三百八十一生目 塵芥
暗幕内で救命作業。
服を脱がし下着だけに……したかったが下着がない。
もしかしたら資材?
服は材質が悪く無駄に水を吸い込んでいて乗せるわけにはいかない。
仕方ない。
ドラーグはタオルでちゃちゃっと拭いてくれた。
やるか……電気魔法"チャージボルト"。
まずはこれで腕に電気をためる。
そっと胸に手を合わせ。
[ディファイブレーダ 対象にダメージを与えない電気ショックを放つ]
これは電気機械に対してエネルギーを放つのにも便利だが……
こういう時は対象を傷つけずショックを与えられる。
「ドラーグ、離れて……それッ」
ドラーグが少し距離をとったのを見届けてから雷撃を放つ。
彼女は大きく身体を跳ねる。
「ノーツ!」
「バイタル反応上昇。バイタル反応……低下」
「もう一回"チャージボルト"!」
電気を手にまとわせて……
"ディファイブレーダ"!
再度身体が跳ねる。
「計測中……」
「あっ!」
ドラーグが気づいたのと同時に私も気づく。
口が僅かに動いた。
そして。
肉体反射により口から水を吐いた。
「バイタル上昇、不安定」
苦しそうに横へ向き飲んだ水を吐き出すもののまだ意識がないらしくうなだれている。
ただここまで来れたのであとは……
「ドラーグ、水をどかしつつ周囲から誰か来ないか警戒して」
「良かったあ、息をしだした」
瀕死には違いないものの自力で生命活動しだしたのであとは……
瀕死状態を治さないと。
聖魔法"リターンライフ"!
まばゆいほどの光が放たれ彼女を癒やしていく……
彼女の死を拒絶し生へと転換させていく。
「バイタル……安定」
「ここまで来れば安心だね」
目の前では静かな寝息をたてている姿が。
新しいタオルを出して彼女に被せた。
ドラーグに目覚めない彼女について警備ギルドへ報告を任せつつ私は私でやれることをしておく。
手配もしておいて……
警備ギルドの仕事に戻らねば。
先程の場所まで帰ればローズクオーツがおばあさん方にペタペタ触られまくっている。
どうしてそうなった。
「あ、ローズオーラさまぁ、たすけてくださああい」
「ローズクオーツ!?」
なんとかひきはがしたら「めったにみないかわいいゴーレムだから、さわっておかないと」とおばあさんたちが言っていた。
キュートだし触りたがるのもわかるがもみくちゃになるのはよくわからない。
「こちらはなんともありませんでした?」
「ええ、おかげさまで」
「警備員さんも大変ね。多分不法投棄だったんでしょう?」
不法投棄……?
嫌な想像が脳裏をよぎる。
「……落ちたのは、資材のようでした」
「ああ、やっぱり」
「よくないわよねえ、不法投棄は」
「聖なる大河にも汚れた魂の直接放棄は不敬じゃて」
うわあやっぱりか。
「ローズオーラ様、さっきこっそり聞いたところによると、資材は専用の廃棄場所で捨てないと違法なんだそうです……」
ローズクオーツがこっそり耳打ちしてくれた。
おばあさんたちは気にも止めず話を回す。
「でも、死ぬならウクシツ大河の側で死にたいのう」
「ゴーレムちゃん、わたしたちはみんな、いつか大河に還ることを目的としているんじゃよ」
「そこで魂が浄化され……その次にどの階級で転生するかが決まるんじゃ」
「そうなんですか? 覚えておこうっと……」
ローズクオーツはかわいがられているようだけど宗教話がどことなく不気味なのは相変わらず。
ローズクオーツ自体も色々言いたいことをぐっと我慢しているようだった。
その後警備を再開して。
ドラーグが戻ってきて開口一番。
「困りましたー……」
ドラーグの腕には眠る資材の子。
ああ……やっぱりそうなるか。
「ドラーグにぶん投げられたんだね」
「不法投棄した業者を今別班で追っているから、ちゃんとした廃棄場所に捨ててこいって言われて……でも……」
「うんまあ、命をかんたんに捨てるのはなしだよね」
ドラーグはニンゲンとの距離感はニンゲンから見た犬猫くらいだが……
逆に言えばゴミだという認識はまるでない。
「別に、アノニマルースで引き取っても問題はないんですよね?」
「ゴミ扱いだから、捨てなければね
」
「ひどいですね、ほんと……」
皇国語に互いのチャンネルを合わせつつ会話して。
私たちは1日目の仕事を終えた。
なお細々と野盗らしきやつらやちょっとした不良それに厄介な生息魔物たちをちょちょいと追い出す。
この国視点からしても治安維持が難しいというのは事実なようだ。




