三百八十九生目 跳上
非常に大変なことになってた。
神もこの国に寄生しているのがわかった。
王も他の領主たちもほとんど信用ならない状態でさらにどこに属するかもわからない勢力が。
ほぼほぼ最悪。
そんなこんなしていても日は変わる。
ウッダくんは正式に辺境伯に買われオールン家名からファーエン家名になる。
裏で結構揉めたらしいがそれはまた別の話。
私とドラーグは改めて警備ギルドに行き審査結果を受ける。
ギルド内には既にゴルガが待っていた。
「おはようございまーす、結果はどうでしたか〜?」
「おう。早速その話に入るぞ。最終判断は俺がくだすものじゃないからな」
ゴルガが受付の方を顎で振る。
受付のかたはすでに書類を手にしていた。
「こちら、結果報告になります!」
「ありがとうございます」
「……わあ! やったー! 受かってますね!」
結果は合格。
問題を拾ってくるのは困るが解決能力が高いのと通常業務をこなすことがちゃんとできるみたいな評価だったらしい。
「最初はどうかと思っていたが、案外適性があるらしいな。俺が見る限り、問題だらけではあったがそれらすべてをねじ伏せる力があった。思想も特に問題はない」
「よかった〜、嫌われて駄目になるかと思いましたよ!」
「個人的な判断とギルドとしての判断は別だ」
確かに今回のはぶっちゃけ出来レースだろう。
それらしいのを与えて最低ランクのいつでもギルド資格停止可能ラインから跳ね上げておくための。
さすがにBマイナスはないとそれ以外にも身分証明書としても使いにくく信用を得にくかったりもするしね。
「おめでとうございます。そして、こちらが追加の資料ですね」
もう1つ渡された……と思ったら。
この紙には。
「どれどれ。貴殿のたゆまぬ努力の功績を認め……Bプラスへと昇格します!? 」
ドラーグの驚く声の大きさで私もびっくりした。
周りで最初興味なさそうにしていた多くのニンゲンたちの注目も集める。
「えっと、これは……?」
「お前らがギルドに貢献しすぎたんだ。一部地域だが、警備ギルドの評判が急激に上昇している。無視したり蔑ろにできないレベルにな。心当たりはあるだろう?」
「まあ、なくはないですが……そこまでなんですか?」
「すごいですよ。警備ギルドとしては、あなた達の活躍は通常のBクラス員数十名が1月以上活躍した際にあげる成果と治安向上があると判断しました。わたしは何されたのかは詳しく把握していませんが、裏では嬉しい悲鳴が上がっていましたよ」
なんだか申し訳ありませんでした……
どうやら事務処理とか連絡とかでてんてこまいにさせてしまっていたようだ。
広い視点的にこの国全体が危険だが狭い範囲では私でも何かができる程度にはまだなんとかなりそう。
どちらも無視はできないからね。
「というわけで、こちらの書類が……Cマイナスへの昇進依頼です」
「こんなに早く駆け上がるのは、この警備ギルドが作られた以来初めてだろうな。冒険者よりも、警備ギルド員としてのほうが向いているのではないか?」
「あはは……」
うれしいやらかなしいやら。
まあドラーグのほうが評価値は高そうだが。
もらった資料にかかれている依頼はっと。
王都への護衛依頼を複数名に出していて明日に出る予定か。
依頼人は……あっ!
「ファーエン・ブラドマナ・フィノルド……辺境伯! 護衛対象は息子のアール・グレイ含む複数名ですか!」
ここにきて依頼が警備ギルドに!
騎士たちはそんなに領を離れられないし兵も昨今の状況で減っていて……
だからこそここに依頼がくると。
この複数名部分が私達にかかってそうだが自分の護衛を自分でして悪いわけでもないだろう。
変な形だが。
ドラーグと共に一も二もなく引き受け今日は明日に備えることとなって解散。
屋敷に戻ればそこにはどこかで見た後ろ姿がある。
私が知っている姿よりもかなりしっかりとした服を着込み自宅なのに疲れそうな姿をしているが……
「おや、ローズオーラさん!」
「おかえりなさい、アール・グレイさん」
アール・グレイが王都から帰ってきていた。
依頼があった時点でなんとなく察せたけれど時間通りの帰還だったらしい。
「旅中は襲われたりはしませんでしたか?」
「案外平和でした。逆に恐ろしいくらいに。この後の王宮で行われる催しに飛び入りでローズオーラさんやワタクシも参加できることもスムーズに決まりましたし……おそらくは罠です」
「最終決戦にするつもりですね、互いに」
その時が来たら私も大立ち回りしないとな……




