつらをおさめて、何も起こらせずに届ける……それが役目だ」
うーん多分それ私達のことだね。
もう全然警戒しなくて大丈夫そうだ。
本当に気をつけるのはカルトスたちだけでよさそう。
私達は荷物をまとめ鳥車たちと共に旅立つ。
目指すは王都だ!