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三百八十六生目 小象

 領主一行が入っていったのを見つつ警備再開。

 ごくごくと飲むのはこの地方で愛されるお茶。

 チャイって言うらしい。


 なんというか……甘い。

 砂糖だよねさすがにこれ。

 私でもまあまあ砂糖の味わいわかるってことはかなり入れてあるよこれ。


 買って入れてもらったのは良いけれどこれ飲んだらちゃんと運動しないとなー。

 それはともかく飲みやすく美味しい。

 ここらへんは帝国に近いのもあって雰囲気が似ている。


 その日はグルグルと何回か巡回ルートを通る。

 相変わらずといったところだが……

 日が傾き出したころ。


「よし。そろそろ時間だ。俺は先にギルドに帰る」


「あれ、そうなんですか?」


「監督業務は見た目よりもやることがあるんだ。このあとまとめなくちゃならん、後はお前たちだけで巡回しろ」


「ああ、はい」


 私たちは監督役をつとめてくれたゴルガにお礼を言い別れる。

 ゴルガが悪いように書かないよう祈ろう。

 そして私達はこのまま夜まで巡回することとなる。


 もう領主一行は帰っているはずだがそれとこれとは別。

 月がのぼるまでが仕事の範囲だ。

 夜は夜で治安が不安だけれど私たちの仕事範囲にはないらしい。


 なぜなら夜は危険だから。

 低ランクに巡回させるわけにはいかない……らしい。

 私達なら大丈夫だろうけどそれはそれこれはこれ。


 そのまま進んで行き教会裏あたりまでめぐる。


「危ない危ない!」


 荷物がひっくり返って空中で散らばった瞬間に出くわした私達はすっとんでいって空中でキャッチ。

 そのままなんとか並べてふたりで相手に渡した。

 フルーツたちがとっちらからずに済んで良かった……


 お礼を言われつつ巡回を再開――


「えッ?」

 

 しかし私の思いは不意に別の事へ気を取られる。

 今のは……


「どうしました?」


「……神の力」


 一瞬だけ感じた強い違和感。

 確かに神殿近くだからあってもおかしくはない。

 ただ本当にいるとは。


「え? 神様ですか?」


「ドラーグ、ごめん。私、ちょっとこの力がどこから出ているか調べてくる!」


「わかりましたー! あとはおまかせを……うわあっ!?」


 振り返り神の力のあったところを探ろうと振り返って。

 さっそくドラーグ近くのところで積んであった大荷物が崩壊した。

 あれはドラーグにまかせて先程の視線と神力を確かめに行こう。







 神力がちらつく。

 私を誘うかのように神力を少しだけちらしながら歩いていく。

 だいぶ人通り少ない裏側にきたが神殿から遠くにいったかと思えばまた近づいている。


 余計な相手がくっついこないための道筋だろうか……?

 どこからかともなく発せられるわずかな神力をたどっていくのは結構つらい。

 私はまだ神としてはまだまだだし。


 それでもスレスレで追えたらしく数分かけてたどり着く。

 場所はなんと教会の裏庭。

 ぐるっと回ってきてここにたどり着くとは。


 なんだか時間を無駄に仕掛けたがそろそろ夜に入るだろう。

 日が沈むその間際にわずか残るまさに狭間の瞬間。

 私は神力でできたゲートを目にした。


 純度の高い神力の穴。

 一般的には触れることも落ちることもできないしみることもできない。

 私の神力自体は封印しているけれどなんとかなるはず。


「ノーツ、もしかしたら接続が切れるかもしれない。そうしたらごめんね」


「了解。接続が途切れた際、端末自動録画モードに切り替わります。約3時間の記録が可能です」


 ノーツの返事を聞きつつ……

 消えかけた穴に飛び込んだ。


 中は極彩色に富んだ不可思議な空間。

 ぐんぐんと落ちていくが不思議と浮遊感がない。

 頭上にあった穴が消えたところで。


 下側からどこかへと抜ける。

 知らない場所だ……

 凄く狭い。


 ニンゲンが作ったにしては空中であちこち立方体がきらめいては消えているし窓や扉も見当たらず静謐でただ色のない世界。

 うん……やっぱりそうだ。

 私の姿がモノクロに見えている。


 この神域は色を奪うのか……

 私は首から下げていた鱗と宝石のアクセサリを握って力を込め。

 自身の神力を解放する。


 静かだ。

 先程まで追っていて思ったけれど生き物らしいにおいや音がなかった。

 本当に大丈夫な相手なのか?


 そんなこと思っていたら壁の一部が変わっていく。

 敵意は感じない。

 壁の一部から抽出されるかのように出てきたのは……


『ほう。先程まではあまり感じなかったが、誠のようだ』


 念話で問いかけてきた相手は……まるで概念だった。

 生き物をわざと抽象的に描く際に多くの必要情報を削り落とすが。

 目の前にいる相手はまさしくそれが形になったかのようだった。


 色情報は白黒だからよくわからないがシンプルで小さな象だった。

 

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