三百七十八生目 武装
警備ギルドマスターはヒゲを触り言葉を吟味する。
そしてひとつ大きなためいきをついて。
「……そうですね。聞きたいことは山ほどありますが、その理由で弾く意味はありません。歓迎しましょう。仕事は表で受けてもらうのと、あくまで表面上の処理はAマイナスからのスタートになります」
「はい、ありがとうございます」
あとはもろもろ細かい話を聞いていく。
やはり冒険者ギルドとは違いこちらのほうは堅い面が多いということ。
さっき表で絡まれた時に受けた注意事項や細かな差分の話がメインだった。
最後に通常の契約書にサインして終わり。
私の聞かされた事実に比較すれば他はなんでもなかった。
ギルドマスターもヒゲをさわり最初から最後まで変わらず表情を崩さなかったが私みたいな相手していて緊張したのかもしれない。
登録出来たのは私とドラーグ。
ゴーレムのふたりは登録をせずとも私達の所有物扱いで同じ登録証が扱えるらしい。
……実はそこらへんもずっと私の丸眼鏡がサイレントモードで聞いていたのだが。
表に戻ればもうゴルガはいなかった。
さすが警備ギルド……職務に忠実だ。
私達も仕事を探そうとしようとして。
「あの……無事に警備ギルド員になれたんですよね?」
「あ、先程の受付の方。はい、おかげさまで」
受付さんに声をかけられた。
「どうされましたー?」
「実は今、初心者さんを含む多くの方に発注している臨時依頼がありまして」
受付さんが見せて説明してくれた依頼は……
街中にはしる大河付近を警備するものだった。
おお。大河に行きたかったから良かった。
「この大河自身に何かあるわけではないのですが、最近何かと物騒で各地に警備ギルド員が駆り出されています。さらに正規兵たちの数も激減しています。ゆえに、最近大河付近の治安が悪化しているとのこと。範囲も広く、街の外とつながるため不法侵入や不法脱出もしやすく治安維持と向上が叫ばれているんです。最近では国家へ楯突く組織が噂されたり、謎の地震が発生したり、民たちの心が揺れています。そういう時、警備ギルドの者たちがいるというのがはっきりするだけで少しでも安堵が広がる効果があります」
なぜだろうその噂たちの出どころだいたい知っている気がする。
ポーカーフェイス。ポーカーフェイス。
「へぇー、物騒なんですねえー」
「ええ。ですので、この印をつけてアピールするように歩きまわってください」
受けるとはまだ言っていないものの記章をもらえた。
金と銀の竜が渦巻いている……
他の国とはまた記章が違うんだ。
「わかりましたー」
「まだ右も左もわからないので、素直に受けます」
「それとこれは出来たらなのですが、ぜひ目立つように武装をしてください。威圧の意味もありますが、無手の警備員よりも市民たちは安心しやすいので……実際使うかどうかは、現場に任せられています」
「わかりました」
私は剣ゼロエネミーに銃ビーストセージがあるため大丈夫。
問題は……
「うーん、武器かぁ……どうしよう……」
「あ、無手で戦う方ならそれはそれでいいんです。ただ、犯罪者たちになめられないためにハッタリでも武器を身に着けて方が良い、とマニュアルではされています」
受付の方は明らかに現場に出たことがない顔はしている。
今もマニュアルって言っちゃったし。
感じるパワーも微々たるものだ。
「わかりましたー、考えます。うーん……僕、剣とかトゲトゲとかもつの怖いからなあ……指先が斬れたら痛いし……」
ドラーグは自分の爪を見てから発言してほしい。
今は覆い隠しちゃっているけれど。
というわけで。
警備を開始だ。
ドラーグは安物ながらしっかりしたつくりの大金棒を背に持つ。
確かにリクエストどおり斬る要素も突く要素もないシンプルな武器……なんだけど。
なぜだろう。
こっちのほうがずっとえげつないように感じる。
「よし、行こう」
私は剣ゼロエネミーと銃ビーストセージを腰に下げる。
銃ビーストセージは偽装用に弾丸棘をマガジンに詰めてしまってあり……
剣ゼロエネミーもちゃんと鞘におさまり持ち手もある。
服の目立つところにふたりとも記章つき。
丸眼鏡を通してノーツも監視しているし……
元気はないもののローズクオーツもいる。
「ローズクオーツ、元気がないなら休んでいても大丈夫だけれど……」
「い、いえ! やらせてください、ここで言われるがまま下がっちゃったら、ワタクシはダメになってしまう気がするんですっ」
「そう? 無理はしないでね。ついでに街の様子もたくさん見られるから、ゆっくりね」
ローズクオーツは考え込んでいるが周りにも視線を向ける余裕は出来ていたようだ。
ローズクオーツにもこの旅で何か変化があるといいな。




